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自分の健康管理をもっと便利に簡単に! 前橋で見た進化する医療系スタートアップの最新テクノロジー

ASCII.jp / 2024年3月10日 10時0分

 群馬県・前橋市で開催された「UPDATE EARTH 2024 ミライMATSURI@前橋」。会場の日本トーターグリーンドーム前橋では、表彰式やパネルトークなどのほか、スタートアップを中心とした77の企業がブースを出展。革新的なテクノロジーや製品が多く披露された。その中から本記事では主に医療系のテクノロジーを中心に見ていく。

■自分の「菌を見る」ことで口腔疾患の意識を改善 ■世界の口腔衛生の問題の解決に繋げたい

 今回の会場で、特に多くの人を集めていたのが、医療関連のブースだった。

 その中でも、株式会社mil-kin(https://www.mil-kin.com/)は肉眼では見ることができない⼝腔細菌の「⾒える化」を実現し、世界の口腔衛生の向上を図る企業。口腔疾患を持つ人は世界に35億人いるといわれているが、その意識を変えるツールとなるのが、スマートフォンを活用した携帯形微⽣物観察器「⾒る菌」だ。

mil-kin
携帯形微⽣物観察器「見る菌」。2つのレンズを搭載した本体にスマホスタンドを設置し、スマホを載せて観察する

 約450gと軽量・小型の本体にスマートフォンを接続するだけで1000倍の光学倍率によって1µm以上を観察できる、いわゆる顕微鏡で、動画や静⽌画をデジタル記録することも可能。口腔内の細菌を実際に自分で見ることによって、個々人の⼝腔衛⽣習慣を改善し、⼝腔疾患やそれによって引き起こされる全⾝疾患の予防と管理を目指している。

mil-kin
本体は軽量で電池で駆動するため、簡単に持ち運び可能だ

 歯間ブラシや綿棒で採ったプラーク(⻭の表⾯に付着している細菌の塊)をカバーグラスに載せるとスマホ画面に多くの細菌が映し出される。うごめく菌を実際に見ると、「こんなにいるのか!」と驚かされる。自分の菌を目で見れば、歯磨きなど口腔ケアへの意識は確実に高まることだろう。

■AIが呼吸を見守って、心肺の急変を事前に予想 ■救命率を高めることができる

 株式会社モーリス(https://mori2.co.jp/)は、呼吸・心拍・体動をリアルタイムで計測し、急変(心肺停止)を事前に予測するバイタルデータ計測センサー「SuuHaa」を展示していた。胴体に巻き付けるベルト形状のセンサーでデータを測定して、クラウド上に保存。測定したデータをAIが常に見守っており、異常を感じた時は、スマートフォンにアラームを鳴らす仕組みだ。

SuuHaa
圧電フィルムを搭載したベルトが伸縮することにより呼吸や心拍を計測する「SuuHaa」

 データの変化が測定された場合は、急変(心肺停止)を約7時間前に予想することができ、救命率を高めることができる。また、睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング、睡眠状態(質)のモニタリングも可能だという。

 同社代表取締役の毛利公一氏は、自発呼吸を困難とする呼吸及び四肢完全麻痺障がいを経験しており、寝たきりの状態で電動車いすの生活となった後、このセンサーを開発。人工呼吸器を使用する人々は睡眠時に呼吸が外れる不安が絶えないことから、安心・安全・快適な睡眠の実現を目指したいという。

 今後は、呼吸器を使用する重度障がい者や四肢麻痺障がい者の遠隔見守りに加え、睡眠時無呼吸症候群患者の睡眠見守り、独居高齢者の遠隔見守り、乳幼児の突然死症候群の遠隔見守り、さらなる広がりとして、居眠り運転事故や熱中症の予防なども視野に入れているそうだ。

■がん治療特有の日々の食事や生活上の注意点など ■自宅生活をサポートしてくれるスマホアプリ

 日本の死亡原因1位のがんに関する新しいテクノロジーを展示するブースも目立った。

 株式会社DeaLiveが紹介していたのは、がん治療における副作用予測と症状管理、栄養摂取をサポートするスマホアプリ「All my Life」(https://allmylife-jp.com/)。がんの種類や使用する抗がん剤、個⼈の特性、病歴などから個々のヘルスケアモデルを構築し、一人ひとりのデータに基づいたサポートと専門家への相談を可能とする。

All my Life
がん治療の「日々の計画」と「先回りした対策」を立てることを可能とするスマホアプリ「All my Life」

 自宅から外来で治療を続けるがん患者数は増加の傾向にあり、食事や日々の生活のコントロールは患者自身や家族に任されていることから、がん治療特有の対策と食事の工夫を知ることは治療を続ける上でも有効だ。

 このアプリでは、日々の食事や体重変化などの症状を簡単に記録してカロリーの過不足や体の状態を可視化するほか、日々のデータと専門家への相談結果に基づいて個々の副作用リスクの予測と対策を提案。医師に相談しにくい生活に関することについても専門家がサポートしてくれるので、患者はもちろん、その家族がするべき準備や対処もスムーズになる。

■涙を利用した最新のがん検出方法とは? ■神戸大学発ベンチャーの技術

 「涙で乳がん検出」と大きく掲示された株式会社TearEXO(https://tearexo.jp/)のブースにも、多くの人が足を止めていた。「涙は悲しみの象徴ではなく健康を管理するためのもの」という、従来の常識を覆す健康革命によって、新しい方法でのQOL向上に寄与するベンチャー企業だ。

TearEXO
涙で乳がんを検出するキット(左)。涙を染み込ませたろ紙片をエクソソーム回収溶液(右)に浸して涙に含まれるエクソソームを回収し、自動分析装置で分析する

 日本人女性の約9人に1人が生涯で患うといわれる乳がんは、早期発見により適切な治療が行なわれれば、良好な経過が期待できるが、検診の受診率は高くない。そこで、病院に行かなくても自分でがんリスクを管理できる新たながん検出法があれば、検診精度と検査方法を改善できるのではないかと考え、開発に着手した。

 検査方法は、「シルマー試験紙」(小さくて薄い短冊状のろ紙片)を目尻に置き、数分目を閉じて涙を染み込ませるだけ。このろ紙片をラボの自動分析装置にセットすると、あらゆる細胞から放出され、がん細胞の増殖・転移にも関与する約100nmの「エクソソーム(細胞外小胞)」が検出される。

 この方法は「TearExo法」と呼ばれ、ラボでの分析は約30分程度で完了。自分で涙を採取し、最終的に検査機関に送ってもらうようなシステムが確立されれば、病院に行く必要もなくなる。「面倒」「時間がない」「マンモグラフィ検査は痛い」など、これまでさまざまな理由で検診から遠ざかっていた女性も、これなら痛みもなく、時間もかからず、ストレスなく検査を受けられそうだ。

 「TearExo法」は今後、薬物療法の効果、術後の管理、再発リスクのチェックなどにも活用できる可能性が高いという。「早期に乳がんを発見して、シームレスに専門医・治療に連携する」というミッションを掲げると同時に、乳がんの罹患は40代から多くなることから「働き盛りの女性が活躍する機会を守りたい」との思いに触れたことも印象的だった。

 

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