暗黒物質の存在を否定する新説 オタワ大学の研究
財経新聞 / 2024年3月20日 16時16分
光や電磁場と相互作用せず、光学望遠鏡や電波望遠鏡で観測できないにもかかわらず、銀河の運動の説明に必要不可欠とされるのが暗黒物質だ。オタワ大学は15日、この暗黒物質の存在を否定する新しい説を公表した。
宇宙論の世界で暗黒物質の存在が確実視されるきっかけとなったのは、米国の女性天文学者ベラ・ルービンがアンドロメダ座の大星雲を観測し、中心部と周辺部の運動速度に差がないことを見出したことによる。
銀河にある観測可能な天体の分布から計算すると、銀河の運動は中心部の回転速度がより速く、周辺部は遅くなるはずだ。だが実際にはそうならないことが判明し、観測にかからない暗黒物質の存在を仮定しなければ、銀河の運動を説明できない状況になったのだ。
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による最新の観測データによると、宇宙誕生から5億年程度の初期宇宙で、円盤銀河が従来予想の10倍も存在していたことが判明。これは現在主流となっているビッグバン宇宙モデルに、疑問を投げかけるものとなっている。
今回発表された新説では、時間経過による力の減衰と光の長距離移動によるエネルギー減衰(疲れた光仮説)を考慮した新しい宇宙モデルにより、暗黒物質や暗黒エネルギーの存在を仮定することなく、JWSTで観測された初期宇宙の形態を再現できたのだという。
現時点でこの新説の立ち位置は、ビッグバン宇宙論を完全に打倒できるものではないが、この宇宙モデルによれば、宇宙年齢は138億年ではなく267億年になるとされており、宇宙論を根本から覆してしまう可能性がある。
いずれの説が正しいのかについては、直ちに結論が得られる状況にはないが、現在多くの科学者に支持されている宇宙モデルは、大胆に書き換えられる可能性を秘めているのかもしれない。
ニュートン力学が世に出た際、科学で説明できないものはないと人類は高をくくった。アインシュタインが時間や空間の概念を覆し、量子論が素粒子の存在の曖昧さを明らかにし、超ひも理論が特異点問題の解明に光明をもたらしたとは言え、宇宙の謎のすべてを人類が解明するには、まだまだ時間が必要だろう。
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