東北大など、強誘電体の分極反転挙動の観察をナノスケールかつ短時間で実現
マイナビニュース / 2024年5月2日 17時56分
東北大学と東京工業大学(東工大)は、強誘電体の分極反転挙動をナノスケールの空間分解能で、かつ、従来法の300分の1の短時間で高精細な画像を観察可能な新たな顕微鏡手法「局所C-Vマッピング法」を開発したと共同で発表した。
同成果は、東北大 電気通信研究所の平永良臣准教授、同・大学 未来科学技術共同研究センターの長康雄特任教授、東工大 物質理工学院材料系の舟窪浩教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行するナノマテリアルに関する分野全般を扱う学術誌「ACS Applied Nano Materials」に掲載された。
強誘電体は自発分極と呼ばれる、外部からの電圧の印加によって反転が可能な電気分極を有する材料であり、すでにそれを活用したメモリデバイスが実用化済み。しかし、従来のペロブスカイト構造の強誘電体は薄くなると強誘電性が失われてしまい、デバイスの微細化や低消費電力化に限界があることが課題となっていたという。
ところが近年になって、10nm以下という薄さでも強誘電性を維持できる蛍石型構造やウルツ鉱型構造など、新たなタイプの強誘電体が発見され、それらを用いた次世代超低消費電力メモリデバイス、さらには高度な演算を可能とするAIデバイスの実現が期待されている。
一方、従来型であれ新型であれ、強誘電体材料には共通して分極反転動作(メモリデバイスにおける書き換え動作に対応)を多数回繰り返すと、分極量が徐々に減少してしまう「分極疲労」が生じ、それによりデバイスの信頼性が損なわれてしまうことが大きな課題となっていたとのこと。
分極疲労を抑制し、デバイスの信頼性を向上させるためには、微小領域における分極反転挙動の詳細を理解し、材料特性の改善を図る必要があるという。さらに、デバイスの微細化が進む中、セルごとの特性のばらつきも顕在化しており、その要因を解明するためにも、ナノスケール評価技術の発展が求められていた。そこで研究チームは今回、微小領域を観察するための新たな顕微鏡手法である局所C-Vマッピング法(C-Vは静電容量-電圧を意味する)を開発することにしたとする。
今回の手法は、プローブ顕微鏡を改良した計測システムの「走査型非線形誘電率顕微鏡」(SNDM)を用いてが開発された。SNDMのセンシング部は、先端がナノスケールの探針(プローブ)と、高感度静電容量センサから成り、計測サンプルにバイアス電圧を印加した時に生じるわずかな静電容量の変化(あるいは誘電率の変化)を測定することができる。
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