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今さら聞けない「機関投資家」っていったい何? IRのプロが渡り合ってきた伝説的な投資家

東洋経済オンライン / 2024年4月24日 18時0分

IR視点からすれば、長期に安定した経営を行っていくために長期保有の機関投資家に株主になってもらいたいわけですが、株主を選ぶことはできません。選ぶのは、機関投資家なのですから。そんな機関投資家において、集めた資金の投資先企業や配分を決めるのがファンドマネージャー(以下、FMとします)です。

数多くの取材をこなした中でも、記憶に残っているFMが何人かいます。

まずは、若いころの失敗談。相手は香港拠点のヘッジファンドのFMで、IR担当へいくつもの回答できない質問を意図的にぶつけてくる人でした。例えば、前職の場合ですと主力製品の顧客ごとの売上比率や原価構成などでしょうか。「(機密事項のため)回答は控えさせていただきます」と言わざるをえません。

するとそのFMは都度「(こんなことが)回答できないんですか!」「(競合の)X社では回答あったのに……」などなど。うぶな私はその圧に押されて、しどろもどろの回答になったことがあります。

もう1人、拙著にも書きましたが私が最も畏敬の念を抱く機関投資家、アメリカのキャピタル・グループとの取材経験です。同社本拠地のロサンゼルスへ訪問取材した際のこと。取材相手は同社に勤める日本人FMです。それまでに複数回の取材を重ねており、お互いのことは理解しあっていました。

取材開始から10分程度たった頃でしょうか、トントントンとドアがノックされ、1人の老人がゆっくりと部屋に入ってきました。すると、FMは取材途中にもかかわらず、すぐさま立ち上がりその老人をにこやかに出迎えたのです。

私がポカンとしていると「失礼しました。こちらはMr. XXXです」と紹介されました。この方こそ同社成長の礎を築かれたレジェンドの1人。名前を聞くことはあっても、お会いするのは初めてで、ましてや取材に同席されるとは想像だにしていませんでした。「今日の取材ボードに御社の名前があったのでやってきました。中断させてしまいすみません。続けてください」と柔和な表情で言われました。取材後に3人で撮影した写真は私の宝物の1枚となっています。

日本に「投資の神様」は誕生するか

お会いした当時、御年70代とうかがいましたが、現役として活躍されていました。それ自体、素晴らしいことですが、それ以上に私が感動したのは、FMを心からリスペクトし、称える文化が確立していることです。

これはキャピタル・グループに限ったことではありません。アメリカには資産運用業の第一線で活躍する人たちをいい意味でスターとして称賛する文化が根付いています。日本でも高名なウォーレン・バフェット氏は「投資の神様」と言われるほど。

翻って、日本には「経営の神様」は時おり出現しますが、「投資の神様」はどうでしょうか。残念ながら……と言わざるをえません。資産運用立国実現プランが、日本版「投資の神様」と呼ばれるようなカリスマ運用者を生み出すことにつながってほしいと切に願っています。

板倉 正幸:ディア・マスターズ代表取締役

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