村を救った14歳とは…学校を退学した少年が起こした奇跡の実話
ananweb / 2019年8月1日 21時0分
夏休みシーズンへと本格的に突入し、思い出すことのひとつといえば、すべてに好奇心旺盛だった子ども時代。それに比べて、大人になるといろいろなことについブレーキをかけてしまいがち。そこで、そんな大人女子にオススメの映画をご紹介します。それは……。
■ 感動の実話を描いた『風をつかまえた少年』!
【映画、ときどき私】 vol. 249
2001年、アフリカ最貧国のマラウイ。ひどい干ばつに襲われたことによる貧困が原因で、学費が払えなくなった14歳の少年ウィリアムは通学を断念せざるを得なかった。それでも、勉強したいと願うウィリアムは、こっそり通っていた図書館で1冊の本と出会う。
そこで、ウィリアムは風車の存在を知り、独学で風力発電を作ることを思いつく。電気で家族を助けたいという思いを抱くウィリアムだったが、周りからの理解を得ることができずにいた。はたして、自らの手で未来を切り開くことはできるのか……。
「TEDグローバル」への招待をきっかけに世界的に知られることとなり、タイム誌の「世界を変える30人」にも選ばれたこともあるウィリアム・カムクワンバさん。本作はベストセラーの自伝を映画化したものですが、女優のアンジェリーナ・ジョリーさんも「非の打ち所のない作品」と絶賛しています。そこで、さらなる見どころをこちらの方にお話いただきました。
■ 監督・出演を務めたキウェテル・イジョフォーさん!
『それでも夜は明ける』や、まもなく公開の映画『ライオン・キング』で悪役スカーの声を担当するなど、俳優としてさらなる活躍をみせているキウェテルさん。本作では、ウィリアムの父親役として出演するだけでなく、長編監督デビューをはたしています。今回は、完成までの思いや撮影での苦労などについて語っていただきました。
―先日、ウィリアムさんが来日された際に、直接お話をさせていただく機会に恵まれましたが、非常に聡明な印象を受けました。キウェテルさんもウィリアムさんと接するなかで、印象に残っているやりとりや言葉はありましたか?
キウェテルさん
僕が感じたのは、彼はすごく正直で誠実な人であるということ。というのも、この作品が完成して初めて観てもらったとき、彼は感じたことをまっすぐに伝えてくれたからなんだ。映画を観ることで、人生の辛かったときのことを思い出すとも話していたけれど、それはいかに彼が誠実で、エモーショナルな知性を持っていて、洗練された人間なのかということの表れでもあると思うんだ。
彼は僕にとって素晴らしいインスピレーションを与えてくれる存在。そんなふうに自分の気持ちを受け止めながら真実を掘り下げていくことができる人といることは、僕にとっても最高のレッスンとなったよ。
―実際に撮影現場にもいらっしゃったんですか?
キウェテルさん
もちろん現場にも来てくれたよ。そのときは会話の内容よりも彼の人としての姿勢みたいなもののほうが印象に残ったかな。それは、物事に対して希望や好奇心を持つ気持ちであったりもするんだけど、決して軽い意味ではなくて、すごく良いエネルギーを持っていたから僕も助けられたよ。
■ マラウイで気づかされたこととは?
―この物語では、いくつもの感動的な要素が含まれていますが、キウェテルさんが一番惹かれたのはどういった部分ですか?
キウェテルさん
実は原作を読んだときと、実際にマラウイに着いたときの自分のリアクションというのは違っていたんだ。なぜなら、本を読んでいたときに深く心を打たれたのは、彼の言葉でいう“perseverance(やり抜く不屈の力)”。そして、人の役に立つために物を作ったり、行動したりといった具合に、いろいろなものを集めて形にしていく彼の姿に感動したんだ。
でも、彼に会うためにマラウイへ行ってみると、物語と僕の間の“力学”に違うニュアンスが加わっていることに気が付いた。なかでも、ハッとしたのは、ウィリアムが作った風車が目に入ってきた瞬間。スピリチュアルな感覚に近いかもしれないけれど、彼が経験してきたものと深くつながっているように感じたんだ。それに彼の風車は、信じる気持ちや希望、知性、教育といったもののシンボルでもあったから、見たときはすごく心動かされたよ。
―そういった思いを作品に反映した部分はありますか?
キウェテルさん
今回僕が受け取った気持ちは、グレワムクルというスピリチュアルなダンサーたちに表現してもらうことにしたんだ。そして、文化に深く影響を与えるということはどういうことなのか、どうやってそこに希望やインスピレーションをもたらすことができるのか、といった考えにつなげていったんだよ。
―実際に現地に行ったからこそ感じることも多かったんですね。とはいえ、劇中に描かれているようにマラウイの厳しい現状も目の当たりにされた部分はあったと思いますが、撮影中に苦労したことはなかったでしょうか?
キウェテルさん
一番大変だったのは、インフラがなかったことくらい。あとは、マラウイでこの規模の撮影は初めてだったこともあり、今回はケニアや南アフリカ、ブラジル、イギリスといった国外から機材を持ち込んだり、スタッフを連れていかなければならなかったというのもあったかな。
とはいえ、マラウイの人にもたくさん参加してもらうことができたから、マラウイに根差した空気感はあったし、そのうえでインターナショナルな現場になったのはよかったことだと思うよ。だからこそ、参加してくれた全員が「この少年の物語をみんなに届けたい!」というワクワクした気持ちを持つことができたんだ。
■ 現地の人たちがリアルな空間を作ってくれた
―では、マラウイでなければ撮れなかったものもありましたか?
キウェテルさん
もちろん、マラウイでなければ不可能だったシーンもたくさんあったよ。例えば、大統領が村にやってくるシーンでは、エキストラが1000人くらいいたけれど、マラウイの方たちが参加してくれなければ生まれなかった場面と言えるよね。
実際にあの当時の経験をしている人も大勢参加してくれただけに、群衆のリアクションだけでなく、歌や踊りもすごくリアルなものになったよ。もし、ほかの国で撮影していたとしたら、そういった部分はなくなっていたんじゃないかな。だからこそ、マラウイで撮ることが必要だったんだ。
―ウィリアムさんは風車を作る過程でつらいこともあったそうですが、そのとき心の支えになっていたのは、「自分の問題は誰かの助けを待つのではなく、自分で解決するもの」という考えのおばあさまの存在だとうかがいました。キウェテルさんも初長編作品を完成させるまでに10年間かかっています。その間、支えになっていたものは何ですか?
キウェテルさん
面白い質問だなぁ、どうだろう。いま考えてみると、ウィリアム本人と彼が達成したことから受けたインスピレーション。そして、こういった物語をこういう形で綴った映画を自分がいままで観たことがなかったという思いかもしれないね。
というのも、若いアフリカの少年の物語をユニークな形で描いた映画というのは、もっとあるべきだと感じているからなんだ。そういった現状を変えるべきだと思っていたし、僕はニュアンスの効いた物語としてたくさんの観客に響く作品を届ける自信もあったからね。あとは、作り始めたら参加してくれたみんなが楽しんでくれて、映画自体が自然と動力を持ち始めたんだけど、そういうことも支えになっていたんじゃないかな。
■ 人生で最も豊かでマジカルな瞬間を味わえた
―とはいえ、厳しい出来事もあったのではないですか?
キウェテルさん
「製作費がちゃんと集まるだろうか」とか「マラウイで実際に撮影ができるのだろうか」といった不安も当然あったし、それはチャレンジでもあったよね。
あとは、さっき話に出たダンサーのグレワムクルも秘密の団体だし、会うのもなかなか難しいほどの人たちだから出演は無理だと思っていたんだ。実際、ロケハンに行くたびに「いま村にはいません」と言われて何年も会えない状態が続いていたから。それでもある日、僕と数人だけが村に招待されたことがあって、そのときに彼らが僕たちのためだけにパフォーマンスを披露してくれたことがあったんだ。
そんなふうに、自分たちが描きたいものを撮れないんじゃないかと思っていても、パッと扉が開いて、想像していた以上に素晴らしい体験をすることができる瞬間というのがあるものなんだよね。そのときは何世代にも渡って受け継がれてきたさまざまな文化的な踊りを全部見せてくれたのだけど、僕の人生の中でも最も豊かでマジカルな瞬間のひとつだったと言えるよ。だから、人生ってそういうものなんじゃないかな。
―それはウィリアムさんも同じかもしれませんね。
キウェテルさん
彼も自分の目の前の問題を解決しようと始めたことが、村全体を救うことにまでつながっていくんだけど、確かにそれが人生の摂理なのかもしれないね。
―本作からは大人になっても新しいことを学ぶこと、そして挑戦することの大切さを教えられると思うので、ぜひananweb読者へ向けて伝えたい思いをメッセージとしてお願いします。
キウェテルさん
まさにその通りだけど、付け加えるなら教育や不屈の努力、家族の絆、ルーツ、歴史といったものについても考えてもらえたらいいなと思っているよ。そういったところから、人間は進化をする能力をいかに持っているのかというのを感じられるものだから。
つまり「僕たちは前に進むために過去を切り捨てる必要はない」とも言えるし、「自分の愛する伝統的な過去を損なうことなく、新しい道を見つけられるはずだ」という意味でもあるよね。だから、そのバランスをいかに見つけられるかが大切だと思うよ。
僕は文化的な自分のルーツを断絶せずに、新しい時代に進んでいけると思っているし、僕たちの過去というのはこれからの未来の一部になっていいと信じているんだ。そんなふうに僕が感じたテーマというのを観客のみなさんにも感じてもらえたうれしいね。
■ 自分を信じて進めば道は開けるもの!
困難に見舞われたとき、「自分ひとりの力では何も変えることはできない」と感じてしまうことはあるけれど、14歳の少年がたったひとりで世界を変える瞬間を目撃すれば、逃げていただけの自分に気づかされるはず。この夏は、自分にしかできないことに挑戦してみては?
■ 風を感じる予告編はこちら!
■ 作品情報
『風をつかまえた少年』
8月2日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次公開
配給:ロングライド
© 2018 BOY WHO LTD / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE / PARTICIPANT MEDIA, LLC
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