「次期装輪装甲車」選定に見る防衛予算の無駄遣い 国内生産で単価高騰、浪費される防衛費の実態
東洋経済オンライン / 2023年12月19日 11時20分
年の瀬が迫り、来年度政府予算が承認されるまであとわずかとなった。岸田内閣は安倍晋三元総理の提唱した防衛費をGDP比率2パーセントに引き上げるという政策を受け入れ、本年度から5年間の防衛費を総額43兆円とした政府の防衛力整備計画を決定した。
【写真】96式装甲車の後継である「装輪装甲車(改)」として採用されたがキャンセルとなったコマツ案
2024年度の防衛省概算要求は過去最高の7兆7385億円に上っている。だが、はたして防衛省に巨額の予算を使う能力があるのか。防衛省の予算には多くの無駄があり、効率的に予算を使っているとは言いがたい。増加した予算が無駄遣いされる可能性は極めて高い。
極めてずさんな「次期装輪装甲車」の選定
その象徴的な例が「次期装輪装甲車」のプロジェクトだ。防衛省は陸上自衛隊の96式装甲車の後継としてフィンランドのパトリア社のAMV(Armoured Modular Vehicle)XP(以下、AMV)を選定し、本年度予算で要求した。
だがその選定過程は極めてずさんで、今後調達費の高騰など大きな問題の火種となりそうだ。これは自民党の国防部会や財務省でも問題となっている。
そもそも96式装甲車の後継は「装輪装甲車(改)」というプロジェクトで三菱重工とコマツが競い、コマツが受注した。だがその後に装甲の性能不良などが発覚して2018年にプロジェクトがキャンセルとなった。
筆者が取材した限り、不整地走行性能など多くの不具合があったようだ。これらはトライアルでわかる欠陥であり、三菱重工のMAV(Mitsubishi Armored Vehicle)を選択すべきだった。それをやらずに、採用を決定したのは、コマツに仕事を振るために、はじめからコマツ案の採用ありきだったのだろう。
このため防衛装備庁は新たに「次期装輪装甲車」として96式の後継選定を2022年度に開始した。候補は三菱重工がMAV、NTKインターナショナル社がAMVを、双日エアロスペースがGDLS(General Dynamics Land Systems)のLAV6.0を提案した。だがLAV6.0は2022年度末の納期に試験用車両が間に合わずに脱落した。
結果、AMVが選定されたのだが、その選定過程がこれもまた極めていい加減だった。防衛装備庁が求める基本性能はAMVが優れ、後方支援・生産基盤については両車同等、経費についてはAMVが優位でAMVを次期装輪装甲車のAPC(Armoured Personnel Carrier:人員輸送型)として選定した。
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