特集2017年1月20日更新

バラク・オバマ米大統領の8年間を振り返る

2017年1月20日、オバマ大統領は8年間の任期を終え、トランプ大統領へとバトンタッチします。オバマ氏の8年間を振り返ります。

最新ニュース

メラニア夫人が手つなぎ「拒否」、トランプは弱っている?

ニューズウィーク日本版 / 2017年5月24日 19時32分

<外遊中に2度、手をつなごうとしたトランプ米大統領をメラニア夫人が「拒否」した動画が話題になっている。トランプといえば力強い握手を得意としてきたはずなのに、何があったのか......>中東・欧州歴訪中のドナルド・トランプ米大統領。 [全文を読む]

1月20日、8年間の任期を終え退任

1月18日、最後の記者会見

トランプ氏の大統領就任を前に、オバマ大統領が最後の記者会見を行った。もしトランプ次期大統領がアメリカの「民主主義という価値観」を侵害した場合には自ら声を上げると約束。また「私たちは大丈夫だ」と国民に語りかけた。

「少し静かにしていたい」

トランプ氏の大統領就任式を2日後に控え、オバマ氏が公の場に姿を見せるのはこれが最後。会見では「物を書きたいし、少し静かにしていたい。娘たちと貴重な時間を過ごしたい」と現在の心境を語った。
その一方で、組織的な差別や投票権の侵害、報道の締め付け、若い移民の検挙といった動きがあった際には黙っていないと強調。「政治が正常に機能していればよいが、私たちの基本的な価値観を危機にさらしかねない問題や瞬間が生じたときは別だ」と力を込めた。

トランプ次期大統領に「警告」も

オバマ米大統領は18日、退任を目前に最後の記者会見を開き、トランプ次期大統領が「ディール(取引)外交」の姿勢を顕著にしていることに、強く警告した。また、トランプ氏が「民主主義という米国の核心的な価値観」を侵害した場合は、黙することなく干渉する考えも表明した。

1月10日に最後の記者会見「Yes We Did」

オバマ氏が黒人として初めて米国の大統領に選ばれたことで、米国が抱える人種差別問題の解決への期待が高まったが、これについては実現が困難だったと認めた。
その上で、若い世代に望みを託し、変革をもたらす力を信じるよう、「私たちにはできる(Yes We Can)」と呼びかけた。最後にオバマ大統領は、「私たちはやり遂げた(Yes We Did)」と振り返り、改めて「私たちにはできる」と繰り返して、演説を締めくくった。

この演説でオバマ大統領は、8年間の任期でリーマン・ショックなどからの経済回復、イラク、アフガニスタン両戦争の終結などの世界平和への取り組みについて振り返った。

演説後のツイートが過去最高のRT数

 オバマ大統領は1月10日夜、@POTUSアカウントから次のようにツイートした。「いろいろとありがとう。私の最後の願いは、最初の願いと同じです。どうか信じてください。私ではなく、皆さんの変化を生み出す力を」
 11日正午時点で、このメッセージは50万回以上リツイートされた。Twitterの広報担当者ニック・パシリオ氏によれば、これはオバマ大統領のこれまでのどのツイートをも上回るリツイート数だという。

1月1日には自らの8年間を振り返る

「この8年間に実現した顕著な進歩について振り返ってみます」

「80年間で最悪の金融危機に直面し、歴史上で最も長い成長を続けました」

「ほぼすべてのアメリカ人が手頃な価格の保健医療の保障を利用できるようになりました」

「海外の石油からクリーンなエネルギーに変換し、燃費基準を2倍にしました。私達の地球を救うために地球規模で行動しました。」

「海外にいた米軍を帰国させるとともに、米国のリーダーシップを強化しました。各国との連携を強め、外交をリードしました」

「平等な結婚の実現から障壁の排除まで、すべてが平等のもとに生まれたことを再確認するための歴史を作りました」

「大統領として国民に奉仕することが、私の人生の特権でした。(今後は)いち市民としての人生を楽しみにしています」

オバマ大統領の8年間

経済・金融政策

リーマン・ショックの直後という、最悪のタイミングで就任したオバマ大統領。世界経済が破局しかねない危機から救った。

リーマン・ショックからの立て直し

オバマさんが大統領になったのは、09年1月。つまり、リーマンショックの4カ月後。まさに最悪の時期に大統領になった。しかし、アメリカと世界経済を破局させませんでした。8年の任期が終わりつつあり、世界経済には再び暗雲が漂っています。しかし、「震源地」は「中国か?ドイツか?」と言われていて、「アメリカから危機が起こる」という人は、あまりいません。

雇用対策

アメリカはオバマ政権下で失業率が4%台に低下しました。日本と算出方法が異なるため、これは事実上の“完全雇用”の状態といえます。

最低賃金の引き上げ

コロンビア州を含む20州で最低賃金引きあげが実施される。現時点ではマサチューセッツ州、ワシントン州が11ドル(約1291円)、アリゾナ州、バーモント州が10ドル(約1173円)、コロラド州が9.30ドル(約1091円)など、最高1.50ドル(約176円)の引きあげに成功。
ニューヨーク州、カリフォルニア州は最低15ドル(約1760円)への引きあげを目標としているが、時間を要するものと予測。カリフォルニア州は今年10.50ドル(約1231円)、2022年までに15ドルという方向性を打ちだしている。

医療保険制度改革(オバマケア)

オバマ氏が導入したこの医療改革(オバマケア)で、米国民2000万人が医療保険に新規加入している。オバマケアとは、アメリカの医療保険制度を改革する法律のニックネームで アフォーダブル・ケア・アクト(ACA)と呼ばれる。アメリカは日本と違って国民皆保険が無く、約4800万人(人口の約16%)の国民が医療保険に入っていないといわれる。そこで保険に入ってない人でも職場を通じて保険を買う事ができるようにする制度だ。

トランプ政権下では廃止になる予定

米上院は12日、バラク・オバマ(Barack Obama)大統領が成立させた医療保険制度「医療費負担適正化法(通称オバマケア、Obamacare)」の撤廃に向けた予算決議案を可決した。
 上院と同じく共和党が過半数を占める下院でも、早ければ13日にも採決が行われる見通し。今月20日のドナルド・トランプ(Donald Trump)次期大統領の就任を前に、オバマケア廃止に向けた動きが本格化する。

「弱腰」と言われたテロ対策

 これまでアメリカは多額の軍事費を使い、「世界の警察官」としてふるまってきた。しかし、すでにバラク・オバマ大統領は世界の警察官をやめると宣言した。トランプ外交はそれを加速すると思われるので、世界はいっそう混迷を深めるだろう。
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)も、社説で「ISが米国内に与える危険性を認めたがらない姿勢を改めたほうがいい」と、大統領の弱腰を批判。『事件を「テロ行為」と断言したものの、「イスラム」「ジハード」「イスラム国」といった言葉をいまだに使用していない』と、トランプ氏と同様の指摘をしている。

世界平和への取り組み

彼が就任早々に「核なき世界」の実現を高らかに宣言し、ノーベル平和賞まで貰った割には実際には大したことは出来なかったとは言え、任期の終わり近くになってイランとの核合意を成立させたこと、広島を訪れたことは、1つの一貫したメッセージではあった。アフガニスタンとイラクからの撤兵は当然のことではあるけれども、ブッシュ子政権がこの2つの国の枠組みをブチ壊してしまった誤りの深刻さを後始末するのは容易なことではなく、その難渋を突いてISという癌細胞のようなものが生まれ、アル・カイーダが復活するのを防ぐことは出来なかった。

核廃絶を訴えノーベル平和賞受賞

 2009年、オバマ大統領のプラハ演説は、原爆を使用した唯一の国の責務として、核廃絶を訴えた。格調高いこの演説で、ノーベル平和賞を受賞したが、一方で核兵器の近代化・開発に30年間で1兆ドルの予算を承認した。包括的核実験禁止条約(CTBT)も批准していない。

キューバ国交正常化

オバマは、キューバとも和解します。「AIIB事件」があった翌月の2015年4月、フィデル・カストロの後継者ラウル・カストロ議長と会談。米―キューバ首脳会談は、実に59年ぶりでした。
同年5月、アメリカは、キューバの「テロ支援国家指定」を解除。同7月、アメリカーキューバ、国交回復。これも、極めて戦略的な動きです。

パリ協定

G20サミット開催前日の3日、オバマ大統領と習近平(シー・ジンピン)国家主席は首脳会談を行った。両国は地球温暖化対策のための国際的枠組みである「パリ協定」の批准を発表した。同協定の発効には最低でも55カ国以上が批准し、かつ批准国の温室効果ガス排出量が世界全体の55%以上になる必要がある。排出量が全世界の24%を占める中国、15%を占める米国が批准したことで、発効に向けて大きく前進した。

同性婚などLGBT関連

オバマ大統領は2012年、現職の米大統領として初めて、同性婚の合法化を支持する考えを表明した。これを受けて、国民の多数はオバマ大統領の就任後、「同性愛者を取り巻く環境は前進した」と考えている。

黒人差別問題

2009年の新政権誕生にあたり、バラク・オバマ大統領が黒人初の大統領として就任するなど、表面上は人種差別問題が徐々に解消されつつある印象を他国に与えている米国。
社会的成功をおさめるうえで、黒人であることは女性であることと同じくらいネガティブな要因とされてきた。しかし所得格差を始めとする様々な調査からは、そうした不平等な現状がほとんど改善されていない証拠が明るみにでている。。

人種問題に強く踏み込めなかったという批判も

 無理もない。オバマは、黒人であるが故に黒人の共感を得やすいが、白人有権者の反応を考えると、大統領として述べられることに限界がある。オバマが人種問題について発言すると、強い共感と激しい反発の両方を招く結果になるのだ。
 ペンシルベニア大学のダニエル・ギリオン助教(政治学)によれば、大統領就任以来最初の2年間のオバマは、61年以降の民主党大統領の中で最も人種に関する発言が少なかったという。この状況は、大統領を退くまで変わりそうにない。

銃規制

アメリカのバラク・オバマ大統領が、記者会見の最中に落涙した。1月5日のことだ。
大統領権限で、銃規制を強化すると発表した直後に、である。
だが“銃規制”といっても、それは販売免許の義務範囲を広げる、購入者のバックグラウンドチェックを強化する等のものだ。つまり、ごく普通のアメリカ人は、これからも銃を買えるのだ。
米国ではフロリダ州オーランドの銃乱射テロ事件で49人が殺害されたことを受け、銃購入の規制強化を求める声が高まっている。民主党は15日、テロ容疑者の銃購入を規制する法案の採決を求め、14時間以上に及ぶ議事妨害(フィリバスター)を行った。民主党のクリス・マーフィー上院議員は16日未明にツイッターで、民主党と共和党の指導部が「テロ監視リストに載っている人物が銃を入手できないようにする法案の採決に向けた道を進むことで合意した」と述べた。

一方で銃の所有に関する大幅な規制緩和も

カリフォルニア州ではセミオートマチック・ライフル(自動小銃)を含む一部の銃器への規制が強化されるのに対し、テネシー州では「軍隊の現役服務者・退役者・名誉除隊者」という条件つきで、銃所有年齢が21歳から18歳に引きさげられる。
そのほかベビーシッターなどが不法侵入者を撃退する意図で、銃器を用いることが法的に許可される。こうした流れをうけ、銃の需要が伸びることは間違いないだろう。

エネルギー政策

オバマ政権の間に、米国は石油の中東依存度を大きく減少させ、国内のシェールガス・シェールオイルの開発を進めた。エネルギー・リスクから一定程度自由になった米国の対中東政策の選択はそれだけ増加し、化石燃料に関する規制撤廃推進を明言するトランプ氏の下、その選択の幅はますます拡大するであろう。

司法制度改革

 人権派弁護士だったオバマは、これまで量刑の調整を含む司法制度改革を主張してきた。「私たちの国家は、セカンドチャンスの国であり、過去の過ちによって、資格のある個人が社会復帰して自分たちの家族や地域に貢献する機会を奪うことはしないだろう」と、かつて発言している。
 だが、連邦議会はオバマに抵抗する共和党が優勢で、刑事司法改革は進まなかった。

「平和」で「全ての人が平等」な世界を目指していたオバマ大統領。また、リーマン・ショック直後の就任でアメリカ経済を立て直すという困難な任務も果たしました。一方で、テロ対策や中東への対応では「弱腰」とまで非難される一面もありました。ただ、「弱者」の立場を常に気にかけていた彼の功績は忘れてはならないでしょう。
「オバマ政権」を強く批判し新大統領を勝ち取ったトランプ氏の就任により、アメリカは大きく変わりそうです。外交や人種差別問題にも大きな動きがあるかもしれません。

関連ニュース