業績が好調な企業と不調な企業まとめ 2018年秋

2018年11月30日更新

日本では3月決算の企業が多いため、10月下旬から11月上旬にかけて2019年度の中間決算(第2四半期)の発表が集中。それらがほぼ出そろったことで見えてきた、好調な企業、不調な企業をまとめてみました。ちなみに半年前のまとめはコチラです。

業績好調な企業

スシロー

売上高・利益ともに創業以来の最高を更新

回転ずし最大手の「あきんどスシロー」を展開するスシローグローバルホールディングスは9月決算です。

スシローグローバルホールディングスは11月8日、2018年9月期 決算説明会を開催。売上収益、営業利益ともに創業以来の最高益を更新したと発表した。
同社の2018年9月期決算は、売上収益が1,748億円(対前年比11.8%増)だった。コスト高の環境下にも関わらず、利益成長率は30%弱と2ケタ成長を実現。また、客単価も向上している。

18年9月期の営業利益は117億(前年比27.3%増)、当期利益は79億円(同14・9%増)と増収増益で、いずれも過去最高となっています。

新規出店数は業界初の国内500店舗に到達

新規出店数は、回転すし業界初の国内500店舗に到達。担当者は「大台に乗せる記念すべき1年になった」と総括している。
国内では引き続き、スシローを3年で100店舗出店していく。主力の郊外型モデルの店舗に加えて、都心モデル、商業施設内モデルの店舗も広げる。郊外型モデルを年20~30店舗、都心モデルを5~10店舗、商業施設内モデルを5~10店舗のペースで出店する計画だ。

さらに今後は海外への出店を加速させるようです。

回転すしチェーンを展開するスシローグローバルホールディングスは、海外出店を加速する。2019年9月期からの3年間で、これまでに出店した韓国と台湾に加えて、新たに3カ国以上に進出。19年9月期はシンガポールへの出店を計画する。3年間で海外店舗比率を全体の1割に引き上げ、海外売上高200億円を目指す。

最終目標は売上収益1兆円「将来はトヨタ、ソニーのように」

水留社長が最終目標として掲げるのは、売上収益1兆円という大きなビジョン。その目標に向かってスタートを切る3年間となる。「将来はトヨタ、ソニー、パナソニックのように、世界中どこに行っても目にするブランドにまで成長させる。そうした最終的な展望につなげるために、大事な向こう3年間になる。次の5年、10年につながるようなノウハウを確立し、人材を構築していきたい」としている。

ドン・キホーテ

29期連続で増収増益を達成

総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を運営するドンキホーテホールディングス(HD)は6月決算。今年8月に発表した18年6月期の決算では、29期連続の増収増益を達成しています。

“驚安の殿堂”のドン・キホーテを運営するドンキホーテホールディングス(ドンキホーテ)の経営が市場参加者の関心を集めている。同社は、1989年6月期から2018年6月期まで29期連続で増収増益を達成している。
2018年6月期連結決算は絶好調だった。売上高は、前期に比べて1127億円増え9415億円(13.6%増)、営業利益は515億円(同11.7%増)、当期純利益は364億円(同10.0%増)といずれも2ケタの伸び。ドン・キホーテ1号店開業以来、29期連続の増収増益を続け、純利益は9期連続で過去最高を更新した。

独自の陳列手法やインバウンド需要の取り込みなどで成長

ドンキホーテは独自の陳列手法や店舗運営、消費者の欲しい気持ちをつかむ商品開発によって成長を続けている。近年では中国人観光客などの“インバウンド需要”を取り込めたことも、ドンキホーテの成長を支えた。
「ドン・キホーテ」はインバウンド消費を着実に取り込んでいます。2018年6月期の免税店売上高は前期比56.1%増の568億円に拡大。日本を訪れる訪日外国人数の増加を背景に、客数が好調に推移しました。道頓堀御堂筋店や道頓堀店は、売上高に占める免税売上構成比が65%以上となる盛況ぶりです。
外国人観光客にとって、「ドン・キホーテ」の魅力は夜中でも買い物できる点にあります。

今期中に売上高1兆円突破へ「将来的には2兆円」

8月の決算発表でドンキホーテHDの大原孝治社長兼CEOは次のように語っています。

2020年をターゲットにしていた売り上げ1兆円の大台も、1年前倒しで来年の2019年6月期に到達する見込みだ。
大原氏は、「将来的には売り上げは2兆円を目指したいし、売り上げ以上に重視しているのが営業利益で、営業利益では1000億円をターゲットにしたい」としていた。前期は売り上げが9415億円、営業利益が515億円、今期は売り上げ1兆円、営業利益で530億円を見込んでいる。

10月には総合スーパー「ユニー」買収を発表 小売4位の売上規模に

ドンキは10月11日、東海を地盤に総合スーパー(GMS)の「アピタ」や「ピアゴ」を展開するユニーの買収を発表した。同社の親会社であるユニー・ファミリーマートホールディングス(以下、ユニー・ファミマ)から昨年11月、ユニー株の40%を取得したが、残りの60%を買い入れて完全子会社化する。
ドンキは、ユニーの5813億円(18年度予想)を加えることで、単純計算で売上規模を1兆5000億円規模に拡大する。これは、イオン、セブン&アイ・HD(3382)、ファーストリテイリング(9983)に次ぐ小売4位。アマゾン・ドット・コムの日本での売上高119億ドル(17年、1ドル110円換算で1兆3097億円)も上回る。

ソニー

2年連続で最高益更新へ

ソニーは30日、2019年3月期連結決算の業績見通しを上方修正し、本業のもうけを示す営業利益が前期比18.4%増の8700億円になると発表した。主力のゲームがけん引するほか、音楽事業の買収も寄与し、2年連続で最高益を更新する。

19年3月期第2四半期の連結業績は、売上高及び営業収入が4兆1363億円(前年同期比5.5%増)、営業利益4345億円(同20.1%増)、純利益3994億円(同88.7%増)と、いずれも前年同期を上回る好調な数値が並んでいます。

ゲーム事業が好調

好調な数値をけん引しているカテゴリーはゲーム&ネットワークサービス分野。この分野における第2四半期の売上高は5501億円で、前年同期よりも1169億円も増額(27%増)しています。営業利益も906億円で前年から65%増という大幅な増益となっています。
また、通期売上高予想を7月時点から1700億円引き上げて2兆3500億円に、同じく営業利益予想を+600億円の3100億円に上方修正。プレイステーション4の販売計画も50万台引き上げて1750万台に上方修正しているところからも、ゲーム&ネットワークサービス分野の好調っぷりがうかがえます。

日立製作所

過去最高益 IoT基盤「Lumada」も好調

日立の純利益は、前年同期比20.2%増の1929億円だった。モノのインターネット(IoT)の独自基盤「ルマーダ」の関連サービスが好調だった。中国や米国向けの建設機械も貢献した。

18年4~9月期の連結業績は、売上高に当たる売上収益が4兆4918億円(前年同期比2.6%増)、調整後営業利益が3445億円(同13.6%増)。営業利益と純利益は4~9月期として過去最高を更新しています。
鉄道などの社会・産業システムや情報・通信システム、建設機械などが順調に拡大したことが要因ということです。

子会社のクラリオンを売却 IoTなど中核事業に注力

決算発表日と同日の10月26日に子会社クラリオンの売却を発表しています。

日立製作所が東証1部上場の子会社で、カーナビなどを手掛けるクラリオンを、フランス自動車部品大手のフォルシアに売却すると発表した。売却額は899億円で、2019年3月期連結決算に事業再編利益として約650億円を計上する。
低収益事業を切り離し、あらゆるモノがインターネットでつながる「IoT」やインフラといった中核事業に注力する。グループの営業利益率を一段と改善させたい考えだ。
クラリオンは2006年に日立傘下に入り、日産自動車やマツダなどへカーナビを供給していますが、スマートフォンの普及により需要が伸び悩み、2018年9月期の純利益が前年同期比−85%減の3億円に落ち込むなど、業績が低迷。
今回の売却は日立が進める事業整理の一環で、同社は低収益部門の売却により国内外のグループ会社を約900社から500社程度にまで整理・統合し、2021年度に連結ベースの営業利益率を10%まで高める計画のようです。

任天堂

引き続き好調で19年度第2四半期も増収増益

18年3月期連結決算で9年ぶりの増収、7年ぶりの1兆円超えというV字回復を見せ、前回のまとめでも「好調な企業」として取り上げた任天堂。10月30日に発表された19年度第2四半期の数値を見ても好調をキープしていることがうかがえます。
18年4~9月連結業績は、売上高が3889億円(前年同期比4.0%増)、営業利益614億円(同53.7%増)、経常利益919億円(同32.1%増)、純利益が645億円(同25.4%増)となっています。

「Nintendo Switch」向けのソフト販売が好調をけん引

ソフトの販売本数は、前年同期比91.3%増の4213万本と絶好調。この期間のミリオンセラーは6本出ました。ただ、新規タイトルは『マリオテニス エース』(216万本)、『ドンキーコング トロピカルフリーズ』(167万本)の2本のみ。『マリオカート8 デラックス』『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』『スーパーマリオ オデッセイ』『スプラトゥーン2』が、定番タイトルとして売れ続けているという状況です。

協業スマホゲームも順調なスタート

「スマートデバイス・IP関連収入等」の売上高は前年同期比4.7%増の187億円(前年度下半期は約214億円)。あまり伸びてはいませんが、下半期は9月27日に配信が始まった『ドラガリアロスト』の売上も加わってきます。『ドラガリアロスト』はアメリカでのApp Storeのユーザーレビューが4.8と高く、海外でも盛り上がりを見せています。
また、今年度中には『マリオカート』のスマホ版『マリオカート ツアー』の配信も予定されています。

串カツ田中

6月スタートの「全面禁煙」でどうなった?

串カツチェーン「串カツ田中」を運営する串カツ田中HDは、6月に持株会社体制へ移行したばかり。また、同月から一部フロアを除く「全面禁煙」を実施したことで、それまで好調に推移していた業績がどうなるかに注目が集まっています。
「全面禁煙」実施直後の6月は…

客数前年同期比102.2%に伸びましたが、客単価が95.0%に落ち、売上高は97.1%となった(既存店の動向)。
19時と23時の時間帯の売上が20時、22時台に分散。ピーク時間が早まり、早い時間帯の売上高が増加する一方、深夜帯の売上高が減少した。

つまり客数は伸びたものの、未成年客の増加と割引キャンペーンによる客単価減少の影響で売上が落ち込むことになりました。
しかし、その後は…

8月は売上高9.7%増

客数は6月が2.2%増、7月が4.1%増、8月が12.1%増と3カ月連続でプラス
8月は客数が12.1%増と大きく伸び、それに引き上げられる形で売上高が9.7%増と大幅な増収を達成することに成功しました。

さらにその後は、9月に客数、客単価ともにマイナス成長となったものの、10月には巻き返しに成功しています。

11月5日に更新された串カツ田中HDの2018年10月の既存店売上高は、対前年同月比で111.6%のプラス成長となりました。
内訳としては客数が同116.0%、客単価が同96.2%となり、客数の増加が客単価の減少をカバーする形となりました。

第3四半期決算はアゲアゲ

串カツ田中HDは11月決算なので通期の数値はもう少し待つ必要があるものの、10月に発表された18年11月期第3四半期の連結決算は好調な数値を示しています。

居酒屋チェーン「串カツ田中」の業績が好調だ。10月15日に初めて開示された親会社「串カツ田中ホールディングス」の連結決算(2018年11月期第3四半期)は、売上高が54億5千万円、本業のもうけを示す営業利益3億9千万円、純利益が3億3千万円だった。
連結決算は今回が初めての開示だったため、前年データとの比較ができない。ただ、2018年11月期の通期見通しでは純利益を3億9000万円と見込んでいる。現時点(第3四半期の純利益=3億3千万円)で到達率は約86%に達しており、投資家のなかには業績上振れへの期待もありそうだ。

業績不調な企業

RIZAP

19年3月期通期で70億円の赤字見込み

フィットネスクラブ運営のRIZAP(ライザップ)グループは14日、2019年3月期の連結純損益予想を従来の159億円の黒字から70億円の赤字に下方修正した。前期は92億円の黒字だった。瀬戸健社長が役員報酬を返上する。
2018年度上半期(4~9月)の連結決算は、売上高が前年同期比74.3%増の1091億500万円、営業損益が88億2900万円の赤字(前年同期は49億8700万円の黒字)、純損益が85億3200万円の赤字(前年同期は29億3200万円の黒字)に転落した。

発表翌日の株価はストップ安水準に

11月15日の株式市場で、2019年3月期の通期連結業績が赤字に転落する見込みのRIZAPグループ(札証アンビシャス)に売り注文が殺到。午前の取引を終えた時点で、ストップ安(値幅制限の下限)水準となる前日比80円安(-18.8%)の345円売り気配となっているが、売買は成立しなかった。

同日、グループ9社も軒並み株価が大幅に下落しました。

急ピッチのM&Aがアダに

RIZAPグループはこれまで、主力のボディーメーク以外に事業を広げるため、アパレル企業、出版社、エンターテインメント店などを傘下にするM&Aを積極的に展開。経営再建ノウハウを生かして立て直しを図り、成長の原動力とする施策を採ってきたが、今期は再建の進捗(しんちょく)が当初の見込みから遅れ、多くの子会社の赤字幅が拡大したことが響いた。
「ライザップはM&Aを繰り返し、今では連結子会社が80社以上に達し、買収した上場企業は9社に上ります。ライザップが目をつける企業は業績の悪いところばかりです。安く買い叩いて、その後、業績を回復させる手法ですが、これがうまく機能しなかった」(市場関係者)

“本業”のジム事業は堅調

本業ともいえる、減量ジム事業は堅調だ。利益については開示されていないが、売上高は前年同期比で約7割増。新規会員1.5万人を獲得している。前年度は1ケタに抑制した出店数は、年度末までに50店に迫る計画だ。

5月に招いたばかりの「プロ経営者」をCOOから外して話題に

今回の決算発表の直前、5月にCOOとして招いた前カルビーCEOの松本晃氏を10月に構造改革担当へ肩書変更していたことが明らかになり、松本氏が瀬戸健社長ら経営陣と対立しているのではないかと伝えられ、話題になりました。

今年5月、前カルビーCEO(最高経営責任者)の松本晃氏をCOO(最高執行責任者)に招き、さらなる成長を図ろうとしていた。だが松本氏は、傘下に収めた企業の経営再建が終わらないうちに次なるM&Aを進めようとする方針に違和感を抱き、いったんM&Aを停止して体制の改善に努めるべきだと説いたという。

松本氏は“対立疑惑”について次のように語っています。

一部で報道されたが、私と瀬戸さんの中で対立はない。一方、経営者との間では対立は存在している。ただし、これは健全な対立。会社に対立は必要であり、対立のない会社はかえってよくない。

傘下の「ジーンズメイト」は業績が上向き

業績予想が赤字転落となったRIZAPですが、同社の傘下入り後に業績を立て直しつつある企業も。そのひとつが、カジュアル衣料を販売する「ジーンズメイト」です。

RIZAPによるジーンズメイトの買収は「変化」を期待させるものであった。100円台後半まで低迷していた株価も、RAIZAPグループ入りから僅か1年足らずで一時1,300円台後半まで回復するなど、大幅な上昇を見せた。
RIZAPグループ傘下で「ワケあり業態」「24時間営業」「路面店」という、ある意味“アイデンティティ”とも言える部分からの脱却を図り、事業の「選択」と「集中」を進めたジーンズメイト。こうした事業の「スリム化」とRIZAPグループによるシナジー創出の結果、2018年には第1四半期としては4期ぶりの、第2四半期としては11期ぶりの営業黒字化を達成したほか、2017年8月からは15ヶ月連続の前年比既存店売上高更新を記録。低迷からの脱却を果たしつつある。

吉野家

中間決算で8億円の赤字

牛丼チェーン「吉野家」やうどんチェーン「はなまる」などを展開する吉野家HDは2月決算なので、18年3~8月期が第2四半期になります。

2018年3~8月の連結決算の最終損益が8.5億円の赤字に転落した。前年同期は12.9億円の黒字だった。中間期の最終赤字は8年ぶりのことだ。
売上高は1003億円と前年同期比2.7%増。初の1000億円の大台に達した。しかし、人件費などを含む販管費の負担が重く、本業の儲けを示す営業利益は5500万円にとどまり、同97.4%減と大きく落ち込んだ。

通期でも6期ぶりに赤字転落の見通し

売上高は期初計画の2110億円から2050億円(前期比3.3%増)に減額。純損益については17億円の黒字から一転して11億円の赤字へと下方修正するなど、6期ぶりに最終赤字へ転落する見通しとなった。

売上増なのに…人件費上昇が収益圧迫

売り上げは伸びてもコストの増加を補い切れなかった。肉やコメなどの原材料が高騰し、人件費も上昇した。店舗の従業員の採用や教育の費用が膨らんだのは人手不足が背景にある。
吉野家で期初に当たる3~4月は、学生のアルバイトが卒業や進級を理由に入れ替わるタイミングで、例年、採用を強化する時期だ。だが、今春は必要な人数のアルバイトを確保するのに苦戦。結果的に店舗で働く社員の残業代が増えてしまった。

グループ会社「アークミール」の不振が響く

グループ会社のアークミールの不振が重なった。同社は「ステーキのどん」や「しゃぶしゃぶどん亭」など肉料理の業態を手掛けており、主に首都圏や京阪神地域のロードサイドに174店舗を展開する(8月末現在)。
アークミールはグループ全体の売上高の1割程度を占めるが、ペッパーフードサービスが展開する「いきなり!ステーキ」が出店を加速するなど攻勢を強めており、不振が続いてきた。
同社の18年3~8月期の売上高は103億円で、前年同期より11.6億円、10.1%減った。セグメント営業利益は3.4億円の赤字(前年同期は2.1億円の黒字)に転落した。
上半期のセグメント営業利益は吉野家(12.4億円)、はなまる(7.6億円)、京樽(1.9億円)と軒並み黒字を記録したなかで、アークミールは3.4億円の赤字だった。アークミールの再建が吉野家HDの喫緊の課題となっている。

モスバーガー(モスフードサービス)

通期の業績は11年ぶりの赤字予想

ハンバーガーチェーン「モスバーガー」を展開するモスフードサービスは29日、関東甲信地方の店舗で8月に食中毒が発生した影響で、2019年3月期の連結業績予想を下方修正し、純損益が8億円の赤字(前期は24億円の黒字)に転落すると発表した。従来は25億円の黒字を見込んでいた。赤字になれば、08年3月期以来、11年ぶり。
売上高は従来より60億円少ない660億円(前期比7.5%減)、営業利益は34億円少ない4億円(同89.3%減)とそれぞれ下方修正した。

8月に発生した食中毒事故が響く

8月に起きた食中毒事故が響いた。長野県にあるモスバーガーのFC加盟店で腸管出血性大腸菌O121を原因とする食中毒事故が発生したことで収益が悪化すると判断した。また、食中毒事故により収益が悪化するFC店に対して営業補償を実施するため、4~9月期に9億6,100万円の特別損失を計上する。これが純損益の下方修正の大きな要因となった。

近年“客離れ”で苦しんでいたモスバーガー

食中毒は赤字転落の大きな要因ではあるものの、かねてより“客離れ”による苦戦が伝えられていました。以下の記事は食中毒事故が発覚する前(8月)のものです。

「モスバーガー」が客離れで苦しんでいる。7月の既存店客数は前年同月比7.1%減で、10カ月連続の前年割れだ。特に今年に入ってからの減少幅が尋常ではなく、1月が1.9%減、2月が3.4%減、3月が4.7%減、4〜7月の累計が6.6%減となっている。売上高は7月まで6カ月連続で前年を下回った。
客離れはここ数カ月が特に著しいが、それ以前から客数の減少は続いていた。2014年3月期から18年3月期まで5年連続で前年割れを起こしている。客離れが止まらない状況にあるといえる。

モスのポジショニングが変化 “中途半端な”位置に…

客離れの要因としてよく指摘されているのは、「プレミアム(高級)バーガー」店の台頭による「モスバーガーのポジショニングの変化」です。

海外発のプレミアムハンバーガー店の台頭も著しい。15年に「ベアバーガー」や「シェイクシャック」が上陸し、16年には「カールスジュニア」、17年には「ウマミバーガー」、18年には「ファットバーガー」が日本で1号店をオープンしている。
モスバーガーのポジショニングが変わってしまったことも見逃せない。以前はモスバーガーを高級ハンバーガー店とみなしていた人が少なくなかった。しかし、さらに高級なプレミアムハンバーガー店が台頭したことでモスバーガーの高級感が薄れてしまい、中価格帯の中途半端なポジションに追いやられてしまっている。
かつてのハンバーガー業界は、「高品質のモス、低価格のマクドナルド」という構図で大方見られており、モスの高品質感は際立っていた。しかし近年は高級バーガー店が台頭したことで「高品質の高級バーガー店、中価格・中品質のモス、低価格のマクドナルド」という構図に変移してしまっている。こうしてモスは中途半端な位置に追いやられてしまい、それによりブランド力が低下し、以前のようには顧客を引き付けることができなくなってしまったのではないか。

“苦戦”が伝えられている企業

最後に番外編として、基本的には業績好調ながら、一部で“苦戦”が伝えられている企業を紹介しておきます。

いきなり!ステーキ(ペッパーフードサービス)

業績は絶好調も…ニューヨークで苦戦

日本で335店舗以上を展開し、昨年2月にニューヨークに進出したのはペッパーフードサービスが経営する「いきなり!ステーキ」。
同社は顧客の前で希望する量を切り分ける「オーダーカット」スタイルと、立ち食いの気軽さ、格安さが受け2018年12月期決算(1~6月)は売り上げ279億円(前期比81.5%増)、営業利益は15億円(同24%増)と業績は絶好調。さらにこの1~6月だけで新規に93店舗を出店させている。
日本国内のこの勢いを受けてニューヨーク・マンハッタンに海外1号店を出店、以後この10月までにニューヨークに10店舗をオープンした。だが客足は低調で収益も予想を下回っている。

一瀬社長「安く売ればいいというわけではない」

一瀬邦夫社長は9日にニューヨーク市内で開いた記者会見で、同市内の店舗について「まだまだ苦戦している。売り上げも少ないし、お客様数も少ない」と述べ、運営を改善する必要性を強調した。
一瀬社長は「日本では安く売ってお客様数が圧倒的に多く(という)成功した事業モデルが、こちらで成功できない。安く売ればいいというわけではない」と指摘。

日本でも「大して安くない」と客離れ?

8月の「いきなり!ステーキ」既存店客数は前年同月比0.9%増と、わずかな増加率にとどまった。客単価が落ち込んだため、売上高は2.8%減となっている。「いきなり!ステーキ」といえば、行列ができるステーキ店として知られ、多くのメディアでも紹介される人気店だ。しかし、ここにきて集客力の衰えが目立っている。
最近は「大して安くない」といった声を耳にすることも少なくない。「いきなり!ステーキ」は、立て続けに値上げを実施している。それにより商品の価格が高騰しており、たとえば、全店舗で販売している「リブロースステーキ」(現在、1グラム当たり6.9円)の1グラム当たりの価格は、昨年7月より前と比べ0.4円高くなっている。同じく全店販売の「ヒレステーキ」(同9円)は昨年3月に値上げし、0.5円高くなった。このほかにもいくつか値上げしており、値頃感は急速に低下している。

ただ上の記事内でも、いきなり!ステーキの業績は「決して悪いわけではない。むしろ絶好調といっていい」とし、さらに「ペッパーフードサービスの業績も好調」とフォローされています。