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展望2022:日銀は緩和縮小方向のメッセージを、悪い円安防止で=今井・元首相秘書官

ロイター / 2021年12月24日 8時45分

安倍晋三元首相の秘書官と補佐官を務め、政権の政策決定に関与してきた今井尚哉氏は、ロイターとのインタビューで、日本の金融政策運営について、米欧の利上げや世界的なインフレを背景に悪い円安が進行するリスクがあるとし、これを防ぐために、日銀は金融緩和の縮小方向のメッセージを出す必要がある、との考えを示した。写真は都内の日銀本店。2016年9月撮影(2021年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 22日 ロイター] - 安倍晋三元首相の秘書官と補佐官を務め、政権の政策決定に関与してきた今井尚哉氏は、ロイターとのインタビューで、日本の金融政策運営について、米欧の利上げや世界的なインフレを背景に悪い円安が進行するリスクがあるとし、これを防ぐために、日銀は金融緩和の縮小方向のメッセージを出す必要がある、との考えを示した。

今井氏は現在、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。

緊張関係が続く中国との外交については、2022年が日中国交正常化50周年の節目にあたるため、要人往来(シャトル外交)の復活や脱炭素での協力推進に期待を示した。北京冬季五輪・パラリンピックに日本政府が閣僚を派遣しない場合には説明が必要と指摘した。

<ウクライナ・インフレ>

今井氏は22年の内外経済のリスクとして、ウクライナをめぐる米国とロシアの対立を契機としたインフレ加速を挙げた。「ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟はロシアにとって脅威。プーチン大統領はウクライナに侵攻しないと表明しているものの、米バイデン政権が不人気を理由に外交面ではからずも強めの対応を取らざるを得ない場合、軍事的緊張から天然ガス価格が急騰し、世界的なインフレ要因となるリスクがある」と懸念を示した。

すでに脱炭素の動きが天然ガスなどエネルギー価格の上昇要因になっているとしたうえで、ウクライナ情勢も天然ガス価格を押し上げ「ウクライナ・インフレ」が起こっているとも指摘。ウクライナ情勢が更に緊迫すると「プーチン大統領が天然ガス(の供給)を武器に使うリスクがある」として「(ガス価格上昇に端を発した)コストプッシュインフレが世界的に起こる可能性がある」と警戒感を示した。

<過度の円安警戒、日本国債も安泰とは言えず>

日本経済のリスクとしてインフレによる過度の円安進行を挙げた。世界経済の現状は「需要要因の物価上昇ではなくコストプッシュ型のインフレが進行するスタグフレーション。米国は予定通り利上げを進め欧州も追随するだろう」と述べた。

その一方で日本は補正予算の財源をほぼ新規国債に頼る現状であるため「日銀は資産買い入れの減少(テーパリング)は難しい」と指摘。内外の金融政策の違いによる「金利差から、悪い円安が進むリスクがある」と語った。

このため、日本国債について「大部分が国内保有であるため安全と言われているが、たとえ1%でも海外投資家が強烈に売り浴びせてくれば、その影響はわからない」と懸念を示した。

日銀の金融政策については、急激な円安を防ぐため「金融緩和の出口は時期尚早だが、将来はありうるとのメッセージを出す必要がある」と提言した。

同時に「岸田首相は自身が財政規律派であることを鮮明にすべき」と強調。総額35兆円超となった21年度補正予算について「党内に気を使い過ぎ、過大になっている」と語った。

<五輪閣僚派遣見送りなら、説明必要>

今井氏は国際政治の現状について、米国とロシアは「言論では(批判の応酬で)ヒートアップしながら、いつどこで首脳会談を行い手をにぎるか裏で考えている」とし、日本の対中政策に関しても「表面的な政治力学で外交を行えば、日本がはしごを外され自ら損をする可能性がある」と警告した。

22年は「中国と国交正常化50年の記念すべき年であり、日中の過去を振り返り、(将来の日中関係にとって)どのようなステップにするか、まじめに考えないといけない」と述べた。

北京五輪・パラリンピックには、米国と英国、カナダ、オーストラリアが新疆ウイグル自治区における人権侵害を理由に政府関係者を開会式などに派遣しない「外交的ボイコット」を打ち出しており、日本政府の対応が焦点となっている。

今井氏はフランスのマクロン大統領出席の可能性を否定できないとの見方を示した。そのうえで「日本は日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長、東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の橋本聖子参院議員だけを派遣するのも一つのやり方」としつつ、閣僚など政府高官が「行かないならば、その理由を明言すべき」と話した。

米国などがボイコット理由に挙げる「ウイグルの人権問題は今に始まった問題でない」とし、欧米で人権問題と批判されるテニス選手の消息不明問題も「どこに問題があるのか」と問いかけ、「何を大義にボイコットが必要なのか明確にする必要がある」と強調した。

<日中国交50周年、要人往来・脱炭素協力を>

今井氏は17年の日中国交正常化45周年に当時の安倍首相が決めた日中シャトル外交の復活が必要と説く。「新型コロナの感染拡大がなければ習近平国家主席の訪日は実現し、日中はともにアジアの大国として世界に責任を持たなければならないとのメッセージを世界に対して出すことができた」と強調する。

岸田政権への期待として「脱炭素で全面協力などを目指して欲しい。この分野では米国も中国に協力するので、ここで後れを取ってはいけない」と話した。具体的には「アジアの国々はエネルギーを石炭に依存した構造があり、日本の高効率石炭火力発電技術でインドネシアや中国などで実証実験を行えばよい」と提言した。

*インタビューは12月21日に実施しました。

(竹本能文 編集 橋本浩)

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