焦点:バイデン・トランプ両陣営、無党派層獲得で両極端の戦略

ロイター / 2020年9月5日 11時34分

 米大統領選候補者を正式指名する民主・共和両党の党大会は、トランプ大統領の指名受諾演説で幕を閉じた。写真は27日、ホワイトハウス前で受諾演説をするトランプ大統領(2020年 ロイター/Carlos Barria)

[ワシントン 28日 ロイター] - 米大統領選候補者を正式指名する民主・共和両党の党大会は、トランプ大統領の指名受諾演説で幕を閉じた。両陣営とも11月3日の本選に向け、勝敗の鍵を握るほんのわずかな無党派・穏健派層の票を狙う姿勢を鮮明にしたが、最終盤戦に差し掛かってのこの戦略は極めて対照的だ。

トランプ氏は党大会で、テレビのリアリティー番組の元司会者としての才能をいかんなく発揮し、自身の新型コロナウイルス危機対応に失望して離れた支持者の奪還に努めた。27日夜には、民主党候補バイデン前副大統領が大統領になれば米国は「無法」状態になると悲惨な絵を描いて見せた。

この発言から、共和党が今後2カ月間、どのような戦略を取ろうとしているかが見て取れる。米国民18万人の命を奪い、経済活動の手足を縛った新型コロナから争点を転じ、街頭の騒乱の責任は民主党に帰する戦略だ。

共和党側は、まるで感染症の危機が収束したかのようにコロナの話題をおおむね控え、危機以前の強い経済状態を有権者に思い起こさせようとした。一方、民主党大会では、バイデン氏は感染拡大に対してトランプ氏の取った行動の責任に焦点を当てた。

米デイトン大の選挙専門家、クリストファー・デビン氏は「両党の党大会は、わが国が今どこにいて、将来どうなる可能性があるのかについて、まったく異なる現実像を示した」と話す。

共和党大会は、トランプ氏を「法と秩序の擁護者」と位置付けた。ここで意識したのは、分断をあおるトランプ氏の扇情的な話術には同意できないものの、人種差別と警察の暴行への抗議活動が何カ月も続いて時に暴力的な光景に発展するのにいら立っている有権者だ。

ウィスコンシン・ミルウォーキー大のキャスリーン・ドラン政治科学教授は「これは自身の岩盤支持層をしっかり押さえ、投票に行かせようとする試みだ」とした上で、「同時に、トランプ氏が『郊外の女性』と呼ぶ、態度を決めていない女性有権者層の一部を引き込む狙いもある」と解説した。

ロイター/イプソスが19―25日に実施した世論調査によると、全米でバイデン氏の支持率はトランプ氏を7ポイント上回り、党大会前とほぼ同じだ。しかし郊外の有権者となると、両者の差が縮小。勝敗を決するこの層でこれまでリードを広げていたバイデン氏にとっては、気になる兆候だ。

鍵を握るとされる郊外女性層は、6月に比べるとトランプ氏に批判的ではなくなっている。この層でのバイデン氏のリードは9ポイントと、6月の同調査の15ポイントから縮まった。

大卒の白人層で見るとバイデン氏のリードは5ポイントで、やはり7月の7ポイント、6月の11ポイントから縮小している。

しかしトランプ氏が郊外の有権者にアピールするため、犯罪取り締まりについて情け容赦ない言葉で断固たるメッセージを出す一方、人種差別の是正を求めるデモ参加者にはほとんど共感を示さないのを見て、黒人有権者はますますバイデン氏を支持する可能性がある。

今回の世論調査では、黒人有権者でのバイデン氏のリードは62ポイントと、7月から6ポイント拡大し、少なくとも過去6カ月間で最大となった。

バージニア大選挙センターのアナリスト、カイル・コンディク氏は、コロナ禍前であれば、トランプ氏のメッセージはもっと強力だっただろうと指摘。「秋になって、今より新型コロナへの注目が薄れているならば、(トランプ氏の手法は)成功するかもしれない。そうなるとは考えにくいが、可能性はある」と語った。

<中道派にアピール>

共和党大会はあらゆる場面でトランプ氏を賞賛するだけでなく、予備選の期間中はおおむね中道派候補として戦ってきたバイデン氏が、結局は党内の極左分子に報いる政策を行うと強調することにも同様に力を注いだ。バイデン氏に傾きそうになっている共和党支持者や、投票先未定の有権者を説得するためだ。

警官による黒人男性ジョージ・フロイドさん殺害に抗議するデモは大半が平和的だが、共和党大会では何人もの発言者が、デモでの犯罪と暴力行為をバイデン氏が黙認していると批判した。

現在はウィスコンシン州で黒人男性ジェーコブ・ブレークさんが警官に背後から銃撃された事件を受け、新たなデモの波が広がっている。

トランプ氏陣営に近い共和党コンサルタント、フォード・オコネル氏は、党大会のプログラムの大半は、分断をあおるトランプ氏のスタイルに「幻滅」しつつも彼を支持する理由を探し続けている有権者を対象にしたものだった、と解説した。

トランプ氏がめったにコロナ禍で苦しむ人々への同情を示さない中、メラニア夫人は慰めの言葉をかけてみせた。またペンス副大統領はバイデン氏について、トランプ氏よりは政治家的な批判を展開し、トランプ氏の毒舌にへきえきしている共和党支持者の心に訴えた可能性がある。

トランプ氏陣営には加わっていない共和党ストラテジストのライアム・ドノバン氏は、ウィスコンシン州のデモによる騒乱は、これまでの他のデモでは見られなかった追い風をトランプ氏に吹かせるかもしれないと指摘する。コロナ禍が収まらず経済的苦境が続く中、「混乱と不透明感はトランプ氏の最良の友」になるという。

<暴力行為も戦略>

バイデン氏も27日、献金者に対する演説で、トランプ氏は混乱を歓迎していると示唆。「暴力行為はトランプ政権、トランプ氏の米国で起こっている」とし、「トランプ氏から見れば、暴力行為は問題ではない。暴力行為は政治的戦略のうちなのだ」と断じた。

コロナ禍に焦点を絞り続けたいバイデン氏にとって、抗議デモは厄介な問題だ。デモ参加者への連帯を示す一方で、同氏も地域社会の破壊は批判し、民主党内の活動家が求める警察部門の予算縮小には支持を示していない。

2012年の大統領選でオバマ前大統領の選挙運営を担当したジム・メッシーナ氏は、共和党がデモを苛烈な言葉で批判するほど、厳しい二極化に歯止めをかけたい無党派層を遠ざける可能性があると指摘。「トランプ氏は右側に寄り過ぎていて、中道派層を獲得し損ねている」との見方を示した。

民主党大会では、コロナ禍とトランプ氏による郵便投票制限によって投票率が下がるという懸念が、同党に根深くあることも鮮明になった。

オバマ前大統領のミシェル夫人は国民に、「私たちの命がかかっている以上、バイデン氏に投票しましょう」と呼び掛けた。

(James Oliphant記者)

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