80歳女性の「生きがい」を奪う"食品衛生法の問題" 国の「漬物は食中毒のリスク」専門家はどう見る
東洋経済オンライン / 2024年4月2日 11時0分
3月1日時点で、県内34市町村のうち「支援制度を創設済み」が23市町村、「検討中」が8市町村、「取り組む予定がない」のが3町村だという。
「可能な限り、幅広い方に補助制度を活用してもらうことで、漬物文化の伝承を守っていけたらと考えています」(高知県地産地消・外商課)
前回の記事にある「いぶりがっこ」の産地・秋田県横手市も、県との共同助成を行う。補助金の創設のほか、市の施設に漬物の製造保管場所を増設し、共同利用できるように整備や改修を行った。
また、生産者が改修や営業許可を得るための手続きなどについて、個別に相談できる専属の相談員を2022年から配置。高齢の生産者が、許可を得るための煩雑な手続きを理由に製造をやめるのを防ぐ目的だという。
“支援があるなら、もう少し頑張ろうかな”とする生産者も増え、2021年に同市が実施したアンケートでは、187人のうち製造継続の意向を示したのは、当初の1割から約半数に増加した。
「いぶりがっこは、食事だけでなく、お茶請けとしておやつ代わりにも食べたりする地域の味。できる限り、守っていきたいと思っています」(横手市食農推進課)
「手作り漬物がなくなる前に、僕らと一緒に製造所作りませんか?」
今年1月、SNSのこんな投稿が注目を集めた。発信の主は、梅の産地として知られる和歌山県みなべ町で、梅干し製造会社「うめひかり」を営む山本将志郎さん(30)。
山本さんは、全国各地で農家の後継者不足が問題になる中、耕作放棄地を活用し、梅栽培に励んでいる。
法改正によって、各地で漬物作りを断念する生産者が増えている事態を受け、山本さんは「必要最低限の小さな梅干し製造の設備を整えて、全国のおばあちゃんたちにオーナーになってほしい」と発信。今後、必要な設備を整備するための費用を、クラウドファンディングで募るなどし、製造を続けたい人をサポートしていく予定だ。
山本さんは、「1次産業や地域の味をつなぐ担い手が不足しているという根本的な問題に目を向けなければならない」とも強調する。
「漬物製造が続けられないと断念する人が相次いでいますが、その根本的な課題は、後継ぎがおらず長期的な設備投資に踏み切れないことだと思います。法改正で、この問題が改めて取り沙汰されましたが、農家の高齢化と後継者不足という問題は、もっと前から起こっている。本当の意味で味の伝承を考えるなら、より根本的なところから考えないといけない」(山本さん)
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