「途方に暮れる」「意味不明…」なファミコンゲーム3選 クリアさせる気ないよね?
マグミクス / 2023年11月18日 21時10分
■プレイヤーに不親切なゲームシステムにお手上げ状態!?
1983年に発売された「ファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)」は、80年代に大きなブームを起こし、最終的に1000種類以上のソフトが発売されました。そのブームに乗じ、元々ゲームメーカーではない異業種からも企業が参入したり、ソフト開発に慣れていないメーカーもあったりしたためか、なかにはクリアさせたり楽しませたりする気があるのか疑わしいものも見られました。そうした理不尽ともいえそうなタイトルのなかから3つを見ていきます。
理不尽の代名詞! タイトー『たけしの挑戦状』
タイトーといえば『スペースインベーダー』などで知られる業界の老舗で、2023年現在はスクウェア・エニックス・ホールディングス傘下の企業です。そのタイトーから1986年に発売された『たけしの挑戦状』は、いわゆる「クソゲー」の代名詞として最も有名なタイトルといえるでしょう。その理不尽すぎるゲーム内容のせいで挫折したプレイヤーも少なくありません。
同作は主人公のサラリーマンを操作して謎解きをしていくアクションアドベンチャーゲームで、とにかくプレイヤーに親切ではないシステムです。たとえばゲーム開始直後、主人公が勤務する会社の社長に話しかけるとお金を受け取れ、そこからはノーヒントで街に繰り出さないといけません。次に何をするのかは、街中を駆け巡って自力で見つける必要があるのです。
さらに、ゲーム中にはさまざまな選択肢が提示され、展開もさまざまに分岐していくのですが、誤った選択をすると即ゲームオーバーになることも多々あるというシビアさです。マルチエンディングという概念はなく、クリアまでの細い細い道筋を見つけていくというゲームデザインであり、それもまた難易度を高くしている要因でしょう。
例えばクリア条件に求められることは「妻と離婚する」「パチンコで景品として『しゃみせん』を手に入れる」「宝の地図を入手する」などがあり、後に発売される攻略本がなければクリア不可能といっても過言ではありません(その攻略本も、1冊目だけでは到底クリアできるものではなかった、という逸話がありますが、それはまた別のお話)。
極めつけは、その「宝の地図を入手する」方法です。「しろいかみ」を入手した後の選択肢で、「にっこうにさらす」を選んだ後にリアルタイムで1時間放置するか、もしくは「みずにつける」を選び、5分後にIIコントローラーのマイクへ何かしら音声入力すると、宝の在り処が浮かんでくる、というものでした。こういった理不尽なポイントが多いことから、謎を解きクリアを目的とするゲームにしては難しすぎるもので、そもそもクリアさせる気があるのか疑わしい、といわざるをえないでしょう。
■攻略本ナシ! 不落の牙城 トーワチキ『エルナークの財宝』
トーワチキ『エルナークの財宝』は見下ろし型のアクションゲーム
「クリアさせる気がないゲーム」といえば、1987年にトーワチキから発売された『エルナークの財宝』も外せません。「敵を倒しながら次のステージに進んでいく」というアクションゲームながら、さっそく1面から大きな謎にぶつかります。というのも、1面のとある絶壁で十字キーの上を押し続けない限り、次のステージに進めないのです。ヒントはあるものの、答えにたどり着くにはほど遠い内容で、1面で挫折したという人も多かったようです。
さらに奇跡的に1面を突破したとしても、ラスボス手前のボス戦がクリアできないという問題が立ちはだかりました。同タイトルには「性格メーター」というシステムがあり、さまざまなアイテムを取ることでそのゲージが善(ライト)や悪(ダーク)へと変動します。問題のボスはライト100%でないと倒せないのですが、その手前でダーク100%でないと通過できない(と見られていた)箇所があり、そしてそこからいくら頑張ってアイテムを集めてもライト100%に到達できませんでした。
攻略本も発売されておらず、一時はクリア不可能といわれており、一説によると2000年ごろまでネット上を眺めても確実な攻略情報は出回っていなかった、といいます。
『たけしの挑戦状』も『エルナークの財宝』も、2023年現在の観点からするとありえないほど理不尽な謎解きを強いられるもの、といえるでしょうが、当時の子どもたちにとってもそれは同じで、とても自力でクリアできるようなものではありませんでした。
ただ一方で、当時PC用に発売されていたこの手の謎解きアクションゲームを念頭に置くと、実はそう理不尽と切り捨てるほどのものでもない、ともいえそうです。
無論、当時のPC用ゲームですから、プレイヤーの年齢層はファミコンのそれに比べ高かったと推察します。加えてそれらPC用ゲームには、「難しいほど良いゲーム」と評される傾向も確かにあったのです。そうしたある程度、謎を謎と楽しめるオトナむきの難易度を、若年層の多いファミコンに持ち込んだ、あるいは許容範囲だろうと判断した結果、全国の子どもたちが悲嘆に暮れることになった、という見方もできるのではないでしょうか。
ファミコンソフト『ジーキル博士の彷魔が刻』の原作である『ジーキル博士とハイド氏』(著:スティーヴンソン/訳:田中西二郎/新潮社 新潮文庫)
斬新すぎて追いつけない… 東宝『ジーキル博士の彷魔が刻』
そうした「理不尽な謎」とは別のベクトルで高難易度だったのが、1988年に映画配給会社として知られる東宝から発売された『ジーキル博士の彷魔が刻(ほうまがとき)』です。
同タイトルは1886年にイギリスのロンドンで出版された小説『ジーキル博士とハイド氏』をモチーフにした横スクロールアクションゲームで、とにかく変わったシステムが特徴的です。
プレイ開始時はジーキル博士の状態で始まり、目的地である教会を目指して右に向かって進みます。街中にはあらゆる敵が存在し、攻撃を受けてしまうと「ライフ・メーター」が減り、アクシデントや妨害を受ければ「ストレス・メーター」が左の「H」へと傾いていきます。ライフ・メーターがゼロになればゲームオーバーになり、ストレス・メーターが左へ振り切れると、ジーキル博士はハイド氏に変貌し「ハイド・モード」に突入します。
ハイド・モードは右スクロールから左スクロールに切り替わり、すでに突破したステージのスタート地点から始まります。ハイド氏の状態で敵を倒すことでストレス・メーターが右の「J」へと傾いていき、右に振り切れるとジーキル博士に戻れるのですが、ジーキル博士の時に進んだステージを追い越してしまうと「運命の落雷」が発動してゲームオーバーになります。
斬新なゲームデザインではありますが、プレイヤーがついていけないほどわかりにくいシステムになってしまったようで、混乱した人も多かったようです。発売当時にプレイした人からは「右に行ったり、左に行ったりでワケがわからなかった」「初めてハイドモードになった時は意味不明すぎて混乱した」といった声が挙がっていました。
* * *
ファミコンが普及したことで、ヒット作を作ろうと奮闘した各メーカーですが、簡単にクリアできないように工夫を凝らしたことが裏目に出てしまった、といえるかもしれません。しかし上述したように、当時は難易度が高いほど良作、という価値観もありました。これら3作も、クリアした時には大きな達成感を味わえる、かもしれません。
(LUIS FIELD)
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