特集2017年11月15日更新
あの国も出られないの?ロシアW杯を逃した国
来年開催されるサッカー・ワールドカップの予選が大詰めを迎え、本戦出場の32カ国中30カ国が決定。日本時間14日早朝に行われたプレーオフでイタリアが敗退するなど、強豪国の脱落も目立つ予選となっています。
最新ニュース
イタリア、60年ぶりにW杯出場逃す
W杯優勝4回の強豪 15大会連続19回目の出場を目指していたが…
プレーオフでスウェーデンに負けて予選敗退
サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会欧州予選プレーオフで、W杯通算4度の優勝経験を誇り、15大会連続19回目の本戦出場を目指していた強豪国のイタリアが敗退し、大きなニュースとなりました。
W杯欧州予選プレーオフの第2戦が13日に行われ、イタリア代表とスウェーデン代表が対戦。スコアレスドローに終わり、第1戦を制したスウェーデンが2戦合計1-0で3大会ぶり12回目の本大会出場を決めた。一方でイタリアは、1958年スウェーデン大会以来、60年ぶりの予選敗退となった。
イタリア代表がいないW杯は過去に2回だけ
2006年大会覇者イタリアがW杯に出場しないのは、不参加だった1930年の第1回大会と予選敗退を喫した1958年のスウェーデン大会に続き、3度目。
予選リーグではスペインと同組で2位…プレーオフへ
スペインに完敗して気落ち…格下にドローの“お粗末な結果”に
イタリアは予選のグループリーグで、W杯2010年大会優勝、UEFA欧州選手権(EURO)でも08、12年と連覇したFIFAランク8位の強豪、スペインと同組。スペインとの直接対決で負けたり、格下のマケドニアに引き分けるなどしてグループ2位となり、プレーオフに回っていました。
何といっても大誤算だったのが6日のマケドニア代表戦だった。“残り2戦で2勝する”を合言葉にトリノでマケドニアを迎え撃つはずが、1-1のドローというお粗末な結果だった。このふがいなさに観衆からは大ブーイングが起こった。
選手たちにとって先月、マドリードで行われたグループ首位のスペイン代表との試合で3-0と完敗したのが、かなり痛手だったという。精神的に立ち直れないほどのショックがプレーにも響き、この日のマケドニアとの引き分けという悪循環となったというのだ。
プレーオフ対戦相手は“まさかの”スウェーデン
プレーオフの組み合わせ抽選で対戦相手はスウェーデンに決定。「強豪」とまでは言えないまでも、過去11回のW杯出場を誇り、58年に準優勝、94年に3位と一定の成績を収めている古豪だけに、組み合わせ抽選会の結果を伝える記事では「まさかのイタリアvsスウェーデン」や「最大の注目カードはスウェーデンvsイタリア」などと伝えられていました。
“史上最高のGK”ブッフォンが代表引退
今回の予選敗退を受け、GKジャンルイジ・ブッフォンが代表からの引退を表明しました。ブッフォンは1997年に代表デビューを飾り、堅守で知られるイタリア代表のゴールマウスを20年もの長きに渡って守り続け、同国史上最高となる175キャップを記録。W杯にも5回出場し、06年大会の優勝にも貢献するなど、たびたび「史上最高のGK」と称される名選手です。
ブッフォンは、1997年10月に代表デビュー。2006年ドイツW杯では、母国に4度目の優勝をもたした。ここまでイタリア史上最多の175試合に出場し、2012年にはサッカー統計組織『国際サッカー歴史統計連盟』が「21世紀のベストGK」に選出していた。
2016年には、フランス『フランス・フットボール』の「サッカー史上最高のGKは?」とのアンケートで数々のレジェンドを抑えて1位に選出されていた。
デ・ロッシ、バルザーリらベテラン勢も代表引退へ
ブッフォン同様、06年大会の優勝に貢献したMFダニエレ・デ・ロッシらベテラン選手が次々と代表引退を表明しています。
イタリア代表引退を発表したユヴェントスGKジャンルイジ・ブッフォンに続き、同代表MFダニエレ・デ・ロッシ、同代表DFアンドレア・バルザーリも代表チームからの引退を発表した。
イタリア代表DFジョルジョ・キエッリーニが、同国代表を引退することを明かした。『フットボール・イタリア』が伝えている。
日本代表・長友も「ショック…」
愛するイタリアの敗退決定に嘆き
イタリア負けた。
— Yuto Nagatomo | 長友佑都 (@YutoNagatomo5) 2017年11月13日
ワールドカップに出れない。
ショック...。
長友は、2010年南アフリカW杯後にチェゼーナに移籍。2011年1月からはインテルに所属しており、イタリアで8シーズン、プレーしている。愛するイタリアの敗退決定を受けてツイッター(@YutoNagatomo5)を更新。「イタリア負けた。ワールドカップに出れない。ショック…」と悲しいニュースを受け入れられないようだ。
「恥ずかしい終末だ」地元紙は葬式ムード
長友だけでなく、当然、地元イタリアのメディアや往年の名選手たちも、悲劇的な敗退に反応を示しています。
イタリアの60年ぶりのW杯予選敗退から一夜明けた14日、地元紙は葬式ムードだった。
ガゼッタ・デッロ・スポルトは「FINE(終局)」とGKブッフォンの写真をバックに1面に見出しを掲げた。
トゥットスポルトは「みんな家に帰る」と1面見出しに掲げ「恥ずかしい終末だ」と報じた。
W杯本戦出場を逃した強豪国
11月16日W杯に出場する32チームが決定しました。出場決定国は以下の通り。
南米
ブラジル、ウルグアイ、アルゼンチン、コロンビア、ペルー
欧州
ロシア、ベルギー、ドイツ、イングランド、スペイン、ポーランド、アイスランド、セルビア、フランス、ポルトガル、スイス、クロアチア、スウェーデン、デンマーク
北中米カリブ海
メキシコ、コスタリカ、パナマ
アジア
日本、サウジアラビア、イラン、韓国、オーストラリア
アフリカ
ナイジェリア、エジプト、セネガル、チュニジア、モロッコ
ここからは、イタリアのように予選敗退してしまった強豪国をいくつか紹介します。
チリ
現・南米王者 今年のコンフェデレーションズカップでも準優勝
チリは、ブラジルやアルゼンチンといった強豪ひしめく南米大陸の王者を決める「コパ・アメリカ」(南米選手権)を2015年に制している「現・南米王者」。しかも16年に開催されたコパ・アメリカの「特別記念大会」でも優勝し、W杯のプレ大会となる今年のコンフェデレーションズカップでも準優勝していた強豪チームでした。
最新のFIFAランキングでは9位で、ランク一桁台に位置する国で予選敗退となってしまったのはチリだけです。
大混戦で最終節を迎えた南米予選では、3位のチリ代表が一気に6位に転落し、W杯出場権を逃した。15年と16年の南米選手権を連覇、今夏開催されたコンフェデレーションズ杯で準優勝するなど、近年結果を残していたチリがまさかの予選敗退となった。
W杯出場圏内の3位で最終節を迎えたが、すでに出場を決めているブラジルに0-3と完敗し、5位ペルーに得失点差でわずかに及ばず敗退が決定した。サンチェスやビダルといったスター選手がロシアの地で見られないのは残念だ。
オランダ
前回大会3位 前々回は準優勝
2010年南アフリカW杯で準優勝、2014年ブラジルW杯3位という輝かしい結果を収めてきたオランダが予選でまさかの大苦戦。最終節、スウェーデンとの直接対決で6点差以上での勝利が必要という絶望的な状況で臨んだが、結果は2-0。勝利は収めたものの得失点差でスウェーデンに及ばず、プレーオフ進出を逃した。
オランダは2002年大会以来の予選敗退。“黄金世代”と呼ばれ名プレイヤーを多数そろえて決勝に進出した10年大会に続き、14年大会でも3位という好成績を収めていたオランダですが、“黄金世代”に次ぐ若いタレントが出てこず、EURO2016の予選でも敗退するなど、急激に低迷期へ突入している印象があります。
ウェールズ
EURO2016ベスト4で60年ぶりの出場に期待も…
最新のFIFAランキングで14位とイタリアよりも上に位置するウェールズ代表は、レアル・マドリードのFWガレス・ベイルやアーセナルのMFアーロン・ラムジーといったタレントが頭角を現し、昨年はEURO2016において初出場ながらベスト4まで勝ち進む快進撃が話題に。FIFAランクでは、過去最低だった11年8月の117位から現在の順位まで急成長を遂げ、監督も「黄金期を迎えている」と自信を見せるなど、1958年以来60年ぶり2度目のW杯出場に期待がかかっていましたが…
9日に行われたロシアW杯欧州予選グループD最終節でアイルランドと対戦。本大会ストレートインの可能性も残していたが、57分に痛恨の失点。引き分けでもプレーオフ出場が決まるウェールズだったが、あと一点が遠く敗戦となり、グループ3位に後退してW杯出場を逃した。
アメリカ
連続出場7回で途切れる 最終節で最下位チームに敗れる波乱
アメリカのスポーツといえば「4大スポーツ」とされるアメリカンフットボール(NFL)、野球(MLB)、バスケットボール(NBA)、アイスホッケー(NHL)のイメージが強く、昔から「サッカー不毛の地」「サッカー後進国」などと揶揄されてきましたが、1990年大会で40年ぶりに本戦出場を果たしてからは7回連続出場、そのうちベスト16以上を4度経験するなど好成績を収めていました。
北中米カリブ海予選では自力でW杯出場を決める可能性があったアメリカ代表が、すでに敗退が決まっている最下位のトリニダード・トバゴ代表に敗れる波乱。パナマ代表、ホンジュラス代表に逆転を許し、一気に出場圏外まで転落した。1990年大会以降続いていた連続出場が7で途切れた。
カメルーン
今年のアフリカ王者“不屈のライオン”も…
「不屈のライオン」の愛称でおなじみのカメルーンは、直近のW杯7大会中6回本戦出場という実績を持ち、今年行われたアフリカ大陸王者を決める大会でも優勝するなど、アフリカを代表する強豪国として知られていますが…
4日に2018 FIFAワールドカップロシア・アフリカ最終予選が行われ、カメルーン代表がナイジェリア代表と引き分けた。この結果、カメルーンのW杯出場が消滅。2006年以来、3大会ぶりの予選敗退となった。
カメルーンは今年行われたアフリカネーションズカップで優勝し、FIFAコンフェデレーションズカップにも参加していた強豪国。しかし、力を発揮することができず、現アフリカ王者が予選で姿を消すこととなった。
コートジボワール
前回大会で日本を下した巨像軍団も…
FWディディエ・ドログバを擁し、ブラジル大会で日本に逆転勝ちしたことも記憶に新しいコートジボワール代表。アフリカ予選の最終戦でモロッコに破れ、W杯出場を逃しました。アフリカは上で紹介したカメルーン代表だけでなくアルジェリア代表、ガーナ代表なども敗退。前回大会出場の5カ国のうち4カ国が出場権を逃すという波乱となりました。
モロッコは3次予選6試合を無失点で終えて勝ち点12を積み重ね、1998年のフランス大会以来となるW杯出場を決めた。一方、コートジボワールは前半に負った2点のビハインドを取り戻せる気配がなく、勝ち点8でグループ2位に終わった。
ウクライナ
ベスト8進出の“英雄”が監督を務めるも…
2度のセリエA得点王、04年バロンドール(欧州最優秀選手)受賞といった輝かしいキャリアを誇り、母国をW杯初出場、さらにベスト8にまで導いた「ウクライナの英雄」アンドリー・シェフチェンコが監督に就任したものの、その初出場以来の本戦出場とはなりませんでした。
アンドリー・シェフチェンコ監督率いるウクライナはホームで惜しくも完封負けに終わり、3大会ぶり2度目の本大会出場とはならなかった。
アイスランド、クロアチア、トルコと同じグループIに入ったウクライナ。実力が伯仲するこのグループで抜け出したのがアイスランドで、ウクライナは惜しくも3位でフィニッシュした。
本選より豪華?“W杯で見られない”11名
イギリス『スカイ・スポーツ』が予選で姿を消した国々の“W杯で見られない11名”をベストイレブン形式で紹介しています。ただ、この記事は10月時点のものなので、今回の結果を踏まえて「ワールドカップで見られないベストイレブン」を作成してみました。異論は大いにあると思います!
GK
ジャンルイジ・ブッフォン(イタリア代表)
DF
ダヴィド・アラバ(オーストリア代表)
ジョルジョ・キエッリーニ(イタリア代表)
ステファン・サビッチ(モンテネグロ代表)
リック・カルスドルプ(オランダ代表)
MF
アリエン・ロッベン(オランダ代表)
アルトゥーロ・ビダル(チリ代表)
リヤド・マフレズ(アルジェリア代表)
FW
ガレス・ベイル(ウェールズ代表)
アレクシス・サンチェス(チリ代表)
ピエール・エメリク・オーバメヤン(ガボン代表)
その他にも…
ヤン・オブラク(スロヴェニア代表)
ジャンルイジ・ドンナルンマ(イタリア代表)
アントニオ・バレンシア(エクアドル代表)
フィルジル・ファン・ダイク(オランダ代表)
ヘンリク・ムヒタリアン(アルメニア代表)
ナビ・ケイタ(ギニア代表)
ミラレム・ピャニッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ代表)
マレク・ハムシク(スロバキア代表)
クリスティアン・プリシッチ(アメリカ代表)
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それぞれ鮮やかな青、オレンジのユニフォームも特徴的なイタリア、オランダが出場しないW杯には、なにやら寂しさを感じてしまいます。
そして個人的にもっと寂しさを感じるのが、アメリカの予選敗退です。本文で書いたようにアメリカはサッカーのイメージが薄いながらも、W杯では強豪相手に勝ったり、善戦したりして、毎回のように「ダークホース」として大会を盛り上げるのに一役買っていた印象があるからです。戦い方も「欧州スタイル」でも「南米スタイル」でもなく「アメリカスタイル」といった感じの独自のプレースタイルで、見ていて楽しいサッカーをする印象がアメリカ代表にはあります。
アメリカ敗退が決まった直後、「同じように感じている人いないかな?」とネットの書き込みを追っていたら、やはり「面白いサッカーをするアメリカがいないのは寂しい」「大国アメリカがいない世界大会に価値はあるのか?」と予選敗退を寂しがる声があり、加えて、最近ではアイスホッケーを抜いて新たに「4大スポーツ」に仲間入りしそうなほど盛り上がってきたアメリカ国内のサッカー人気に対して「人気は大丈夫か?」と、W杯不出場による人気盛り下がりを心配する声も多数ありました。
…とまぁ、すでに敗退してしまったアメリカ代表についてなぜかついつい長く語ってしまいましたが、来年のW杯本戦では今回紹介した強豪国を押しのけて出場権を勝ち取ったチームの活躍にも期待したいところです。