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日本製鉄、「USスチール2兆円買収」に動いた必然 経営リスクは覚悟で「脱ドメスティック」に進む

東洋経済オンライン / 2023年12月20日 7時10分

今回の買収を「チャレンジ」と述べた日本製鉄の橋本英二社長。写真は2022年12月の会見時(撮影:梅谷秀司)

「新たな時代におけるグローバルネットワークを構築し、わが国日本の成長力を取り戻す。そのためにチャレンジをいたすことにした」

【画像】献身的な労働者の懸念を脇に押しやり、外資系企業に売却することを選んだ――。全米鉄鋼労働組合(USW)の出した声明には感情的な言葉が並ぶ

国内鉄鋼最大手の日本製鉄は12月18日夜、アメリカの老舗、USスチールを約2兆円で買収すると発表した。翌19日の会見で橋本英二社長は、日本製鉄として過去最大となる買収の意義を力を込めて語った。

100年以上の歴史と国名を冠する名門同士

USスチールは1901年、銀行家のJPモルガンや鉄鋼王のアンドリュー・カーネギーがかかわる製鉄会社が合併して誕生した、アメリカ産業史を代表する企業。1960年代までは世界最大の鉄鋼会社でもあった。

その後、日本を初めとするアジアメーカーに抜かれて凋落。2022年の粗鋼生産量は世界27位(世界鉄鋼協会)。アメリカの鉄鋼メーカーではニューコア、クリーブランド・クリフス(以下、クリフス)に次ぐ3位である。

一方、日本製鉄の前身である官営八幡製鐵所が操業を開始したのも1901年。ともに100年以上の伝統を持ち、国の名前を冠する企業同士の統合となる。

もっとも19日の株式市場は「ひとまず下げ」の反応だった。

日本製鉄の株価は前日比4.3%の下落で始まり、終値も同2.8%下げた。これにはいくつかの懸念があるからだ。

第1に高値づかみの懸念。

日本製鉄の買収案はUSスチール1株当たり55ドル。発表前の株価39.33ドルに40%のプレミアムを付けた。アメリカ企業の買収で40%のプレミアムはさほど高くはない。

だがUSスチールは、今年8月に身売りを含めた「戦略的選択肢」を検討していると公表。直後、クリフスによる買収提案が公開されたことで株価は上昇した。8月以前の株価は20~30ドルだったこと、クリフスの提案は1兆円前後だったとされることを考えると、プレミアムはかなりのものだ。

第2が買収に伴う財務への影響。

2兆円の買収資金は、国内の主要取引銀行から融資の確約を受けており、いったんは借入金で対応する。このことでDEレシオ(負債資本倍率)は0.5から0.9まで上昇する。

0.9という水準は一般に安全圏とされるが、今後、「経営・財務状況、市場動向などを勘案しながら、必要に応じて、資本構成を評価し最適な資金調達手段を検討する」としており、株式市場が嫌う増資の可能性が残る。

労働組合が非難の声明

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