川勝知事で話題「細川ガラシャ」壮絶な辞世の句 辞任の心情を問われて引用し、注目が集まる
東洋経済オンライン / 2024年4月11日 15時30分
「これが現実に起きていることとは……」
まるで罪人のように粗末な籠に乗せられた玉。待女2人を連れて、人気のほとんどない山深い味土野へと幽閉されることとなったのである。
「子供たちと会いたい」
毎夜、月を見上げる玉。ある日、さらにどん底に叩き落す知らせが届いた。
「坂本城が落城……姉も弟たちもみんな炎のなかで自害……」
すでに父は討たれている。玉は、まさにすべてを失ったことになる。ただ一人行方知らずの妹の鈴をのぞけば、みないなくなってしまった。
「鈴だけは、どうか、鈴だけは……」
よほど自分も死んでしまおうかと何度も思ったが、玉は思いとどまった。2人目の子を宿していたからだ。私が細川家を守る。夫から離縁されてもなお、玉はそんな意思を固めていた。忠興が現れないのも、きっと何かの理由があるはず――。
そうして幽閉生活も2年が経ったころ、玉は宮津へと帰還が許される。ついに忠興が現れた。
夫・忠興の異常な愛情
忠興は玉に会うと、しっかりと抱きしめた。忠興は玉と復縁する許しを得るため、2年の間必死に秀吉に仕えていたのだ。一度、離縁したのも、明智家とのつながりがもはやないことを、秀吉に示すためであった。
「玉、会いたかった。離縁はそなたを守るためだった。ようやく太閤秀吉殿がお許しになられたのだ……」
秀吉……父を討った秀吉に私の命運は握られていたのか……そんな悔しさがなかったかといえば嘘になるが、安堵がそれに勝った。なにしろ、2年間、山にこもって、ひたすら将来を悲観する時間を過ごしたのだ。
忠興様を信じてよかった……また、ここから、夫と子供たちと人生を始めよう。玉は忠興の胸で涙にくれながら、何とか前を向こうとしていた。
しかし、夫の忠興の様子がおかしいことに気づくのに、そう時間はかからなかった。いつも見張られているような気配を感じながら、日々を過ごしているうちに、玉は忠興から外出を禁じられてしまう。
「一体、なぜなのですか!」
玉は抵抗するが、忠興は「一歩も出てはならぬ」と繰り返すのみ。そして、玉を抱きしめて、耳元でこうささやいたのである。
「もうどこにも行かせない。ずっと私のそばにいればよい」
嬉しい言葉のはずなのに、咄嗟に玉は忠興を突き飛ばしてしまった。
「ごめんなさい……」
忠興は薄ら笑いを浮かべながら、庭のほうへ目をやった。庭師がこちらに背を向けて木々の葉を切り、整えている。
「家中でも安全とは限らないか……」
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