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冷戦が「欧州中心の近代科学史」をもたらした理由 政治的に都合良く語られてきた科学発展の歴史

東洋経済オンライン / 2023年12月12日 10時0分

科学技術は政治的成功の証しであると広くみなされていたことから、近代科学はヨーロッパで発明されたという作り話が都合良く利用されました(Gilmanshin/PIXTA)

コペルニクスやガリレイ、ニュートン、ダーウィン、アインシュタインといった科学者の名前は、誰もが知っている。そして近代科学は16世紀から18世紀までにヨーロッパで誕生し、19世紀の進化論や20世紀の宇宙物理学も、ヨーロッパだけで築かれたとされている。
しかし、科学技術史が専門のウォーリック大学准教授、ジェイムズ・ポスケット氏によれば、このストーリーは「でっち上げ」であり、近代科学の発展にはアメリカやアジア、アフリカなど、世界中の人々が著しい貢献を果たしたという。
今回、日本語版が12月に刊行された『科学文明の起源』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。

ヨーロッパ以外からの科学への貢献

今日の科学者なら、自分の研究は国際的な性格を帯びていると進んで認めるものだ。しかしその一方で、それは比較的最近の傾向であると考えがちである。

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20世紀の「ビッグサイエンス」の成果であって、500年以上さかのぼる科学の歴史とは無関係だと思い込んでいる。ヨーロッパ以外からも科学への貢献があったことは認めるものの、その多くは遠い過去に追いやって、科学革命や近代科学の台頭に関するストーリーの一部とはみなさない。

中世イスラム科学の「黄金時代」についての話はよく耳にする。それは9世紀から10世紀頃、バグダッドの科学思索家が世界で初めて代数学などの新たな数学的手法を数多く編み出した時代のことだ。また、1000年を優に超えてさかのぼる古代中国の科学的成果、たとえば方位磁針や火薬の発明も同じく盛んに取り上げられている。

しかしそのようなストーリーは、中国や中東などの地域が近代科学の歴史とほとんど無関係であるとする説明を増長させることにしかならない。

多くの人は忘れてしまっているが、「黄金時代」という概念自体、そもそも19世紀にヨーロッパの各帝国の勢力拡大を正当化するために考え出されたものである。

イギリスやフランスの帝国主義者が広めた、アジアや中東の文明は中世以降衰退しているのだから近代化が必要である、という考え方は間違っているのだ。

中国やトルコが誇る近代以前の科学的偉業

驚かれるかもしれないが、このようなストーリーはヨーロッパだけでなくアジアにもいまだに広まっている。

2008年の北京オリンピックを思い返してほしい。開会式の冒頭で巨大な巻物が広げられ、紙が古代中国の発明品であることが表現された。10億人を超すテレビ視聴者が見つめる中、開会式ではそのほかにも方位磁針など古代中国のさまざまな科学的偉業が披露された。

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