80歳女性の「生きがい」を奪う"食品衛生法の問題" 国の「漬物は食中毒のリスク」専門家はどう見る
東洋経済オンライン / 2024年4月2日 11時0分
「一般的に発酵食品は、菌が存在するのが大前提で、良い菌が増えると悪い菌が減るという考え方で作られています。伝統的な発酵食品は、雑菌がたくさん存在しても、良い菌が増えていくごとに、腐敗や食中毒の原因となる細菌が増殖しにくくなり、結果的に食の安全が保たれるという考えがベースです」(前橋さん)
また、食中毒のリスクという観点で考えると、「漬物全般をひとくくりにするのは、いささか疑問が残る」とする見方もある。
漬物は、塩を使うことで素材を腐敗から守り、熟成するごとにうま味を引き出すように作られている。塩蔵を基本としながら、そこに調味料や発酵による風味付けを行うことで、さまざまな種類の漬物が作られる。
また漬ける期間も古漬けなどの長期から、浅漬けなどの短期まであり、漬け込む回数も1回だけのものから数回にわたって漬け込むものまで、さまざまだ。
食中毒のリスクがあるのは?
食品の発酵に詳しい東京家政大学大学院客員教授の宮尾茂雄さんは、「食中毒を起こす漬物は、浅漬けなど、低塩で非加熱殺菌の漬物に集中している」と指摘する。
「食中毒のリスクがある浅漬けは、殺菌や温度管理などを徹底するべきですが、しっかり塩漬けされた漬物や梅干し、らっきょうなどの甘酢漬け、いぶりがっこのように燻煙された漬物、加熱殺菌された漬物などでは、食中毒の事例は起こっていません」(宮尾さん)
それを踏まえると、今回の法改正で漬物全般が営業許可制になるのは、少し強引な印象だという。
「範囲を広げ過ぎているようにも感じます。かといって、漬物の種類ごとに線引きを変えるのも、管理や運用面で考えると難しいため、悩ましいところです」(宮尾さん)
実際、厚労省は規制強化の対象を漬物全般としたことについて、「浅漬けとそれ以外などを区別する線引きが難しい」(担当者)とする。作り方が異なり、食中毒リスクの観点において差があったとしても、ひとくくりにせざるを得ないのが実情のようだ。
こうした中、伝統の味を守ろうとする動きが各地で広がり始めている。
伝統の味を守ろうとする動き
「漬物作りを続けたい人の思いや、味の伝承をできるだけ守っていきたい」。食品衛生法の改正で今年6月以降、漬物などの製造業の営業許可が必須なることを受け、高知県は1月29日、営業許可取得の基準を満たす施設改修や機器の導入に対する補助金を創設した。
それぞれの地域の実情に応じて運用できるよう、市町村と協調する制度とし、補助率は、市町村負担額の2分の1以内。県の補助上限は個別加工施設50万円、共同施設100万円で、改正法施行前から営業する事業者が対象となる。
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