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【公的年金の制度改正】年金の繰り上げ受給はどう変わった?

ファイナンシャルフィールド / 2020年7月26日 23時20分

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2020年5月下旬に公的年金の制度改正が成立しました。その中には、公的年金の繰上げ受給の改正も含まれています。では、今回の改正で、公的年金の繰上げ受給がどのように変わったのか、まずは公的年金の繰上げ受給のおさらいから見ていくことにしましょう。

公的年金の繰上げ受給のおさらい

老齢基礎年金や老齢厚生年金などの公的年金は、65歳からの受け取りが原則です。しかし、受給開始年齢を早める「繰上げ受給」を選択すれば、60歳からもらい始めることができます。繰上げ受給は、1ヶ月単位で受け取り開始時期を早めることができます。
 
しかし、公的年金を早くもらい始めることができる繰上げ受給には、所定の減額があります。繰上げ1ヶ月当たり0.5%減額されますので、60歳からの受給を選択すると、原則の65歳からの受給額に比べて30%減額されます。そして、その減額は生涯続きます。

繰上げ受給に伴う減額と、その損益分岐点

繰上げ受給は減額されるとはいっても、原則の受給開始年齢65歳になる前までに、すでに公的年金を受け取っています。では、繰上げ受給を選んだ人と65歳からもらい始めた人とでは、その受取総額が逆転するのは、どのタイミングなのでしょうか?
 


 
上の表の「損益分岐点の時期」とは、繰上げ受給を選んだ人の総額と、65歳から受け取りを開始した人の総額が逆転する時期を意味しています。
 
例えば、60歳から繰上げ受給を選択した場合、76歳8ヶ月までに亡くなった場合、65歳から受け取り始めた人に比べ、繰上げ受給のほうが受取総額は多くなります。
 
逆に、60歳から繰上げ受給を選択した人が76歳9ヶ月以上長生きをした場合、繰上げ受給を選んだほうが受取総額は少なくなります。

2022年4月からの繰上げ受給と、その損益分岐点

今年5月下旬に、公的年金の制度改正の法が成立しました。この制度改正により、繰上げ受給に伴う減額率が繰上げ1ヶ月当たり0.4%になりました。つまり、減額率が縮小したのです。
 
下の表は2022年以後に、繰上げ受給を選択した場合の損益分岐点のシミュレーションです。80歳10ヶ月までに亡くなった場合、60歳での繰上げ受給を選んだ方が受給額は多くなります。
 


 
2018年の男性の平均寿命は81.25歳で、女性は87.32歳です。あくまで平均寿命だけで見ると、2022年以後、男性は61歳から繰上げ受給を選んだほうが得になりそうです。

公的年金の受給開始年齢と、平均寿命について

ところで、公的年金の受給開始年齢は、なぜ原則65歳からなのでしょうか?
 
筆者も確かな根拠を提示できるわけではありませんが、一説には、「国民皆年金」の議論がなされていた1960年代の男性の平均寿命が65歳だったから、という説もあります。
 
もし、上述の説が本当だとすれば、公的年金が想定する「長生きのリスク(=高齢のリスク)」とは、「平均寿命を超えて長生きすることにより、稼ぐ力が衰える」ことを意味することになるのではないかと筆者は考えます。

まとめに代えて

コロナ禍で収入の減収を余儀なくされ、公的年金の繰上げ受給を検討されていらっしゃる方もいらっしゃると思います。また、収入の減少に関わらず、ご自身の健康状況などを踏まえて、繰上げ受給を視野に入れている方もいらっしゃるでしょう。
 
しかし、前述のとおり、繰上げ受給を選ぶことにより減額された公的年金をもらい続けることになります。
 
老後の家計を考えると、低い公的年金を補うために、はたして何歳まで働き続けることになるのか?生涯現役社会とはいっても、必ずしも望む仕事、能力に合った仕事を得ることができるとは限りません。
 
公的年金の繰上げ受給は、公的年金の受取総額のみならず、老後の生活などにも視野を広げて検討する必要があります。
 
(参考)
厚生労働省「平成30年簡易生命表の概況」
みずほ総合研究所「年金改正法案のポイントと評価」
内閣府「<平均寿命の推移>」
 
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役

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