2018年の10大ニュース 海外編

2018年12月31日 更新

2018年の海外ニュースでは、アメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長、そしてその両国と中国や韓国が絡んだ米中関係、南北関係の話題が目立ちました。そんな2018年の海外10大ニュースを紹介します。

記事・画像提供:時事通信社

米朝が史上初の首脳会談

 米朝首脳会談が史上初めて実現した。トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は6月12日、シンガポールで会談。「朝鮮半島の完全な非核化」を目指すと明記した共同声明を発表したものの、核廃棄の査察や完了期限といった肝心の文言はなく、具体策は先送りされた。
 トランプ氏は米韓合同軍事演習の凍結まで表明し、首脳会談は米側が大きく譲歩する結果となった。しかし、北朝鮮側はその後、非核化より自国の安全保障に関わる朝鮮戦争の終結宣言や休戦協定の平和協定への転換を優先させる姿勢を示し、制裁の早期解除も求めたため、米朝間の協議はこう着状態になった。両国は来年、2回目の首脳会談を行うため調整中。トランプ氏は「1月か2月」との見通しを明らかにしている。

米中貿易摩擦が激化

 トランプ米政権は知的財産権の侵害を理由に7月から9月にかけて、最大の貿易赤字相手国である中国からの年間輸入額のほぼ半分、計2500億ドル(約28兆円)相当の製品に追加関税を発動した。これに対し中国は1100億ドルの米国製品に報復関税を課した。世界1、2位の経済大国間の貿易摩擦激化で、世界経済への影響が懸念されている。
 米政権はこのうち2000億ドル分に課す追加関税率を来年1月に10%から25%に上げる予定だったが、12月の米中首脳会談で決めた貿易交渉の間は税率引き上げを凍結する。交渉期限となる来年2月末までに中国が知財権や技術移転強要などの問題で改善策を示さなければ、米国は税率引き上げに踏み切り、対立が一段と深刻化する恐れがある。

朝鮮半島非核化、南北首脳が合意

 韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は4月27日、板門店の韓国側施設「平和の家」で会談し、朝鮮半島の「完全な非核化実現」を共同の目標に掲げた「板門店宣言」に署名した。北朝鮮の最高指導者が板門店を越えて韓国側を訪れたのは分断後初めて。
 5月26日には文氏が板門店の北朝鮮側施設「統一閣」を訪れ、再会談。9月18~20日には平壌を訪問し、敵対関係の解消をうたった「平壌共同宣言」に調印した。両首脳は北朝鮮が「革命の聖地」としている白頭山を訪れるなど、南北融和ムードを盛り上げた。正恩氏は核実験場を閉鎖し、ミサイル実験場の廃棄を約束。寧辺の核施設についても「米国の相応の措置」を条件に廃棄の用意を表明したが、実現するかは不透明だ。

米がイラン核合意離脱、制裁再発動

 トランプ米大統領は5月8日、欧米など主要6カ国とイランが締結した合意からの離脱を表明した。合意はイランの核兵器開発阻止を目的としているが、トランプ政権は弾道ミサイル開発規制などが含まれていないとして、経済制裁を8月と11月の2段階に分けて再発動した。
 2015年7月に成立した核合意は、イランが核兵器の原料となるウラン濃縮を含む核開発を大幅に縮小する代わりに欧米側が経済制裁を解除する内容。オバマ政権がこれを主導し、外交的な成果と位置付けられた。トランプ政権による一方的な離脱は、強硬派の共和党やイランと敵対するイスラエルなどを意識したとみられている。ただ、イランは「合意違反は一切ない」と主張、英仏独などは関係の維持に腐心している。

韓国最高裁、徴用工への賠償命じる

 韓国最高裁は10月30日、第2次大戦中の元徴用工の損害賠償請求訴訟で新日鉄住金の上告を棄却、賠償を命じる判決を言い渡した。11月29日には三菱重工業を相手取った元徴用工らの訴訟2件についても賠償判決を確定させ、日本企業の敗訴が相次いだ。いずれも「1965年の日韓請求権協定では個人の請求権は消滅していない」と判断した。日本政府は「協定で解決済み」との立場で、「判決は日韓関係の法的基盤を覆す」として、韓国政府に是正措置を求めている。
 また、韓国政府は11月21日、日韓合意に基づいて設立され、元慰安婦らの支援事業を行っていた「和解・癒やし財団」の解散を決めたと発表した。日本政府は「合意の着実な履行が重要だ」と強調、「解散は受け入れられない」と反発している。

メルケル独首相「引退」、欧州に衝撃

 ドイツで長期安定政権を率いてきたメルケル首相が10月29日、州議会選連敗の責任を取り、中道右派与党・キリスト教民主同盟の党首を辞任すると表明した。首相職には2021年の任期満了までとどまる方針だが、その後は政界を引退する。欧州連合(EU)をけん引してきたメルケル氏の引退表明は欧州各国に衝撃を与えた。
 メルケル氏は05年に首相に就任し、ギリシャ財政危機への対応や、15年の欧州難民危機で難民受け入れに積極姿勢を示すなど指導力を発揮。一方、欧州では反難民を掲げるポピュリスト政党が台頭、メルケル氏の寛容政策は国内外で反発を招き、求心力も低下した。昨年9月の総選挙では議席数を大きく減らし、半年間の交渉の末に中道左派・社会民主党との連立で第4次政権を発足させた。

米中間選挙、下院で民主党が過半数

 トランプ米政権への審判となった4年に1度の中間選挙は11月6日に行われ、下院で野党・民主党が8年ぶりに過半数を奪還した。上院では与党・共和党が多数派を維持し、両院で「ねじれ」が生じる結果となった。共和党単独での法案可決が阻まれるため、今後は厳しい政権運営が予想される。民主党がロシア疑惑でトランプ大統領への追及を強めるのも必至だ。
 下院で民主党が奪った議席数は約40に上り、近年の中間選挙では2010年に共和党が奪った63議席に次ぐ多さとなった。共和党は保守色の強い州で底力を見せながらも、それ以外の州で現職候補が次々と敗れ、上院でもアリゾナ州など共和党が強い地盤で議席を失った。中間選挙では与党に厳しい結果が出る傾向にあるが、再選を目指すトランプ氏に不吉な兆候となった。

習中国主席が「1強」強化

 中国の憲法改正(3月11日)でこれまで2期10年までとされてきた国家主席(元首)の任期が撤廃され、習近平主席に権力が集中する体制が強化された。習氏が兼務する共産党総書記と中央軍事委員会主席はもともと任期がなく、国家主席の任期を制限することで、総書記と軍事委主席も事実上10年までとされてきたが、その「たが」が外された。習氏が政権トップを10年以上務める可能性が出てきた。
 国家副主席には、高齢のため党中央の要職を退いていた習氏の盟友、王岐山氏が起用された。また、習氏がトップを務める党中央指導小組が委員会に格上げされ、党が政府機関を指導する権限が拡大。習氏個人の影響力がさらに強くなったが、「毛沢東時代への回帰を志向している」との批判的見方もある。

サウジ記者殺害、皇太子に疑惑

 サウジアラビアの著名な反体制派記者ジャマル・カショギ氏が10月2日、結婚手続きのため訪れたトルコ・イスタンブールのサウジ総領事館で殺害された。サウジは当初、事件そのものを否定したが、殺害時の音声記録を持つトルコによる追及や国際社会からの批判が日増しに強まる中、サウジ検察は情報機関高官らによる計画的殺人だったと発表。容疑者20人超を拘束し、そのうち5人に死刑を求刑した。
 複数のメディアが、米中央情報局(CIA)はサウジの事実上の最高権力者であるムハンマド皇太子が殺害を命じたと結論付けたと報じるなど、皇太子の関与が取り沙汰されているが、サウジは一貫して否定。サウジとの関係維持を優先させたいトランプ米大統領は皇太子擁護の姿勢を続けている。

米国抜きTPP11が発効

 米国を除く環太平洋連携協定(TPP)参加11カ国が合意した新協定「TPP11(イレブン)」が12月30日に発効する。工業製品や農産品の関税撤廃・削減、知的財産権保護などのルールを定めており、貿易自由化を進め、太平洋をまたぐ新経済圏として発展を狙う。日本の消費者にとってはニュージーランド産乳製品の値下げといった恩恵が期待できそうだ。
 TPPは2015年10月、米国を含む12カ国で大筋合意したが、トランプ大統領が就任直後に離脱を表明。残る11カ国で再協議し、今年3月に新協定署名にこぎ着けた。その後、日本、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの批准手続きが完了し、発効条件を満たした。11カ国の人口は約5億人、国内総生産(GDP)の合計は世界全体の約13%を占める。