パワハラの元凶なのに……「追い込み型」のマネジメントがはびこる理由
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年5月2日 9時25分
「追い込み型」のマネジメントがはびこるのは、なぜ?
宝塚歌劇団の劇団員が自ら命を絶つことになった痛ましい事件。歌劇団側は、上級生によるパワーハラスメント(パワハラ)があったことを認め謝罪しました。ネット上では「パワハラという名の犯罪」「亡くなってからじゃ遅い」などと辛辣(しんらつ)な声が飛び交っています。
大企業にパワハラ防止措置が義務化されたのは2020年のこと。22年からは中小企業にも適用範囲が広がって全面施行されています。しかしながら、会社の上司をはじめ政治家や警官、医師などさまざまな加害者によるパワハラ事件が、いまも後を絶ちません。
これだけ世の中で騒がれ、してはいけないことだと分かっているはずなのに、なぜパワハラは一向になくならないのでしょうか。恐怖心を抱かせて部下をコントロールしようとする「ストロングマネジメント」の発生メカニズムと、そこから脱却するためのヒントを考えてみたいと思います。
●増え続けるパワハラ相談件数
初めに、上司と部下の次のようなやりとりから考えてみましょう。
上司:「このペースで目標が達成できるのか?」
部下:「 このままでは難しいかもしれません……」
上司:「それで?」
部下:「……」
上司:「どうすんの?」
部下:「どうすればいいでしょうか……」
上司:「はあ? それを考えるのがキミの仕事だろ!」
高圧的な上司の態度に、部下がどんどん萎縮していく姿が浮かんできます。厚生労働省は、職場におけるパワーハラスメントを以下のように定義しています。
「職場において行われる(1)優越的な関係を背景とした言動であって、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、(3)労働者の就業環境が害されるものであり、(1)から(3)までの要素を全て満たすものをいう」
最初に優越的な関係とあるように、職場では大抵の場合、パワハラの加害者は上司で被害者は部下です。上司としては部下を鍛えようとあえて厳しく接しているだけで、心の奥底には愛情を秘めているのかもしれません。しかし、あらゆるハラスメントと同様、パワハラに該当するか否かは、受け手側がどう感じるかが大きな鍵を握っています。
厚労省の調査によると、大企業にパワハラ防止措置が義務化された20(令和2)年度以降の「パワーハラスメント防止措置」に関する相談件数は以下のグラフの通りです。
同調査の22(令和4)年度の相談件数は4万4568件で、前年度の1万8422件と比較して2.4倍と極端に増えていますが、これはパワハラ防止措置の全面施行を受けて、21年度まで個別労働紛争解決制度の施行状況の「いじめ・嫌がらせ」にカウントされていた相談件数が、22(令和4)年度から同調査に上乗せされたことが大きく影響しています。
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