クルド要衝を「放棄」するオバマのばかげた理屈
ニューズウィーク日本版 / 2014年10月24日 12時40分
人道的な理由のほかにも、アメリカがコバニを守るべき客観的な戦略上の理由がある。ISISがコバニを押さえれば、シリアとトルコの国境付近の広大な一帯を支配下に置くことになる。北部のラッカから各地の拠点を結んで、シリア最大の都市アレッポに至るまでのルートを確保できる。
それ以上に重要なのは、国境地帯を支配すれば外国人の戦闘員を集めやすくなる上に、石油などの物資を国際的な闇市場に流しやすくなることだ。コバニの掌握で、ISISには今まで以上に多くの武器と人員と資金が流入する。
コバニを放っておいた結果、アメリカはISISを「弱体化させ、壊滅する」どころか、強化させ、拡大させることになる。今では米政府高官もそれを理解しており、米軍は遅まきながらコバニに進撃するISISを標的に空爆を行った。オバマはクルド人部隊支援のため、空爆の回数をさらに増やすよう指示している。それでも遅きに失した感は否めない。
コバニが陥落すれば、アメリカはクルド人部隊の期待を裏切っただけでは済まない。この戦いは当初の目標から外れているという口実は通用しない。
人道的な理由からISISに対する空爆を決断したなら、コバニ防衛はまさにオバマが選んだ戦いだ。その戦いで、ISISは恐るべき大義の実現に向けて決定的な勝利を挙げようとしている。
[2014.10.21号掲載]
ウィリアム・ドブソン(本誌コラムニスト) スレート誌政治・外交エディター。カーネギー国際平和財団客員研究員や外交専門誌フォーリン・ポリシー編集長などを経て現職
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
ロシアで住宅崩壊、15人死亡=ウクライナ国境、制圧9集落に
時事通信 / 2024年5月13日 11時32分
-
アングル:ミャンマー内戦、国軍と少数民族武装勢力が迎える「転換点」の攻防
ロイター / 2024年5月11日 8時4分
-
当事者すべてを「ハッピー」にしたイランの報復攻撃 イランがイスラエルからの報復を恐れずに攻撃できる理由
東洋経済オンライン / 2024年4月20日 17時0分
-
「16歳でイスラム国(IS)の奴隷にされた」26歳女性が明かす6年半の絶望 「悪魔」の子どもも2人産まされ…クルド系少数派の悲劇
47NEWS / 2024年4月20日 10時30分
-
意外と早かったイスラエルの「報復」が意味する事 「暗黙のルール」に基づいた報復の応酬だが…
東洋経済オンライン / 2024年4月19日 20時0分
ランキング
-
1米大使、初の与那国島訪問=台湾情勢巡り中国けん制
時事通信 / 2024年5月17日 21時8分
-
2ロシア軍前進も「状況安定化」 ウクライナ、東部態勢強化
共同通信 / 2024年5月17日 19時41分
-
3北朝鮮の孤児院で乳幼児7人が栄養失調で死亡 職員らが子どもに与える食糧を横領していたとして逮捕、食糧事情の悪さが浮き彫りに
NEWSポストセブン / 2024年5月18日 7時15分
-
4プーチン氏、ゼレンスキー氏の正当性に疑問 戒厳令で大統領選延期
ロイター / 2024年5月17日 23時33分
-
5ニュース裏表 峯村健司 中国監視船内に2カ月拘留中の台湾軍人…軍事行動・スパイ活動の嫌疑「意図的に拘束」か 台湾有事〝最前線〟金門島ルポ・第2弾
zakzak by夕刊フジ / 2024年5月18日 10時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください