トランス男性が卒業式を迎えたパートナー愛娘からの手紙に涙「少しは父親のような存在になれていたんだ」
ORICON NEWS / 2024年5月2日 8時30分
パートナーの娘さんの高校卒業式に参加した、トランスジェンダーの1つであるFtMのAOさん。式が終わった後、娘さんから感謝の気持ちを綴ったお手紙を渡され、その内容にAOさんは思わず感極まってしまったと話します。その手紙を読む様子をおさめた投稿は149万回再生され、「素敵な家族」「血の繋がりより、心の繋がり」「いろんな家族の形があっていいと思います」「こんなイケメンパパ羨ましい!」などのコメントも寄せられています。多感な時期の娘さんとの関係性をどのように築いていったのか、AOさんに話を聞きました。
【写真】素敵な家族写真…娘さん卒業の際に撮影されたAOさん家族写真
■父親だと思ってほしいと考えたことはなかったけど… 手紙に綴られた娘の想いに感極まる
――娘さんからお手紙をもらったとき、どのような気持ちでしたか?
【AO】まさか僕にまで書いてくれているとは思わなかったので、本当にうれしかったです。僕とパートナーで協力して専門学校へ進学させてくれたことへの感謝や、2人がいつも仲良しで可愛くてかっこよくて大好きだといったことが綴られていたのですが、そんな風に思ってくれているなんて思っていませんでした。娘に自分のことを父親だと思ってほしいと考えたことはなかったのですが、少しは父親のような存在になれていたんだと思うと感極まりました。
――AOさんがママさんのパートナーとして一緒に住むことを話したとき、娘さんはどんな反応をされていたのでしょうか?
【AO】初めは僕たちが付き合っていることは内緒にしていました。「お母さんの一番仲良しな友達なんだよー」って(笑)。ですが、僕が若く未熟だったのと付き合いたての勢いもあり、半同棲みたいな生活を1ヶ月程していたところ、娘から「AOのことは嫌いじゃないけど、一緒に住むのは違うんだよね。泊まりに来るのは全然いいよ!」と言われてしまい…。「そりゃそうだ!!」と思ったので、僕はすぐに出て行きました(笑)。
――そこからどうなったのですか?
【AO】それから1年程かけて、週末にはお泊まりをして、パートナーと一緒に夕飯を作ってみんなで食事したり、僕が塾の送り迎えをしたりして、なるべくストレスなく生活に溶け込めるようにしました。娘が中3になった頃、パートナーが「私が彼氏を連れてきたらどうする?」と娘に尋ねたところ「AOだったらいいよ!一緒に暮らすならAO以外無理」と言ってくれました。そこで晴れて、僕たちは付き合っていてお母さんを本当に愛していることと、それと同じくらい君のことも大事に思っているということを伝えて、一緒に暮らしていくことになりました。
――娘さんはAOさんをどのようにして家族として受け入れていったと感じますか?
【AO】「お迎え来て!服貸して!宿題手伝って!髪切って!」とおねだりをしてくれるところに、心を許してくれていると感じます。「ちょっと肩揉んで!」などもありましたね(笑)。彼氏の相談をしてきてくれたり、困ったときにはいつも僕に助けを求めてくれていました。
――頼りになる存在なのですね。
【AO】もう1つすごくうれしかったのは、僕がトランス男性であるということも、自分の母親の彼氏であるということも、友達や学校の先生に隠さずに話してくれていたことです。僕が娘の立場だったら同じことができたのかわからないので、一人の素晴らしい人間として娘を尊敬しています。
――娘さんとの関わり方で難しさを感じた部分はありますか?
【AO】難しいと感じたことは特にないですが、必要以上に馴れ馴れしくしたり、無理に仲良くなろうとしたりはしないようにしていました。娘が僕を必要としてくれたときにだけ全力で応えるようにしていたら、いつの間にか仲良くなっていました。
――それはとても大切なことですよね。
【AO】あとは、パートナーをとにかく大事にして、毎日愛していることを伝えていたので、その姿を見て、家族として受け入れてくれたのかなとも思います。娘やパートナーにとって一番頼りになる存在でいたかったので、そこはかなり努力しました。
――子育てや家のことも含めて、どのように分担していましたか?
【AO】僕の子育ての明確な役割は、塾や学校、部活の送迎がメインでした。それ以外の家事などは全てパートナーと分担で、炊事やお弁当作りも交代でやったり一緒にやったりしています。学費や生活費なども今のところ全て折半です。
■「本当の親ではないからこそ言えることもある」 何があっても娘の最強の味方であると決意
――FtM、トランスジェンダーであるAOさんは、周囲の家族や親になっていく同年代の友人たちなどを見て、お子さんがほしいという感情が出てきたことはあったのでしょうか?
【AO】自分の子どもがほしいと思ったことは一度もありませんでした。周りの友達を見てもその感情は湧かなかったです。自分が家族を持つなんてビジョンが少しもなかったし、それを望んでも自分には不可能だと子どもの頃から悟っていた部分もありました。自分のセクシャリティについても誰にも話せなかったので、墓場まで持っていく秘密で、一生独りで生きていくんだと覚悟は決めていました。
――「親になることの素晴らしさ」や「子どもが自分に与えてくれる影響」をAOさんはどう捉えていますか?
【AO】ただただ存在してくれているだけで幸せです。子供の顔を見たり会話をしたりするだけで、本当にどんなに辛いこともどうでもよくなります。FtMである僕は、シス男性に対して劣等感やコンプレックスをどうしても抱いてしまうのですが、パートナーや娘が僕を父親のような存在として頼ってくれることによって、一人の男性としての自信は確実につきました。これは独りで生きていては到底得られなかった感覚だと思っています。
――パートナーのママさんは、AOさんと娘さんの関係性についてどのように感じていると思いますか?
【AO】パートナー曰く、「私はAOくんに娘の父親になってほしいと思ったことは一度もない。それを決めるのは娘だから。でも、AOくんは自然と娘に愛情を持って私と同じ気持ちで接してくれている。それだけで十分。ここまで2人の関係がうまくいっているのは、AOくんが私のことをすごく大切にしているのが、娘にも伝わっているからだと思う」だそうです。
――AOさんは、娘さんにとってどのような親でありたいと考えますか?
【AO】娘に自分のことを父親だと思ってほしいと考えたことは一度もないです。だから、どのような親でありたいかなんておこがましいとすら思ってしまいます。ただ、僕は自分の親に自分のセクシャリティの悩みや将来の不安や孤独感を話せなかったし、話したら否定されるのが目に見えていました。そのことに長年苦しんだので、娘にはなるべくそういう思いはさせたくない。僕は本当の親ではないですが、だからこそ言えることもあると思うので、何があっても何もなくても、絶対に最強の味方であろうと思っています。
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