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伊藤忠が必須化した男性育休取得 「夫婦同時にとるか」「交代か」大議論 「交代」圧倒的に多かった理由は? 専門家に聞く(1)

J-CASTニュース / 2024年3月7日 18時16分

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育休を取る男性が増えている(写真はイメージ)

伊藤忠商事が男性社員の育児休業取得を必須化して話題になるなど、男性の育休取得が加速化している。

そんななか、夫の育休は妻と同時に取ったほうがいいか、交代でとったほうがいいかの議論が起こっているが、働く主婦・主夫層のホンネ調査機関「しゅふJOB総研」(東京都新宿区)が2024年2月29日に発表した調査「男性の育休取得が必要な時期はいつ?」によると、「夫婦交代で育休をとる」が半数に達し、「同時にとる」の2倍になった。

いったいなぜ交代でとったほうがいいのだろうか。専門家に聞くと――。

伊藤忠「必須化で職場に遠慮するハードルをなくす」

伊藤忠商事は2024年2月28日、子どもが生まれた男性社員の育児休業取得を4月から必須化にすると発表した。

同社の公式サイト「雇用・福利厚生」などによると、配偶者の出産から1年以内に5日以上を取得させる。

同社の男性社員の育休取得率(2022年度)は52%。前年度の34%から一気に上がったものの、女性社員の100%とは大きな開きがあり、「職場に迷惑をかけないかと気にして取得をためらう社員がいるため、必須化によってハードルをなくす」ことをねらっている。

厚生労働省によると、最新の男性の平均育休取得率は17.1%(2022年度)と過去最高になった。伊藤忠商事の52%はその3倍近い高水準になるが、まだまだ足りないというわけだ。

さて、しゅふJOB総研の調査(2024年1月17日~24日)は、就労志向のある主婦層589人が対象。まず、男性の育休取得が必要な時期を聞くと、「生後8週間以内」(58.1%)が6割近くのダントツとなった【図表1】。

次いで、最適の取得期間を聞くと、「3か月以上」(40.5%)が4割を占めた。2年前の2022年の調査では、「3か月以上」と答えた人は32.3%だったから、女性の間でも男性育休の必要性がかなり浸透していることがわかる【図表2】。

続いて、育休取得の仕方で最も望ましいものを聞くと、「夫婦が交代で育休を取得する」(49.2%)が約5割のトップ、2位の「夫婦が同時に取得する」(24.6%)に2倍の差をつけた【図表3】。

「同時」「交代」ともに、夫の家事育児能力に不安

いったい、なぜ「交代で取る」方法の支持者が妻側に多いのだろうか。フリーコメントでは「同時か」「交代か」で賛否が分かれた。

まず、夫婦同時にとったほうがいいという意見はこうだ。

「きちんと子育て家事をしてくれるのであればぜひ! ただ、何も出来ないのであれば邪魔だと思います。一緒にとって、相談しながら子育てするのがよいですね」(50代:今は働いていない)
「夫側に育休が休暇ではなく、仕事はお休みして代わりに子育てをするという認識がある前提で、夜中に授乳などで寝られない妻のことを考えると、同時に取って一人当たりの負担を少しでも減らすことが大切」(30代:パート/アルバイト)
「第一子であれば、同時に取得することで『子どものいる生活のリズム』が把握しやすい。その際に非協力的な夫が非難されることがあるが、そもそも家事能力の差が大きい場合もあるかと思う」(40代:派遣社員)
「産後の女性の身体は思った以上にダメージが大きく、産後1か月はゆっくり安静にしたい。そのためには夫も育児休暇を取り、家事をしてもらいたい」(30代:パート/アルバイト)
「生後半年までは夫婦ふたりで育児をするほうがよいと思う。お母さんの負担が大きいことに変わりはないが、お父さんが妻の負担軽減と妻の社会復帰に対して、育児の大変さを身にしみてわかるよい機会になると思う」(40代:今は働いていない)
「産後母親の体力が低下しているため、家事をいつも通りやることは難しい。兄姉がいればなおさら忙しく、回復に努めることはできない。そのため、父親にも自宅にいてもらい、一緒にサポートしつつ子育てにも参加できる環境が必要」(40代:パート/アルバイト)

こういった案配で、夫の育児家事能力に不安があることに加え、特に産後の大変な時期に夫のサポートを求める意見が目立った。

一方、交代でとったほうがいいとする意見はこうだ。

「夫が少しだけ家事の手伝いをして、大変さをアピールしたり、他の人にはやっています感を出したりするのは非常に迷惑で、よけいに出産後の女性の負担が増えるだけ。交代で負担を平等にしたほうがよい」(50代:今は働いていない)
「女性ばかりが育休を取得する時の肩身の狭さを味わうことのないように、男性にも同じ立場で考えて取得してほしい」(40代:今は働いていない)
「双子や多子世帯は特に、母の大変さを父にも分かってもらうために育休取得させるのが望ましいと思う」(40代:パート/アルバイト)

やはり夫の育児家事能力に不安があり、「取るだけ育休」でサボることへの不信感が根強いようだ。

そのうえで、次のような「夫婦公平の育児」を強調する意見も目立った。

「自分は専業主婦だったので、すべて1人でまかなってきましたが、息子たちにはぜひ夫婦で仕事をして、夫婦で協力して子育てをして欲しいと思っています」(50代:パート/アルバイト)
「当時の女性は一人で育児をするのが当たり前のことでしたが、どれだけ大変か、またどれだけ成長したかわかりません。男性も経験したほうがよいと思います」(60代:今は働いていない)
「生まれた子どもによっても、手のかかる子、かからない子の差がすごくあるので、0歳、1歳のころに夫婦で集中してとるもよし、パパは奥さんが職場復帰したら3歳までは週1回午後半休取る、などいろんなパターンでトータルに休む時間が公平になればよいと思う」(50代:パート/アルバイト)
「夫婦の休めるほうが休めるときに交互に休んだらよいと思う。特別な事情がなければ、個人的には2人がかりで育休する必要はないと感じる(双子などは別)」(30代:パート/アルバイト)

キャリアコースから外れる「パピートラック」の心配

J-CASTニュースBiz編集部は、研究顧問として同調査を行い、雇用労働問題に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに話を聞いた。

――男性の育児休業取得率(2022年度)は17.1%と、過去最高となりましたが、女性は80.2%に比べると、まだまだ低いですね。こうした現状について、率直にどう評価しますか。

川上敬太郎さん 長い間一桁だったことを考えると、男性の育休取得率はおおいに進展していると思います。ただ、進み方は決して速いとはいえません。まだまだ課題はあるものの、初めの一歩として固くて分厚かった岩盤に風穴が空いた状態だと言えるのではないでしょうか。

――男性の育児休業取得のスピードが遅いのは、どういう理由からですか。

川上敬太郎さん 男性の育休取得が思うように進まない理由はさまざまあります。男性が育休を取得することが必要だという情報は広がっているものの、「とるだけ育休」が問題になっているように、まだ主体的に育児に携わろうとしている男性が多いとは言えないようです。

また、育休を取得すると他の社員に業務のしわ寄せがいってしまったり、逆に自分の意思に反してサポート的な立場に回されてパピートラック(編集部注:キャリアコースから外されるマミートラックのパパ社員版)に陥ったりするキャリア形成上の問題など、育休取得を敬遠したくなる要因はいろいろありそうです。

<伊藤忠が必須化した男性育休取得 「夫婦同時にとるか」「交代か」大議論 「交代」圧倒的に多かった理由は? 専門家に聞く(2)>に続きます。

(J-CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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