特集2018年2月9日更新

アナの降板、長寿番組終了…フジテレビの行方は

自局の女子アナの不倫騒動に続き、報道新番組のメインキャスターに抜擢した人気フリーアナのセクハラ疑惑が浮上。さらには歴史ある人気番組が次々と終了し、また民放キー局で唯一営業赤字と、最近いいニュースを聞かない印象のフジテレビ。どうしてこのような事態に陥ってしまったのでしょうか。

目次

報道キャスターにスキャンダル相次ぐ

2018年に入ってから、フジテレビの報道番組のキャスターが出演を見合わせたり、出演を辞退する事案が続きました。

秋元優里アナウンサー

“報道のエース”だった秋元アナ

秋元といえば、入社4年目にして滝川クリステルの後任として「ニュースJAPAN」に抜擢され、現在は「BSフジLIVEプライムニュース」のメインキャスターを務める、局を代表する女子アナの1人だ。
父は元エリート外交官で、宮内庁の現・式部官長。美人アナとして、オジサン視聴者をすっかり虜にしたことでもフジ社内の評価は高かった。

担当していた報道番組のプロデューサーとの不倫スキャンダル

夫・生田竜聖アナウンサーと離婚協議中だと伝えられている秋元優里アナが、1月10日発売の「週刊文春」(文藝春秋)に、衝撃的な不倫スキャンダルを報じられた。かねてから、秋元アナの不倫疑惑は各マスコミでささやかれていたが、新年1発目となる“文春砲”は、秋元アナの“暗部”をえぐってしまったようだ。

番組出演を見合わせると発表

“文春砲”を受け、フジテレビは一部スポーツ紙の取材に「単なる相談相手と聞いておりますが、誤解を与えるような軽率な行動に対する責任を取って当面の間、番組出演を見合わせます」と発表している。

“報道のエース”が姿を消す事態に「痛すぎる」の声

「昨年就任したフジの宮内正喜社長は、『非常事態』宣言を出し、この4月に大型改編を行なうことを予告していた。社の命運をかけた勝負時を前に、“報道のエース”だった秋元を外さなくてはならなくなったのは痛すぎる」

登坂淳一アナウンサー

“麿”の愛称で人気の元NHKアナウンサー

登坂アナは東京都出身で、法政大学卒業後の1997年4月に同局に入局。和歌山放送局、大阪放送局を経て、2004年に東京アナウンス室に異動。『NHKニュースおはよう日本』『首都圏ニュース』、正午など定時の『NHKニュース』を担当。上品で公家っぽい雰囲気を醸し、口調も穏やかなことから“麿”と呼ばれるようになり、一躍人気アナとなった。

2018年1月にNHKを退社し「フリーになる」と電撃発表

登坂は「私は1から8に転身し、新しく挑戦しながら元気の出る放送を温かくお届けしていきます」とNHKからの転身に意気込みを語る。さらに「忙しい夕方の時間、春から一緒に過ごしてみませんか?」と、視聴者に呼び掛けた。

新番組でメインキャスターに就任するはずだった

BSフジの報道番組「BSフジLIVE プライムニュース」(毎週月~金曜夜8:00-9:55)が、ことし4月からフジテレビとBSフジの統一ブランドとして、地上波に進出することが決まった。
この決定により、4月2日(月)にスタートする番組「報道・ニュース新番組(仮)」(毎週月~金曜昼4:50-7:00、フジテレビ系)では、NHKのニュースの顔として“麿”の愛称で親しまれる登坂淳一が、メインキャスターに就任する。

数日後“文春砲”によるセクハラ疑惑浮上

「週刊文春」(文藝春秋)が具体的に伝えたのは、登坂アナが北海道のローカルニュースでキャスターを務めていた2011年の事件だった。居酒屋で同席した新人の女性キャスターに関係を迫り、トイレに逃げた彼女を追って強引にキスしようとしたり、スカートをまくり上げて下半身に手を伸ばすなどしたという。

セクハラ疑惑報道を受け、わずか10日で出演辞退

視聴率低迷で苦戦している『みんなのニュース』の後番組として期待されていた新番組でしたが…

フジテレビは「4月2日(月)からスタートする『報道・ニュース新番組(仮)』(毎週月~金曜午後4時50分~7時)に出演予定だった登坂淳一氏の出演をとりやめることにしました」と発表。登坂自身も所属事務所を通じてお詫びのコメントを発表。報道については「身に覚えのないことも多く、困惑するような内容で非常に残念」としながら「大事な新番組を傷つけることは本意ではない」ことから出演辞退に至ったと心境をつづっている。

ショーンKの経歴詐称の記憶も新しいが…

「フジテレビといえば16年4月スタートの報道番組でも、キャスターに決まっていたショーンKさん(49)が『週刊文春』で経歴詐称を報じられ降板しています。そのときの苦い経験がまったく生かされておらず、局内では『報道部はどれだけ 事前チェック が甘いんだ』との批判も出ているそうです。放送まで時間はあるとはいえ、後任探しは簡単ではありません。とんでもない緊急事態に陥ってしまいました」(テレビ局関係者)

フジテレビを代表する長寿バラエティ番組が終了

フジテレビは今年3月、2つの長寿バラエティ番組を終了させます。その番組とは、『とんねるずのみなさんのおかげでした』と『めちゃ×2イケてるッ!』。ともにフジテレビの黄金時代を築いた長寿番組ですが、近年では視聴率の低下が何度も伝えられていました。

とんねるずのみなさんのおかげでした

とんねるずの冠番組は1988年10月に「とんねるずのみなさんのおかげです」として木曜の午後9時枠でレギュラー放送をスタート。以来、2人は「ラスタとんねるず’94」「とんねるずの本汁でしょう!!」「おかげでした」と番組名を変えながら同枠でお茶の間をにぎわせてきたが、30年目の春をもって、その歴史に幕を下ろす。

打ち切られた理由についてはさまざまな憶測が

「定番とも言える石橋の言動や行動が不快だと訴えている視聴者はかなり多い。昨年10月に西内まりやの胸を何度も触ろうとして、ゲスト出演していたヒュー・ジャックマンをドン引きさせ、『そんなことをしてはいけない』と注意を促されていました。ネット上では『日本のバラエティのレベルを下げてるのは間違いなくこの番組』『戦犯は石橋』と一刀両断されています」(芸能誌ライター)
「今は女性にウケなければ数字は取れないし、“フジテレビらしさ”を出すほど視聴者は離れていく。『みなおか』打ち切りの決め手となった保毛尾田保毛男(ほもおだ・ほもお)騒動が典型的。
『バブルテイストが流行っているのに、フジのノリが受け入れられないのはなぜ?』と不思議がるおっさんが多くてあぜんとした」(フジテレビ局員)

とんねるずのギャラの高さが原因という声も

2017年6月のこちらの記事では、同28日に就任したフジテレビ新社長の「ギャラが高いタレントを一掃する」方針を伝えています。

「93年の番組打ち切りでは局長が緊急記者会見を開くなど、編成局が対応に追われました。フジテレビの宮内正喜新社長も編成畑でしたから、当時の混乱を目の当たりにしているはず。しかも宮内新社長はギャラが高いタレントを一掃する方針だと言われていますから、編成局や制作局が新社長の意向を“忖度”して、とんねるずに引導を渡す可能性は十分ありえるでしょうね」

めちゃ×2イケてるッ!

元SMAPの中居が出演も…『ぜんぶ抜く』にダブルスコアの惨敗

今年の1月2日放送の『めちゃ×2イケてるッ!中居&ナイナイ日本一周FINAL』に元SMAPの中居正広が登場するも、視聴率は芳しくなかったようです。

元SMAP・中居正広やナインティナインが出演したスペシャル番組『めちゃ×2イケてるッ!中居&ナイナイ日本一周FINAL』(フジテレビ系、2日午後6時30分~10時)の平均視聴率が、13.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)を記録した裏番組『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦6』(テレビ東京系)の半分以下にあたる6.4%と、大コケしてしまった。

“油谷さん”に扮した山本も登場したが…

番組のラストにはかつての人気キャラクター“油谷さん”に扮した山本圭壱(極楽とんぼ)が登場するサプライズもありましたが、話題にはならなかったようです。

「“最後の飛び道具”とも言える山本さえも全く話題にならないとなると、もはや壊滅状態。現在、『めちゃイケ シュウ活プロジェクト(MSK)』と銘打って最終回へ向けて盛り上げようとしていますが、マスコミの食いつきも悪く、一向に盛り上がらないままひっそりとフェードアウトしそうな予感です」

「7年前にすでに終わっていた」の声

2010年に番組の顔だった岡村隆史が体調不良で出演を見合わせたときが潮時だったのではないでしょうか。これを契機に新メンバーのオーディションが行われ、応募者のなかには今人気の若手コンビ・カミナリなどの逸材もいたのですが、なぜか通りませんでした。新たに加入したジャルジャル、たんぽぽ、敦士、重盛さと美、三中元克がうまく機能しなかったことも終了の遠因になったと思います

さらにその前から終わっていたという厳しい声も

「残念ながら、『めちゃイケ』はレギュラー陣を増やす前に番組としては終わっていたと思います。長年フジの番組にかかわってきましたが、そもそも局や局員自体の質がヤバく、沈む船から脱出する感じで、私は数年前に離れました。『めちゃイケ』もフジも好きだったので残念ですが、おそらくフジは二度と浮上することはないでしょう」

2番組終了はどのように受け止められたのか

松本人志「とんがったものを作るのは不可能に近い」

松本といえば、5日放送の『ワイドナショー』でも、同局の長寿バラエティ番組『めちゃ×2イケてるッ!』と『とんねるずのみなさんのおかげでした』の終了に対し、「ほんとに大変やわ、テレビで今、バラエティをやるのは。いわゆるちょっと攻めた企画ね、こういうのはもう今、ほぼできなくて(略)クレームのリスクも高いでしょ? とんがったものを作り上げていくっていうのは不可能に近いよ」「主婦層にハマらなかったら、絶対視聴率なんか取れない」などとコメント。終了する両番組をフォローしているようにも見えた。

2番組とも「内容が時代遅れ」と辛らつな意見も

とんねるずは肝心の番組終了発表すらスタッフコントの“身内ネタ”でお茶を濁してしまった。その“馴れ合い”が視聴者に飽きられ番組終了に至ったと自覚できていないのか。先ごろ時代の空気を読まずに保毛尾田保毛男を復活させ、炎上を招いた教訓は何ひとつ生かされていないようだ。
「フジバラエティの象徴的存在だった『めちゃイケ』ですが、数字うんぬん以前に、内容が時代遅れになっていた。総合演出の片岡飛鳥氏は、90年代後期こそ、バラエティ番組制作のカリスマでしたが、さすがにここ数年は、古さしか感じられなくなっていました。それでも、黄金期のやり方を刷新できず、また彼の劣化コピーのようなディレクターしか育てられなかったことで、フジバラエティは現状の低迷を招いてしまったのではないでしょうか」(テレビ局プロデューサー)

厳しい業績…トップ交代でフジ復活なるか

民放キー局で唯一営業赤字

2017年4月~9月期の連結決算で8億円の営業赤字

テレビ業界は視聴率の低迷から抜け出せず、広告収入が目減りしているといいます。民放キー局の2017年4月~9月期の連結決算から、地上波テレビ単体の業績を見てみると…

売上高は日本テレビ(1533億円)、フジテレビ(1272億円)、テレビ朝日(1183億円)、TBS(1075億円)、テレビ東京(541億円)の順。営業利益は日本テレビ(171億円)、テレビ朝日(35億円)、テレビ東京(32億円)、東京放送(29億円)と続くが、フジテレビだけが8億円の営業赤字となった。

フジ・メディアHDの放送事業の落ち込みが大きい

フジ・メディアHDの18年3月期連結決算の売上高は前期比1.4%減の6446億円、営業利益は5.3%増の235億円、純利益は22.3%減の213億円の見通し。主力の放送事業は視聴率が落ち込み、CM収入が減る。都市開発事業のホテル運営は好調だが、それでも補えず減収だ。番組制作費の抑制を進めたことから、営業利益は増える。前期に発生した仙台放送の連結子会社化に伴う負ののれんがなくなり、最終減益になる。18年も苦境が続くのは間違いない。

亀山千広社長から73歳・宮内正喜社長へ

昨年6月、『踊る大走査線』の亀山千広氏が退任

フジは2013年、「踊る大捜査線」シリーズなど数々のヒット作を手掛けた亀山千広氏が社長に就任したが、視聴率下落に歯止めをかけられず業績も低迷。今回の交代となった(亀山氏はBSフジの社長に就任)。
また、フジの代表取締役を29年間務め、長年経営を指揮した日枝久会長も取締役相談役に退くなど、グループは大きな節目を迎えつつある。

『笑っていいとも!』を打ち切ったが…

亀山社長はフジの長寿バラエティ番組『笑っていいとも!』を打ち切るなどの英断を下したが、新たなヒット番組を作るどころか、ドラマやバラエティ、情報番組の改革にことごとく失敗。さらに、フジの看板だった“月9ドラマ”は、視聴率ワースト記録を更新し続けた。
さらに年間視聴率は、全日、ゴールデンタイム、プライムタイムのすべてが民放4位という体たらく。このまま亀山社長に続投させても打開策が見つからないと判断した日枝久会長がさじを投げたことで、亀山社長の退任は既定路線だといわれてきた。

34年役員を務めた日枝久会長も会長職を退任

黄金時代を築き、またライブドアによる買収の危機を乗り越えた日枝会長。しかし、2014年には個人株主とフジHDの間で訴訟が起きる事態も。

フジHDが株主総会で決議した「日枝会長ら16人の取締役の選任」「取締役16人と監査役5人に対する賞与2444万5500円の支給」の2議案を無効として、個人株主が取り消しを求める訴えを起こした。日枝総会議長の不公正な議事運営などを、提訴の理由に挙げた。

長い間フジテレビを牛耳ってきた日枝元会長に対し、新社長が「口出しさせない」という条件を出したという記事もあります。

「宮内さんは社長就任の話が出た際に、日枝久会長ほか、誰にも自分のやり方に口出しさせないという条件を付けたそうです。その代わり、2年間で結果を出す。結果が出なかった場合は自ら社長を辞任すると、腹をくくっているといいます。すでに73歳で失うものはありませんから、大ナタが振るわれるのを局員は覚悟していますよ」

新社長・宮内正喜氏は通称“コストカッター”

一部で最強の“コストカッター”といわれるフジ新社長・宮内正喜氏は、今年6月の就任後に、次々と番組の打ち切りを遂行。その1つが『おかげでした』だったというわけだ。

宮内社長が語る視聴率の改善策

東洋経済オンラインのインタビュー記事では、フジテレビの視聴率改善策を問われて次のように答えています。

その質問に答えられれば苦労はしないのだが…。視聴率を取れる企画が出てこないのは、番組の作り手と視聴者の間で、何というのかな。「心のキャッチボール」みたいなことができていないんじゃないか。感動というか、言葉にしにくいが、そういう部分が欠けているのでないかと。
心に触れるというか、視聴者との心のキャッチボールができ、双方向で手応えのある企画が生まれれば、それを膨らませ、数を増やす。そういうことで視聴率アップが望めるのではないかとぼんやり思っている。

力強い言葉で未来を語っていた宮内社長ですが、期待の報道新番組がスタート前につまづくなど、フジテレビの先行きはいまだ見えていません。系列局の岡山放送やBSフジの社長を歴任して外からフジテレビを見てきた知見や、73歳という経験を活かし、フジテレビを救うことができるのでしょうか。