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TVマン見た「絶滅危惧種と暮す民族」驚く日常(前) インドと中国の境界線「最果ての村」を目指す

東洋経済オンライン / 2024年4月27日 8時0分

それとも、乗客の人数など気にしないほど、運転手が大ざっぱな性格なのかもしれないが。

とにかく、こんな場所に置き去りにされたら命に関わる。ここはヒマラヤ山脈の最奥地なのだから。

バスはさらに進み、道が二股に分かれる場所で一度降り、アタルゴ橋で10人乗りのバンに乗り換えた。

ピンバレー(ピン渓谷)に入ると、眺める景色が変わってきた。山々が高くなり、より険しく、雄大になっていく。頂上部分に、雪が残った標高6000mを超える山々がいくつも見える。

太陽が落ちてくると、谷底に川が流れる渓谷全体に青みがかり、美しい景色が、なぜか「死」を連想させる不気味な景色に変わった。

山肌の巨大な崖が黒みを帯び、圧迫感を与える。

何とも言えないざわつく感情に陥るが、車内のたくましい女性たちを見ると、特に危険を感じている様子もなく余裕の表情をしている。

「じゃあ、大丈夫か」

そうやって、怖気付いた気持ちをのみ込んだ。

やっとの思いでたどり着いた「ゲストハウス」

ムド村に到着した頃には、夜の6時を超えていた。空は薄暗く、夜の様相を呈している。2人でバックパックを背負い、今晩泊まる宿を探し、辺りをうろついた。

気温が下がりダウンジャケットを着ていても寒い。すると遠くに「TARA CAFE」という看板が見えた。なんとなく、ゲストハウスの匂いがする。

「ここ、宿ですか?」

「あーそうだよ。2人?」

真っ黒に日焼けした30代くらいのたくましい、平たい顔の男性がそう答えた。運よく、1軒目で宿を引き当てたようだ。

「今、奥にあるヤギ小屋の上の部屋しか空いてないけどいいかい?」

「はい。大丈夫です」

部屋はカザの宿よりも質素な山小屋であったが、必要最低限のものはすべてそろっていた。2つのベッドと大きなキャンドル、硬いベッドには分厚い敷布団が敷かれ、チベット柄の掛け布団が数枚重ねられている。

さらに、寒くなったとき用の予備の毛布も積み上げられており、電灯はないが、スマホを充電できるコンセントまであった。

部屋の土壁は、乾燥やひび割れを防ぐためにわらを混ぜた粘土の厚造りになっており、そのおかげで暖かく、雪に覆われて、マイナス30度まで気温が下がる冬でも過ごせるようにと設計された、よく考えられた構造だ。

家族のように暖炉を囲み、名物料理に舌鼓

宿の食堂は暖炉を囲むように配置され、まるで家族の食卓のような雰囲気だった。

そこには3人のインド人男性客が座っていた。彼らは、1週間の山登りから戻ってきたばかりだという。

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