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情報BOX:「銃器大国」米国、銃規制強化が難しい理由

ロイター / 2021年4月15日 16時21分

 バイデン米統領は4月8日、国内の相次ぐ銃撃事件に歯止めをかけるため、限定的な内容の対策案を発表した。写真はカリフォルニア州オーシャンサイドの銃器店の棚(2021年 ロイター/Bing Guan)

[ワシントン 14日 ロイター] - バイデン米統領は4月8日、国内の相次ぐ銃撃事件に歯止めをかけるため、限定的な内容の対策案を発表した。もっと野心的な対策を求める国民の声も増えているが、そうすると連邦議会での成立はもっと難しくなるだろう。

米国の銃暴力について事実関係をまとめた。

◎米国の銃所有者数

ジュネーブの調査機関スモール・アームズ・サーベイによると、米国で流通している銃器は100人当たり約121丁。世界でもずば抜けて市民の銃所有率が高い。

ただ、所有率は全米的には低下しつつある。米ランド研究所によると、2016年に米国で銃器を所有していたのは3世帯に1世帯で、1990年の2世帯に1世帯近くからは減少した。所有率は州によって大きく異なる。モンタナ州では66%の世帯が所有しているが、ニュージャージー州ではわずか8%だ。

◎銃器に関する法律

合衆国憲法修正第2条は「人民が武器を持つ権利」を正式に記している。連邦最高裁はこれをもとに、個人が自衛のため自分の家に拳銃などを備えることは認められるとの判断を示してきた。現在の保守派寄りの最高裁は近く、銃所持者が家の外でも銃を携行する権利があるかについて判断を下す可能性がある。

連邦政府は大方の銃購入者には犯罪歴調査を義務付けており、完全自動式の機関銃や発射音が消されるサイレンサー銃の所有は厳しく規制している。

それ以外のほとんどの銃関連法は各州が決めており、州によって規制策は大きく異なる。

民主党が支配的な州の多くは近年、銃規制を強化している。

例えばカリフォルニア州は、軍隊式の半自動式「アサルト・ウェポン(対人殺傷用武器)」や大容量弾倉の所有を禁止。危険と判断した人から銃器を取り上げることを当局に認める、「レッドフラッグ(危険信号)法」まである。装塡(そうてん)した銃器を公共の場で目に見える形で携行する「オープンキャリー」行為も禁止。装塡した武器を人目に見えないように携行する際には許可が必要だ。

これに対し、アイダホ州、ケンタッキー州、ワイオミング州などでは、銃に関する法律がより緩い。

銃規制を求める全米組織ギフォーズ・ロー・センターによると、国内で銃関連法が最も緩いのはミシシッピ州。州民はこれみよがしに見える形でも隠した形でも、装塡済みの武器携行の許可が必要ない。「アサルト・ウェポン」や大容量弾倉の販売も合法化されている。購入者は身元調査で待たされることなく、すぐに銃を入手できるし、レッドフラッグ法もない。

ミシシッピ州などの28州には「スタンド・ユア・グラウンド法(正当防衛法)」もあり、「身の危険」を感じた際に殺傷武器を使用することが容認されている。

◎こうした現状がもたらす影響

専門家によると、米国の人々が他の文化圏に比べて必ずしも暴力的なわけではないが、口論などが人殺しに発展する確率はずっと高い。

アイオワ大学の犯罪学教授であるマーク・バーグ氏によると、米国は暴力事件の発生率は他の国々と似たり寄ったりだが、銃の一般への普及のため殺人発生率は他の国々より高い。

米疾病対策センター(CDC)によると、18年の米国での死因は銃が3万9740人で、自動車事故の死者数並みだった。死因が銃となる10件に6件は自殺だった。

◎銃法制は変わるか

銃所有権は、米国の政治で最も意見が分かれる問題の1つだ。支持派は銃器が護身や狩猟や射撃場での重要な道具であると同時に、個人の権利の強力な象徴と考える。批判派は、米国の寛容なアプローチが毎年何万人もの死を招いていると訴える。

世間の注目を集める銃乱射事件が頻発していることで、規制強化を求める世論は高まっている。ロイター/イプソスの世論調査によると、大半の米国民は銃規制の強化を支持している。しかし連邦政府はここ何年か、問題解決をほとんど進めていない。

主に農村部から成り、銃所持率が高く、人口の少ない州が、連邦上院で規模に不釣り合いな影響力を握っていることが一因だ。定数100議席の上院では、大半の法案が採決を進めるのに絶対多数の60人以上の賛成を必要とする。

民主党が主導する連邦下院は3月、犯罪歴調査を強化する法案を可決した。しかし上院では与野党の議席が伯仲しており、可決はかなり難しい。

議会の動きが行き詰まっても、大統領が自分で動いてきた例はある。

18年のラスベガス銃乱射事件が58人の犠牲を出した後、当時のトランプ大統領は半自動ライフルを自動ライフルと同様に速射できるようにする改造装置「バンプストック」の禁止措置を司法省に指示し、同省は禁止措置を取った。ただ、共和党のトランプ氏は、精神疾患のある人による銃の購入を容易にした。

民主党のバイデン氏は、別々に買い集めた部品などを自分で組み立てて作る「ゴーストガン(幽霊銃)」について、規制強化を目指している。ゴーストガンは現状、販売時に追跡用のシリアルナンバーや犯罪歴調査の対象から抜け落ちる。バイデン氏は各州がレッドフラッグ法を導入しやすくすることも狙っている。

◎政治状況に変化か

政治的な状況は変わってきているかもしれない。全米ライフル協会(NRA)は何十年も、銃所有権を推進するワシントンのロビー団体の中で最も強い影響力を誇ってきたが、近年は内紛で足元がぐらつき、最近にはニューヨーク州での訴訟を回避する狙いで破産を申請している。

「センター・フォー・レスポンシブ・ポリティクス」によると、NRAは昨年の大統領選と議会選の候補者に計3000万ドルを献金。この金額は16年の5500万ドルから減少している。

その一方で、小学校での銃乱射事件の後に母親たちが始めた「マムズ・ディマンド・アクション」など規制強化を訴える団体は、過去10年間でロビー活動費を増やしている。それでも銃所有権の擁護団体すべての総額には及ばない。

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