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「過疎ビジネス」にすがった福島・国見町の過ち コンサル丸投げ自治体が陥ったガバナンス不全

東洋経済オンライン / 2024年2月15日 8時0分

福島県国見町が公募を開始する前から受注製造がはじまっていた救急車(写真/河北新報)

財政難や人材不足にあえぐ小さな自治体が、官民連携の名の下に協力姿勢を示した企業に施策を丸投げした挙げ句、公金を食い物にされた――。

【図で見る】ふるさと納税で寄付をした企業に事業が還流するスキーム

その責任は誰が負うのか。「提案」した企業か、それとも「決定」した行政か。

企業版ふるさと納税をした企業の子会社が、その寄付金を使った自治体の事業を受注していたことで“寄付金還流”の疑惑が持ち上がっている福島県国見町。町議会が2023年10月に設置した調査特別委員会(百条委員会)で、企業と行政が責任の押し付け合いを繰り広げている。

『河北新報』記者である筆者は2023年2月から、この不可解な国見町の救急車事業の問題を報道し、東洋経済オンラインでも「弱る自治体をぶんどる『過疎ビジネス』の実態」と「ふるさと納税不正疑惑の自治体が『資料は破棄』」で詳報してきた。

国見町がやろうとしていた事業は、匿名の3社から企業版ふるさと納税で国見町に寄せられた計4億3200万円を財源に、高規格救急車12台を町で所有し、他の自治体などにリースするというものだった。備蓄食品製造のワンテーブル(宮城県)が受託し、救急車ベンチャーのベルリング(東京)が車体製造を担った。匿名で財源を寄付したのは、ベルリングの親会社DMM.comとそのグループ2社だ。

官製談合防止法に抵触か

百条委は、事業には官製談合の疑いがあるとみて追及を強めている。2024年1月26日にワンテーブルとベルリングの前社長を証人喚問した。

以下は、百条委と関係者のやりとりだ。
 
(百条委)ワンテーブルは何が目的で国見町に救急車事業を提案したのか。
 
(ワンテーブル前社長の島田昌幸氏)私に目的などない。地域課題はそれぞれで、主体者は皆さんだ。「案出し」と「決定」は性質が違うと思う。われわれは最良の案を示すが、決めるのは町だ。
 
(百条委)ベルリングは国見町用の「参考仕様書」を作成して町に渡したのか。

(ベルリング前社長の飯野塁氏)入札に至るまで、町と直接やりとりしたことは一切ない。参考仕様書はワンテーブルに提出したが、一般論として自治体に自社の仕様書を提出することは、よくある。それ自体が問題だとは思わない。

国見町の仕様書にはベルリング製車両の特徴に一致する指定が多数盛り込まれ、中古車2台を含む計12台の救急車を使いやすいように「研究開発」して2023年3月末までに納車するよう求めていた。
 
国見町が委託事業者を公募したのは2022年11月。公募から納車までの猶予は4カ月で、通常であればどだい無理なスケジュールだが、これには裏があった。ベルリングは公募の8カ月前にワンテーブルから救急車の発注を受けていたのだ。

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