「利益の最大化」だけが目的の企業が招く暗い未来 企業が放棄してしまった「共通善」という役割
東洋経済オンライン / 2024年5月2日 11時30分
企業は世界の動向につねに多大な影響を及ぼしてきた。そして企業は、誕生した当初から、共通善(社会全体にとってよいこと)の促進を目的とする組織だった。しかし今、企業はひたすら利益だけを追い求める集団であり、人間味などとは無縁のものであると考えている人は多い。では、企業はどこで、どのように変節してしまったのか? 今回、古代ローマの「ソキエタス」から、現代の「フェイスブック」まで、8つの企業の功罪を通して世界の成り立ち知る、『世界を変えた8つの企業』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。
企業の究極の目的
企業はひたすら利益だけを追い求める集団であり、人間味などとは無縁のものであると考えている人は多い。中には、利益の追求を最優先するのは、そもそも企業の義務だとまで主張する人もいる。しかしどちらも間違っている。
企業は誕生した当初から、共通善(社会全体にとってよいこと)の促進を目的とする組織だった。古代ローマでも、ルネサンス期のフィレンツェでも、エリザベス朝の英国でも、企業は社会に使われるものであり、社会の繁栄を築き、維持するための働きをしてきた。
企業は公共の目的を持った公共の機関であり、国の発展に寄与するものだと見なされているからこそ、国から特別な権利も与えられている。ときどき――あるいはしばしば――この目的から逸脱することがあるとしても、企業の存在意義が共通善を促進する能力にあることはつねに変わらない。
近代経済学の父アダム・スミスも、このことは理解していた。スミスは「見えざる手」を論じた『国富論』のある箇所で(めったに読まれない箇所だが)、万能の資本主義に重要なただし書きをつけ加えている。「見えざる手」も完全無欠ではないのだ。
「生産物の価値が最大限に高まるよう、労働を振り向けることで各人がめざしているのは、自分自身が利益を得ることだけである。このとき各人は、そのほかの多くの場合と同じように、見えざる手に導かれて、自分ではまったく意図していなかった目的の達成に貢献している。各人にそういう意図がないことは必ずしも悪いことではない。自分自身の利益を追求しているときのほうが、意図的に社会の利益を促進しようとするときよりも効果的に社会の利益を促進することが多いからだ」。
この箇所で注目すべきは、ここでいわれていないことにある。すなわち、個人の利益を追求することがいつも共通善の促進につながるとはいっていないのだ。多い、としかいっていない。
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