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アップルが「買いの優良7銘柄」から脱落…GAFAに代わって世界の投資家が殺到している「MnM」とは

プレジデントオンライン / 2024年2月13日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ozgurdonmaz

■時代は「マイクロソフト、エヌビディア、メタ」へ

2023年10月~12月期の米大手IT先端企業の決算が出そろった。GAFAM〔グーグル、アップル、メタ(旧フェイスブック)、アマゾン、マイクロソフト〕の業績を比較すると、生成AI関連事業への取り組みが明暗を分けた。まさに、AIが先端企業の分水嶺(れい)になっているようだ。

AIへ積極的に取り組んできたマイクロソフトとメタ、さらにAI関連の半導体分野で強みを発揮するエヌビディアの成長期待はよいものがある。生成AIへの対応力の差を反映して株式市場にも明らかに変化が表れている。これまでの“マグニフィセントセブン(GAFAMとエヌビディア、テスラ)”から“MnM(マイクロソフト、エヌビディア、メタ)”へ、主要投資家の注目はシフトしつつある。

AIがもたらす高い成長という“夢”を追いかけ、世界のIT有力企業は開発を急いでいる。これから先進国に限らず世界中で、今まで経験しなかったスピード、規模感で生成AIが社会に浸透することになるだろう。それは、われわれの日常生活も大きく変える、驚くべきパワーを持っているとみるべきだ。

■“チャットGPT”で快進撃を続けるマイクロソフト

一部の専門家からは、「今後10年以内に人間と同等の知能と判断力を持つAIが出現する」との見方もある。われわれも、そうした変化に順応していくことが求められるだろう。高い成長を追求する企業や研究者は今後も増加し、投資家のMnMへの成長期待も高まるはずだ。

成長期待の高い生成AI分野への取り組み度合いが、マグニフィセントセブンの明暗を分けた。1月が決算期のエヌビディアの決算発表はまだだが、いち早く生成AIを強化したマイクロソフトや、最新のGPU投入で業績が拡大したエヌビディア、さらにはリストラを進め、生成AI関連事業を強化するメタの3社は勢いが増している。最近では、“MnM”と称される3社が主要成長企業になっているようだ。

“チャットGPT”登場をきっかけに、マイクロソフトはAIとクラウド事業を結合した。クラウドは、データなどの保存だけではなく、生成AIを用いて企業の事業運営の効率性、生産性向上を実現するデジタル・ツールに昇華した。生成AI関連サービスの需要増加がマイクロソフトの業績拡大を支えた。

マイクロソフトなどIT先端企業の生成AIビジネスに欠かせないのが、エヌビディアが設計開発を行うAIチップだ。同社は台湾積体電路製造(TSMC)の最先端の製造ラインを用いてGPUを生産し、IT先端企業の需要を取り込んだ。

■唯一、アップルの対応が遅れている

ソーシャル・ネットワーキング・サービス事業で成長したメタは、ビジネスモデルの再構築を急ぐ。広告事業面では短編動画サービス“リール”を導入した。短編動画を用いた広告サービスが企業のニーズにマッチし、広告収入は増加した。

メタは大胆な人員削減も実行した。2023年、22%の従業員をカットし、生成AI分野へ“ヒト・モノ・カネ”の再配分を強化した。昨年12月、生成AI分野での事業運営体制を強化するためにメタは法人向けのAIサービスで収益が伸びているIBMなどと提携を交わした。一連の改革はメタの成長期待を大きく高めた。

MnMを追いかけるように、グーグルとアマゾンは生成AI関連事業を強化し、AI対応半導体の開発体制も強化し始めた。一方、アップルの2022年12月期からの売上高は2%増、1株あたりの利益は16%増で、同期間のマイクロソフトやグーグルを大きく下回っている。AIへの対応も遅れた。同社は生成AI事業をどう進めるか、まだ詳細は外部には明確に示されていない。

AI関連企業と業態は異なるが、テスラは中国のBYDの猛烈な追い上げに直面し世界トップのEVメーカーから滑り落ちた。生成AIへの対応力で、米国の株式市場の注目は“マグニフィセント7”から“MnM”に移り始めた。

■AIはアフリカの人材難さえも解決してしまう

世界の生成AI業界は、まだ成長の初期段階にあると考えられる。現在、生成AIの利用というと、検索情報から作成される文章、データを使ったレポート作成などを思い浮かべるだろう。しかし、それらは生成AIの機能のほんの一部に過ぎない。

今後、AIは経済・環境・安全保障などあらゆる分野で重要な役割を果たすようになるとみられる。そのインパクトは、かつての産業革命を凌駕するほどとの指摘もある。それこそ、AIは私たちが生きている間に目にすることになる、最も大きな変革になるかもしれない。

一つ注目したいのは、その変革が先進諸国だけにとどまらないことだ。新興国など世界中で生成AIが活用されることになる。ケニアでは、教育系スタートアップ企業の“Kytabu(キタブ)”が教育アプリ“ソマナシ(スワヒリ語で共に学ぶの意味)”を試験導入した。教員の不足、現地の言語での教育が十分に実施できないなどの課題を、生成AIがこれまで経験したことのないスピードで解決することになりそうだ。

■かぜをひいても、もう医師は要らない?

生成AIによって、世界中の医療体制も向上する可能性がある。かぜなどを生成AIが診断し、必要な処方箋を発行する。近隣のドラッグストアからドローンで治療薬を患者に届ける。治療データを分析することで、新しいワクチンや医薬品の開発も加速する。そうした変化が目の前に迫りつつある。

それらは、これまでの社会常識を大きく変えることになる。教育、医療、社会インフラなどが発展途中の新興国では、主要先進国を上回るスピードで生成AIが社会全体に浸透する可能性もあるだろう。生成AIは、従来の経験則が当てはまらない(非連続的な)世界の変化を加速しようとしている。

生成AIの推論の性能(精度)を高めるためには、データセンターを増やし、深層学習を強化することが必要になる。それに伴い、電力需要は急速に増加する。需要を満たすために“核融合発電”など、新しい技術の実用化を目指す企業は増えている。

遺伝子工学の概念
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

■「人類の知能以上のAI」の誕生はおとぎ話ではない

当初、AIはアップルの“Siri”やアマゾンの“アレクサ”など、音声リモコンのような機能として使われ始めた。現在、AIは、ビッグデータを学習し、文字を生成するAIモデル(生成AI)に発展した。MnM(マイクロソフト、エヌビディア、メタ)などは牽引役だ。

当面は、生成AIの性能向上のためデータセンター需要が増える。世界中のあらゆる分野で、多くの生成AIが使われるようになる。それは、関連分野でも多くの需要創出を支える。スマホに搭載するAIチップ、データセンター向けのGPUなど先端分野の半導体需要は増加する。先端の半導体製造装置などの精密機械、AIデバイスに使われる新素材の需要も増えるだろう。

少し長い目で見ると、生成AIから“AGI(Artificial General Intelligence、汎用(はんよう)人工知能、汎用AI)”に向かうと予想される。汎用AIとは、わたしたち人類の知能以上の能力を持つAIをいう。汎用AIがいったいどのようなものか、わたしたちの生活やビジネスにどのようなインパクトをもたらすか、今後のAIの展開次第ということになるだろう。

■投資家の期待はしばらく「MnM」に集中か

ただ一つ言えることは、AI開発の加速によって、世界全体で経済運営の効率性は上昇するはずだ。AIを活用すると、より少ない労力で、必要な情報やサービスを手に入れられる。自らの能力や効率の向上を目指しやすくなる。

AIを活用することで、わたしたちは自分の関心のあることをより深く学び、より良い自己実現を目指すことができるはずだ。そうした潜在的なベネフィットの大きさから、種々の懸念がある中でもMnMの成長期待は高い。

現在、生成AIの推論能力の不安定さなどに対する危惧もある。社会の利器としてのAIのメリットを享受するためにも十分な開発は必要不可欠だ。これからも、AI事業の強化でMnMなど、AI関連企業の業績期待は高まるだろう。おそらく、株価もそうした期待を反映した動きになると予想する。

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真壁 昭夫(まかべ・あきお)
多摩大学特別招聘教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授、法政大学院教授などを経て、2022年から現職。

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(多摩大学特別招聘教授 真壁 昭夫)

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