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理学療法士になる予定が演技の道へ… アカデミー賞で注目のユ・テオの素顔 人生を変えた“恩師の一言”とは

CREA WEB / 2024年3月9日 17時0分


Copyright 2022 © Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved

 12歳の頃に韓国からカナダに移住したノラ(グレタ・リー)には淡い恋心を抱いていたヘソン(ユ・テオ)という存在があった。それから24年……。ふたりがニューヨークで再開する7日間を描いた映画『パスト ライブス/再会』が、アカデミー賞で作品賞、脚本賞の2部門にノミネートされ注目を集めている。

 本作は、A24と韓国CJ ENM共同製作し、韓国系カナダ人のセリーヌ・ソンが初めてメガホンをとった。幼い頃に韓国からカナダに渡り、大学で心理学を専攻した後に、劇作家をしてきた彼女の自伝的な作品となっている。2月にも、彼女は韓国系監督としては初めて全米監督協会賞で新人賞を受賞したばかりだ。

 映画の中で、幼馴染のヘソンを演じているのが映画『権力に告ぐ』やドラマ『保健教師アン・ウニョン』などに出演してきた俳優のユ・テオである。この役にどのような経緯でたどり着いたのだろうか。

ドイツ出身。韓国を拠点にしたのは30歳目前から


ユ・テオ ©Gareth CattermoleBAFTAGetty Images

「オーディションではまず、数行のセリフが送られてきて、そのセリフを自分なりの解釈で演じたものと、監督がどのようなことを求めているのかを想像して演じたものと、2パターンを自分で撮影して送りました。二週間後に監督のセリーヌから連絡があり、ZOOMで直接話すことになりました。普段、そのような監督とのセッションは30分とか一時間くらいで終わることが多いんですが、このときは3時間も監督とのセッションが続きました。というのも、脚本の全部のセリフを、いろんなパターンで読むことになったんですね。緊張はしましたけど、手ごたえを感じました。その一週間後にヘソン役に決まったよという朗報をいただきました」

 ユ・テオはドイツで生まれ、高校卒業後にアメリカやイギリスに渡り、俳優となった。2006年からは韓国に移住して韓国の作品でも活躍している。彼が俳優になるきっかけはどんなものだったのだろう。


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「幼い頃は、アートやパフォーミングには縁のない環境で育ちました。どちらかというと、スポーツに熱中していて、バスケをやっていました。ただ、怪我をしてしまって、その後の進路を考えたときに、当初は理学療法士になりたいと考えていたんです。ただ、大学に入るまでの間に、スポーツとはまったく違った世界に触れたいと思って、ニューヨークのパフォーミング・アーツや映画の学校を探しました。

 そして、自分の好きな俳優が講師をしているリーストラスバーグ演劇学校に入ることになりました。そこで学び始めて、2週間が経った頃、演じるということはスポーツをしているときの高揚感に近いなと思ったんです。バスケのコートやサッカーのフィールドもステージなようなもので、そこでうまく自分を見せたら拍手を送ってもらえる。その高揚感が好きで自分はスポーツをしていたんだって気付いたんですね。

 ただ、学校が終わったら、理学療法士になるつもりだと学校の先生に告げたところ、彼女から『あなたはパフォーマーに向いている』と言ってもらって、マスタークラスに進むことになりました。彼女がくれた自信があったからこそこの道に進めたし、俳優という職業に“縁”があったのかなと思いますね」

 この“縁”というのは、『パスト ライブス/再会』の中でも「イニョン」として登場する。映画の中では、アジア的な概念として重要な意味を持っている。

韓国俳優としてのオファーがなかった


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「実は、監督のセリーヌがヘソン役のオーディションをしている中で、最後に会った候補者が僕だったというんですね。というのも、僕は韓国で活動し始めたのも2006年からですし、あまり韓国国内では、“韓国人俳優”とは見られていないんです。なので、ヘソンの役のオーディションでも声がかからなかったんですね。でも、韓国系アメリカ人の僕のマネージャーが、アメリカサイドから声をかけてもらったのをきっかけに、僕もオーディションを受けることができました。最後の最後で、こんな風にこの映画に引き合わせてもらったということも、“イニョン”だなと感じています」


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 彼の経歴を聞いていると、韓国で生まれ育って、初めてニューヨークに行くヘソンよりも、むしろ韓国からカナダ、ニューヨークに渡って暮らすノラの方に近いのかもしれない。

「役を与えられたら、まずそのキャラクターと自分の共通点と相違点を探します。今回のヘソンでいうと、感情をあまり表に出さずに抑えてしまうというところが韓国の文化としてあって、そこが自分にもあると思ったんです。僕自身は、韓国に住み始めて長いというわけではないんですが、世界中を転々としてきた中で、アウトサイダーであるということは感じてきました。文化に溶け込んだと思っても、やっぱりどこか受け入れられていないんだなと思う感覚というのは、常に抱いてきました。だから、ニューヨークにひとりでやってきたヘソンの感覚は理解できました」

 ユ・テオの演技のアプローチとしては、共通点や相違点を探した後に、それをどのように言葉やボディランゲージで表していくのかということがあるという。

「自分の感情を、どのように伝えるか、そのために韓国語のスピーチコーチの方と一緒に探りながら演じました。言葉と同様に大切なのが、ボディランゲージですね。ヘソンには、内気で抑制された性格があるので、それをどう表現するかを考えました。そのヒントになったのは、少年時代のヘソンを演じたイ・スミンさんの演技にありました。彼は、いつも体にぴったり腕をくっつけていて、大きな動作を見せません。それがヘソンという人物を表しているなと感じたので、大人になったヘソンも、腕を体から話さないように演じました」

「男らしくあること」の意味を再定義できるようになった


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 このような、抑制されたヘソンという男性像は、新たな男性像でもある。ユ・テオはこの映画の公式プレスシートのインタビューでも、「ジョンやヘソンのような男性は、繊細であることや、自分の弱さを見せることには全く問題を感じません。または優しい面を見せることも。恋愛関係において、男らしくあることの意味を僕らが再定義できるようになった、というのは、すごく美しいことだと思います。それが何を意味するにしても、女性軽視することなく、過剰にマスキュリンであることもなく」と語っている。

「僕はいろんな国で演じてきたこともあって、精神的面でも感情的な面でも、多様性が認められてきているなということは実感していました。メディアを見ていても、Z世代などが出てきたこともあり、様々な感性が受け入れられる社会が出来上がってきたなと感じるんですね。やっぱり1980年代、90年代っていうのは、映画の中の男性というのは一面的に描かれていました。でも、今は社会的にというよりも、感情的な部分でも、男性の多面的な部分が映画の中で見られるようになったと実感しています。

 しかも以前の映画では、男性監督が男性を描いていることが多かったですよね。でも、今回の『パスト ライブス/再会』では、女性監督であるセリーヌが男性の感性を描いているということもあり、男性の中にもある繊細さを深く理解して表現してくれたのではないかと思います。

 だから僕もヘソンを演じる上で、繊細な部分をさらけ出すことができたのではないかと思います」

ユ・テオ

1981年生まれ、ドイツ・ケルン出身。高校を卒業後、ニューヨークのリーストラスバーグ演劇学校で演技を学び、ロンドンの王立演劇学校の集中コースに通う。ニューヨークとベルリンで独立系の映画や演劇作品に出演してキャリアを重ね、2009年よりソウルに拠点を移す。近年の出演作に、「保健教師アン・ウニョン」(20/Netflix)、『担保』(20)、『別れる決心』(22)、「その恋、断固お断りします」(23/Netflix)など。

文=西森路代

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