「いじめ防止法」改正の署名活動する遺族の思い 被害者を追い詰める学校の対応に罰則規定を
東洋経済オンライン / 2024年4月14日 7時50分
513人。これは厚生労働省が今年3月に公表した、2023年の小中高生の自殺者数だ。2022年の514人に次いで過去2番目に多い。
【写真】自殺現場で手を合わせる遺族。いじめの真相解明に多大な犠牲を強いられている
背景の1つとして考えられるのが、いじめの増加だ。文部科学省によると、2022年度に小中高校と特別支援学校で認知したいじめ件数は過去最多の約68万件。小中学校における不登校者数も過去最多の約30万人を記録している。
これらの数字は、2013年に制定された「いじめ防止対策推進法」の機能不全を示している。同法はいじめを禁じ、防止体制の構築や重大事態発生時の調査などを義務づける。
一方、破ってもペナルティーはなく、ないがしろにする学校が存在するのも事実。結果的に被害者やその家族は精神・経済の両面でさらに追い詰められる。教訓も満足に残せず、新たな悲劇が全国で繰り返されている。
子供の犠牲をなくすために、実効性のある法制度をーー。昨年末、インターネット上で法改正を求める署名活動が立ち上がり、賛同者はすでに1万5000人を突破している。発起人は、いじめ自殺で息子を亡くした1人の母親だ。
学校側による自殺の隠蔽提案
「『いじめ防止対策推進法』を改正してください! ―いじめ自殺を『突然死』で公表しようとしても許される法律に罰則を―」と題したオンラインによる署名活動を始めたのは、長崎市に住む福浦さおりさん(苗字のみ仮名)。
2017年4月、長崎市の私立海星高校2年生だった息子・勇斗くんを自殺で亡くした。
福浦家は年に数回の家族旅行を楽しみに暮らす、ごくありふれた家庭だった。勇斗くんは亡くなる当日も普段通りだったという。いつものように登校し、帰宅後は弁当箱を台所に出した。そして夜に行方不明となり、翌日の朝、近所の公園で首を吊った状態で発見された。
さおりさんは「何でも話せる仲だと思っていたのに、悩みには気づけなかった」と後悔をにじませる。愛息を突然失い、焦燥と自責の念でパニック状態の両親に対し、学校側の姿勢はおよそ誠意を欠いたものだった。
自殺の約1週間後、武川眞一郎教頭(当時、現在は校長)が「マスコミも海星高校の生徒だと気づいていないし、突然死したことにしないか」と隠蔽を持ちかけてきたのだ。その翌日には「遺族が望むのなら、転校したことにもできる」と提案してきた。
勇斗くんが残した遺書や手記には、いじめ被害の示唆や加害者の実名が含まれていた。真相を知りたかった遺族は、武川氏の申し出を断り、第三者委員会による真相究明を求めた。
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