特集2017年10月18日更新

気をつけたい選挙違反「ネット選挙運動」の注意点

2013年に公職選挙法が改正され、同年7月の参院選からいわゆる「ネット選挙運動」が解禁されました。ただ、何がダメでどこまでOKなのかいまだにわからないという方もいるかもしれません。そこで、22日の衆院選投票日の前にネット選挙についての注意点などを紹介します。

目次

「公職選挙法」に違反する行動とは?

閣僚の辞任にまで発展するケースが多い「寄付の禁止」

ネット選挙の前に「公職選挙法」における主な違反行為について少しだけ説明したいと思います。
政治家やその後援会の行動に制約を設ける公職選挙法。この法律には多くの規定があり、閣僚が辞任に至る場合の多くは「寄付の禁止」に該当するものです。そして、「寄付の禁止」についても禁止規定は多く存在しますが、ここではその一部を紹介します。

選挙区内の人には原則として寄付禁止

具体的には、お歳暮やお年賀、会費制ではない会合での支払い、祭りの寄付や差入れ、町内会の集会などにおける飲食物の提供、結婚祝、香典、開店祝、スポーツ大会の記念品などは寄付行為にあたるため、もし行った場合には公職選挙法違反に該当します。
ただし、祝電や弔電、葬儀のお布施は寄付にはあたらないとされています。

なお、政党や政党支部、政治家の親族に対する寄付は禁止行為から除かれます。
また、寄付をする主体が政治家だけとは限らず、「政治家が役職員または構成員となっている会社や団体」「政治家の後援会」が寄付をする行為も原則として禁止されていて、昨年、山尾志桜里氏の資金管理団体の収支報告書に「新築祝い」名目で支出した記載が問題視されたケースも、これにあたります。

年賀状や暑中見舞いも原則禁止

選挙区内において、政治家はあいさつ状を送ってはならないとされています。例えば、年賀状、寒中見舞、暑中見舞などが該当します。ただし、答礼のために自筆で書く場合は例外となります。

有権者が求めてもダメ

上に挙げたような寄付行為は有権者が求めるケースも禁止されているので、有権者側も注意を払っておく必要がありそうです。

「ネット選挙運動」の注意点

…と、ここまで紹介してきた「公職選挙法違反」はどちらかというとニュースの中の話。そのへんを厚く紹介するより、もっと私たちに身近で、「うっかり違反」で処罰対象になってしまうこともある「ネット選挙運動」についての基本や注意点を整理しておきます。

やってもOKなこと

ホームページやブログ、SNSなどを利用した選挙運動

2013年4月に公職選挙法が改正され、同年5月からインターネットを使った選挙運動が解禁されました。これにより、次の「選挙運動」ができるようになりました。
なお「選挙運動」とは、「特定の候補者の当選を目的とし、投票を得させるために有利な行為」のことです。

18歳以上の有権者は、Webサイト等(ホームページ、ブログ、TwitterやFacebook等のSNS、SNS内のメッセージ機能、動画共有サービス、動画中継サイト等)を利用した選挙運動ができます。
Webサイト等での選挙運動は、電子メールアドレス等の表示義務があります。電子メールアドレス等とは、インターネットを利用する方法により、その者に連絡できるような情報という趣旨なので、返信用フォームのURLやTwitterのユーザー名でもOKです。

やってはいけないこと

電子メールを利用した選挙運動

電子メールを使って選挙運動用のメールを送ることができるのは、候補者・政党に限られます。有権者は候補者・政党から送られてきた選挙運動用の電子メールを転送することもしてはいけません。

ちなみに、やってOKな「Webサイト等」には「SNS内のメッセージ機能」も含まれるため、FacebookやLINEなどのユーザー間でやりとりするメッセージ機能は「電子メール」に該当しません。つまり、一般有権者がそれらのメッセージ機能を選挙運動に使っても問題ありません。

18歳未満の選挙運動

「やってもOK」のところで紹介した一文の冒頭、「18歳以上の有権者」という部分も大事で、18歳未満はボランティアなども含め一切の選挙運動が禁止されています。

年齢満18歳未満の者は、インターネット選挙を含め、選挙運動をすることができません。特定の候補者の当選を目的とするようなWebサイト等への書き込みやインターネット放送などはしないように、保護者も気をつけたほうが良いでしょう。

選挙運動期間外の選挙運動 投票日当日に注意!

選挙運動ができるのは、公示・告示日から投票日の前日まで。つまり、投票日当日は選挙運動禁止です。

ここで注意したいのは、『Twitter』『Facebook』などの投稿。例えば「○○候補に投票してきました。あなたも一票をお願いします!」といった内容だと、公職選挙法による「選挙運動」になる可能性があります。投票日当日は候補者・一般有権者ともに「選挙運動」は禁止されています。
また、前日までに候補者や応援する人が投票を呼びかけるツイートなどを、投票日当日にリツイートすることも「文書図画の頒布」にあたるのでアウトです。

選挙運動に関するホームページやメールの印刷による頒布

選挙運動用のホームページや候補者・政党から届いた選挙運動用のメールを印刷して配ることは禁止されています。

ホームページや候補者・政党からのメールを記録したDVDやUSBメモリなどを頒布することも禁止されています。

誹謗中傷・なりすまし・虚偽の事実公表など

候補者に対して、悪質な誹謗中傷をする等、表現の自由を乱用して選挙の公正を害することのないよう、インターネットの適正な利用に努めなくてはいけません。以下の行為も処罰対象です。
・候補者に関し虚偽の事項を公開してはいけない
・悪質な誹謗中傷行為をしてはいけない
・氏名等を偽って通信してはいけない
・候補者等のWebサイトを改ざんしてはいけない

候補者の名誉を毀損したり、虚偽の事実を公表したりして発生しうる法的問題については以下の記事で詳しく解説されています。

「ネット選挙運動」できること・できないこと一覧

ここまで紹介してきた「ネット選挙運動」で一般の有権者ができること・できないことをまとめてみました。

ウェブサイト等を用いた選挙運動 ホームページ、ブログ等
Facebook、Twitter等のSNSでコメントする
Facebook、Twitter、LINE等のメッセージ機能を用いて特定のユーザー間でやり取りする
自ら制作した応援動画をネット配信する
電子メールを利用した選挙運動 選挙運動用電子メールの送信 ×
候補者や政党等から送信されてきた選挙運動用電子メールの転送 ×
紙媒体を利用した選挙運動 ウェブサイト等を利用した選挙運動の内容を印刷して配布 ×
候補者や政党等から送信されてきた選挙運動用電子メールを印刷して配布 ×
落選運動 特定の候補者を批判する文書をウェブサイトに掲載・電子メールで送信 ◯(※)

※ 公示・告示日から投票日当日までの間はメールアドレス等の表示義務あり

「ネット選挙運動」のさらに詳しい情報は、下に紹介する総務省のページやチラシで確認してください。

SNSでやってもOK「落選運動」

上でまとめた表で気になったのが「落選運動」の文字。悪質な誹謗中傷などは禁止されていますが、まっとうな批判であれば問題ないようです。

【Q】 ネットを使って「落選運動*」はしてもよいのですか?
【A】 ネットを使って落選運動をすることはできますが、匿名で行うことはできません。また、虚偽の事項を公開したり誹謗中傷は落選運動の範囲外となりますので、罰せられます。
*「落選運動」とは、特定の候補者を当選させないよう呼びかける行為

「落選運動」は18歳未満でもできる

選挙権のない18歳未満は公選法で選挙運動を禁じられていますが、落選運動であれば行なうことが可能です

海外ではすでに市民権

日本では馴染みの薄い「落選運動」ですが、アメリカや韓国などの海外ではすでに市民権を得ているそうです。

韓国では2000年総選挙で大規模に行なわれ、学生や460の市民団体が「総選挙市民連帯」を組織して政党を問わず、腐敗政治家や職務怠慢、選挙不正を起こした86人の「落選させるべき政治家」をリストアップして対立候補への投票を呼び掛け、59人を落選させた。米国でも、2012年の共和党の大統領予備選挙で保守系団体(ティーパーティー)が共和党穏健派のロムニー候補の指名に猛反対する運動を展開。その他、大物議員らも落選運動によって大打撃を受けている。

SNSは波及効果バツグン

波及効果でいえば、最も有効なツールとなるのはツイッターなどのSNSだ。電子メールは、選挙期間に入ると党・候補者以外の個人が特定候補への“投票を促す”ことは禁止されるが、“落選を促す”メールであれば可能である。

ただし注意点も。

注意が必要なのは候補者が2人しかいない場合。一方を落選させる活動が、他方の候補を当選させるための選挙運動とみなされる可能性はあります
選挙期間中に落選運動をする人は匿名ではなく氏名とメルアドを明記しなければならないから、Twitterなどでは実名をハンドルネームにしておく必要があります。

気がついたら選挙違反…なんてことにならないよう注意しながら、ネットも駆使して選挙に積極的に参加していきましょう!