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習近平はなぜ北朝鮮高官と会談したのか?――その舞台裏を読み解く

ニューズウィーク日本版 / 2016年6月3日 17時0分

 これは中国建国以来、前代未聞の出来事である。それくらい、韓国を中国の懐に抱え込もうとした。



 それを嫌ったアメリカは中韓離間工作に力を注ぎ、朴大統領に圧力を掛け続けた。その結果、媚中をあきらめた韓国は、ついに昨年末、電撃的な日韓外相会談によって慰安婦問題を二度と再び国際社会で言わないことを日本に約束するにおよんだのである。安倍外交のこの瞬間の決断は非常に大きい。

 潮目はこの瞬間から急変している。

 日韓外相会談によって習氏との袂を分かつことになったパク氏は、中国の早くからの地盤でもあり、北朝鮮の軍事協力の陣地でもある「アフリカ」に目を転じたのだ。

 朴槿恵さん、なかなかやるではないか......!

 彼女の戦略をあなどってはならない。

 アフリカは、まだ国連に加盟できていなかったころの中国にとって、1955年のバンドン会議以来、最大の友好国を持った大陸であり、中国にはすべての政府組織に早くから「アジア・アフリカ処」があり、大学にも「アジア・アフリカ研究所」が設置されていた。

 だから朴槿恵氏のアフリカに対する動向を最も敏感にしてかつ詳細にキャッチしていたのは中国だと言っても過言ではない。もっとも、当事者の北朝鮮以外で、ということになるが。

 だからこそ、今般、北朝鮮の李洙墉氏との会談を習氏は承諾したのである。

 ということは、アメリカの中韓離間工作と日本の昨年末の日韓外相会談が習近平総書記の心を動かし、北朝鮮をようやく受け入れる方向に動き始めたということになる。つまり中朝接近を促したことになるのである。中朝がもし今後関係を改善するとするなら、中朝をそこに追いやったのはアメリカだ。恐るべき連鎖反応ではないか。

 東アジア情勢にとって、どちらが効果的で、どちらが平和安定につながるかは、次のステップまで待たなければならないが、少なくとも巨大に地殻変動が起き始めたことは確かだ。北朝鮮問題を解決するために「中国」というコマを使う上で、日米にとってどちらが良かったのか、今後も慎重に解読を続けていきたい。

[執筆者]
遠藤 誉

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


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