MVNOが成長するのに“足りていないこと” 「格安スマホ」激動の10年を振り返りながら議論
ITmedia Mobile / 2024年4月19日 6時5分
●2017年以降にサブブランドが台頭するも、MVNOにとって「敵ではない」
2017年は、ドコモがシンプルプラン、auがピタットプランと大手キャリアが格安SIMに対抗するプランを導入。この頃、サブブランドという言葉がよく聞かれるようになり、ソフトバンクとY!mobileを、KDDIはUQ mobileを強く押し出すようになる。
一方で、総務省の有識者会議では、ランチ時でもサブブランドは通信速度が落ちないことから、MNOが優遇しているのではといった疑念が生まれる。グループ内サービスを優遇して帯域を増強する「ミルク補給」という言葉も出てきたほどで、サブブランドを規制すべきではないかという機運が高まったこともあった。体力的に厳しくなったMVNOが破綻したり、MNOに吸収されたりといったことも起きた。また、楽天モバイルが第4のキャリアに名乗りを上げたのもこの年。西田氏は楽天モバイルがMNOとして参入することについて当時「合理的な判断とは思えなかった」との印象を持ったそうだ。
佐々木氏はサブブランドについて、携帯電話事業者に対するユーザーの「固定化されたマインドを壊す効果が期待できる存在」であり、MVNOにとって「敵ではない」、MVNO側が求めているのは「サブブランドと公正に競争できること」だと語った。松田氏も「サブブランドはライバル」としながらも、「サブブランドを使っているユーザーはメインブランドから乗り換えのハードルを一度越した人。さらにMVNOに乗り換えてもらえる期待が持てる」とポジティブな面を認めている。
Criluの長山氏は、かつてOCN モバイル ONEに携わっており、通信サービスについて解説する動画を届ける「スマサポチャンネル」の中の人でもある。当時、OCN モバイル ONEはドコモのサブブランドになりそうでなりきれなかったという印象もあるが、内部では決してそうではなく「MVNOとして、しっかり競争していく」意識だったという。今では当たり前となっているデータの繰り越しや通信開始時の速度を上げる「バースト転送機能」は、サブブランドが強くなっていく中で「通信としての魅力を突き詰めていった中で生まれてきた機能」だったと語った。
●2018年に「4割値下げする余地がある」発言、IIJがフルMVNOサービスを開始
2018年は、当時の菅官房長官が、あの有名な「4割値下げする余地がある」発言をした年。当時は比較的穏やかに受け止められたが、後の「ahamoショック」につながっていく。LINEモバイルがソフトバンク傘下となり、IIJが自社でSIMを発行するフルMVNOの仕組みでサービスを開始した年でもあった。
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