平成11年の年賀状②「日の要求と青い鳥」
Japan In-depth / 2023年4月14日 23時0分
「そうですか、やっぱりね。でも、森さん、あなたはそのドイツから日本にやってきた女性を捨てたかったのではない。母上が決めていた赤松男爵のお嬢さんとの縁談を進めないと、母上、おっかさんが『自殺する』と真顔であなたに告げたから、ひとまず自分も後からドイツへ追いかけていくからと言って、その女性を納得づくでドイツに帰し、そして8か月後に山県有朋に随行してドイツへ行った賀古さんに頼んで、もう森はドイツに来ないと告げてもらった。」
「そうだ。そのとおりだ。だから、それからの私の半身は生ける屍、抜け殻だった。」
もう一つは、二番目の奥さんのしげさんのこと。「『安井夫人』という安井息軒という大儒学者の妻について、「若くて美しいと思われた人も、暫く交際をしていて、智慧の足らぬのが露見して見ると、其美貌はいつか忘れられてしまう。又三十になり、四十になると、智慧の不足が顔にあらわれて、昔美しかった人とは思われぬようになる。」と書いていますよね。これって、森さん自ら『美術品のような妻を迎えた』と表現した二番目の奥方、しげさんの批判になってますよね。書かずにおれなかったから書いたのでしょうが、よく書きましたね。あなたはいつもすべての他人を馬鹿だと思っていたそうですからできたのでしょうか。すると、あなたにとって女性とはどんな存在なのですか。」
私は、鷗外の答えを持っていない。たぶん、上記の「半身は抜け殻」という言葉が戻ってくるのだろうかと思っている。人はそのようにも生きることができるのだろう。それは私たちに勇気を与えるのだろうか、そうではないのだろうか。
トップ写真:イメージ 出典:ooyoo/GettyImages
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