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『スパイダーマン:スパイダーバース』が全てを変えた!CGと手描きを両立させた『野生の島のロズ』誕生秘話

シネマトゥデイ 映画情報 / 2025年2月8日 6時15分

 ああ、それはその通りです。その二つがうまく機能するようにするため、本作では背景と同様、全ての動物たちに手描きの表層を持たせました。なので、この映画に出てくる全ての動物たちは実際に手描きです。バックグラウンド(背景)、ミッドグラウンド(中間)、フォアグラウンド(前面)という三つの層に分かれていて、フォアグラウンドの動物たちは最も筆遣いが細かく、ミッドグラウンドとバックグラウンドの動物たちはざっくりとした筆遣い。カメラの遠くにいたら実際そう見えるように、あえてディテールを減らしているんです。

 動物たちの手描きの層に関しては、非常に興味深いことがありました。僕たちが見慣れている普通のCG映画では、動物たちの細かな毛、その1本1本を見ることができますよね? スーパーリアリズムですが、どうもリアルには感じられない。なぜなら、動物たちはヘアサロン帰りではないから(笑)。ブローしてもらったばかりみたいなね(笑)。本物の動物たちはある意味、完璧ではありません。この動物たちの手描きの表層は、全体に興味深い効果をもたらしました。そういうCG的なディテールを持っていないがゆえに、それ独自の在り方で、よりリアルに感じられるのです。とても印象派的なルックが不思議なことによりリアルに見えるというのは、僕たち全員にとって驚きでした。

 映画のオープニングで手描きの表層を持っていないのは、ロズだけです。彼女だけに従来のCGの表層を与えることで、彼女がこの世界には属していないという感覚を与えたかったからです。そしてロズのビジュアルには30の異なるバージョンがあり、物語が進むにつれて、彼女にはへこみができ、傷がつき、こけも生え、どんどん手描きになっていきます。そうして映画の中盤までには、彼女も他の動物と同様に100%手描きの表層になります。そうすることで、彼女がこの島の住人になったことを示したかったんです。

Q:野生に戻っていくロズはまるで『天空の城ラピュタ』のロボット兵のようでした。『リロ&スティッチ』では『となりのトトロ』、『ヒックとドラゴン』では『魔女の宅急便』と、宮崎駿監督の作品がインスピレーションの一つになっているとよくおっしゃっていますよね。

 その通りです。そして、あまり話せていないけれど『紅の豚』もそうなんです。(※感極まった表情で)ああ! あの映画にはもうものすごく興奮させられます。素晴らしい瞬間がたくさんあり、考えただけで鳥肌が! ものすごい観察力によって美しく描写され、テンポが計算されており、宮崎監督はストーリーテラーとして、異なるものに完璧なタイミングで光を当てる力がすごい。飛行機が着水する際の水の抵抗、空へ浮き上がるのにどれだけのエネルギーが必要なのか、そしていよいよ水から離れたらどれだけの自由を感じるのかが、手に取るようにわかります。彼はそんな風に“触知できる”ようにするのがすごいのですが、映画作りとはまさにそうすることなんだと思います。

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