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「介護をしたのは私なのに、遺産をもらえないなんて」…相続権のない長男の嫁の不満は「遺産分割協議」で解消できる?【司法書士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月1日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

親族が集まり、亡くなった人の財産をどう分けるか話し合いをする場面を見かけることがあります。これは「遺産分割協議」といって、遺産分割に関する遺言が残されていない場合に相続人が行う会議です。遺産相続の不公平などについて話し合う場でもあります。本記事では『ふと、終活のことを考えたら最初に読む本』(日本実業出版社)から一部抜粋し、遺産分割協議の手順やルール、不公平の修正などを解説します。

登場人物

あんみつ先生(45歳)…司法書士。都内の会社を退職し、実家のある田舎町にUターン。司法書士事務所を開業し、おもに相続と成年後見を中心に業務をしている。また、副業で終活セミナーの講師もしている。

吉田小春さん(65歳)…専業主婦。あんみつ先生のご近所さん。子供2人はすでに独立し、現在は夫と気ままな2人暮らし。

吉田健二さん(70歳)…小春さんの夫。長年勤めた会社を定年退職し、家で趣味を楽しみ、のんびり暮らしている。

相続人が行う「遺産分割協議」とはどんな会議?

吉田 父親が急死し、子供たちが集まる家族会議で財産の争奪戦になる、そんな光景をミステリードラマで見たことがあります。 先生 それは遺産分割協議です。協議は相続人全員の合意が必要で、反対者が1人でもいれば不成立です。 吉田 それじゃ、なかなか、まとまらないですね。 小春 もしかして、金田一耕助みたいな連続殺人が起きちゃうかもね。 吉田 金田一耕助はチョット古いんじゃない。小春ちゃん、年がバレちゃうよ。 先生 でも、遺言を書いておけば、遺産分割協議は避けられます。

遺産分割協議は、相続人たちの相続争いの主戦場です。遺産の分け方を遺言で決めていないため、遺産分割協議を開いて決める必要があるのです。このとき、共同相続人の相続分は、各自、法定相続分となります。

しかし、全員の合意があれば、その割合で分けることもできます。たとえば、法定相続分があるのに自分は何ももらわないということでもかまいません(「0円相続」)。つまり、まとまらなければ法定相続分を参考にして話し合うということです。

遺産分割とは、複数の法定相続人の間で遺産を分割するために行われる手続きです。まずは、「誰に」「何を」「どれくらい分けるか」などを決めるため話し合いますが、この話合いを「遺産分割協議」といいます。

協議は出席者全員の合意で成立し、1人でも反対があれば不成立となります。ただ、協議といっても、必ずしも対面の会議をする必要はありません。

不動産や金融資産などの重要な財産の分け方を話合いで決めるので対面のほうがよいとはいえますが、都合が悪ければ代理人を送るとか、書面やメールのやり取りでも問題ありません。

もっとも、最終的には、

①参加者全員が合意し、

②合意内容を協議書にまとめ、

③協議書には参加者全員の署名と実印を押す

という手順が必要となります。

もし協議で合意できなければ、家庭裁判所に持ち込んで遺産分割の調停になります。調停委員の同席のもと合意に向けて話し合いますが、ここでも反対者が1人でもいると不成立となります。

調停でも解決しなければ、次は遺産分割の審判となり、家庭裁判所の裁判官が強制的に解決することになります。

遺産分割の前提となる事実について当事者間で争いがある場合は、その点について、審判ではなく訴訟にて決着をつける必要があります。

たとえば、遺言書が無効であるとか、あの相続人は実は相続権がないとか、あの不動産は遺産には含まれないとか、そのような事実について当事者間で争いがある場合です。通常は、調停の段階で決着をつけますが、決着後に改めて調停を申し立て、遺産分割の話し合いをします。

遺産分割協議で不公平を修正することもできる

先生 遺産分割で、法定相続分に従って遺産を分けようとするとき、1人ひとりの相続分が法定相続分だと不公平と判断されるような場合があります。 吉田 法定相続分なのに不公平? 先生 たとえば、生前、故人から多額のお小遣いをもらっている人がいたら? 小春 すでにもらいすぎているから、その相続人は、法定相続分から減らされるべきよ。 先生 そうですね。その場合は特別受益という仕組みで公平な相続を実現できます。また、ほかにも寄与分、特別の寄与制度で公平を実現できます。 小春 3つあるのね。

「特別受益」とは、一部の相続人だけが、遺贈や生前の被相続人からの贈与等を受けていた場合の利益のことです。

たとえば、社長をしている父親が、後継者の長男だけに、お金や高級車、不動産や株式などを生前贈与していた場合です。この場合の長男を「特別受益者」といいます。

相続人の誰か1人に特別受益がある場合、法定相続分のまま遺産を分けると、特別受益者とそうでない人の間に不公平が生じます。

そこで、遺産分割では、特別受益者のもらいすぎの分を戻して、相続財産の配分の計算をします。これを「持ち戻し」といいますが、実際にもらったお金や物品などを相続財産に返還させるということではありません。

次に、「寄与分」についてです。一部の相続人が、生前の被相続人を献身的に介護していたり、生活費を与えていたりしたなどの場合に、その貢献のことを寄与分といいます。

たとえば、父親が亡くなって3人の娘が相続をしたとします。長女だけが長い間、父親の看病や介護、生活の援助など献身的に世話をしていて、それが無償で行われていたような場合です。

このとき、長女の貢献度が相続分に反映されます。寄与分のある相続人が遺産を多くもらえるのです。

具体的には、その貢献のおかげで、故人の財産が減らなくて済んだ(出費を免れた)、あるいは財産が増加したというような考えのもとに、寄与分として金銭的に評価されます。

また、寄与分と似て非なるものとして、「特別の寄与」という制度もあります。たとえば、先ほどの寄与分では長女の貢献について考えましたが、ここでは法定相続人ではない長男の妻の貢献についてです。

親族である長男の妻が献身的に介護していた場合、長男の妻は相続権はなくても特別の寄与料が請求ができるようになっています。

加藤 光敏(あんみつ先生)

司法書士

※本記事は『ふと、終活のことを考えたら最初に読む本』(日本実業出版社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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