「アップル<マイクロソフト」と判断する大間違い 収穫期のMSと種まき機のアップルの違い
東洋経済オンライン / 2024年4月4日 7時30分
例えば、スマホ市場で最大のライバル、サムスン電子も有力な半導体メーカーの1社ではあるが、同社の半導体は自社製品だけのために設計されているものではない。あくまでも独立した事業として存在している。
アップルは各ジャンルにおいてこれまで通り進化を続けていれば、今後も各市場で優位性を保つことができるに違いない。 ただし、市場が成熟化していけば、いずれ費用対効果という意味でアップルをしのぐ製品が生まれる可能性は十分にあるだろう。
1990年代半ばから後半にかけて1度は潰れかけたアップルが、挑戦者として戦いを挑んできた結果、現在の強い体制を作り上げてきたわけだが、現在逆風が吹いていることは間違いない。
EUにおけるデジタル市場法(DMA)に準拠した新しいiPhoneは、iPhoneにおける絶対的なセキュリティーの高さに不安定さをもたらしている。
また、開発者たちを引きつけ続けてきたiPhoneというプラットフォームは公共性が高まったことで、EUだけではなく、アメリカ、日本でも事業モデルに厳しい目が向けられている。いずれDMA法準拠のiPhoneと同じく、完全に垂直統合されたiPhoneのシステム基盤を脅かす法的な規制が加えられる可能性は否定できない。
アップルが取れる「選択肢」
そうした中で、未来に向けてアップルが取れる選択肢は限られている。かつてマイクロソフトがモバイルとクラウドの時代に合わせて事業ポートフォリオを組み立て直したように、アップルも事業の形を変えるのか、あるいは種を撒き続けて、新たな製品ジャンルを開拓していくのか。
純粋なハードウェアメーカーであるアップルは後者を選択しているというのが筆者の見立てだ。
つまり、どんなジャンルにおいて、アップルの持つ技術や強みを生かせるのか、研究開発を続けてきた結果として、EV開発への投資を止めたとも捉えることができる。アップルはわれわれにが考えるより、はるかに広いジャンルで種まきをしているのだ。
そして現在、アップルが最も有望なジャンルとして捉えているのは、言うまでもなく「Apple Vision Pro」である。ティム・クックCEOが初めてその原型を体験したのは8年も前のことだとされているが、 Vision Proは現時点においてもまだ実験的なプロジェクトと言えるだろう。
その部品コストは1500ドル以上とされ、本来は7000〜8000ドルで売らければ利益が出ないといわれる始末だ。製品としての成熟度は、まだまだ低く、最も優れたOSの開発者であるアップルをしてもまだ、Vision ProのOSは未完成の領域である。同様にユーザインターフェースにおいても最も優れた開発者であるアップルをして、いまだに完全な使い勝手を実現しているとは言えない。
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