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「『ちひろさん』の谷口役はいちばん 俺がやらなそうな役が来たなと」 若葉竜也が語る作品作りのこだわり

CREA WEB / 2024年3月8日 17時0分


若葉竜也さん。

「CREA WEB」では19年、21年に続いて、三度目の登場となる若葉竜也。『街の上で』以来、2作目の主演作となる『ペナルティループ』の公開を控え、今や常連である今泉力哉監督作など、前回の登場から出演したすべての映画作品を振り返りつつ、自身の演技論や作品作りへのこだわりについて語ってもらいました。


●初日からアクセルベタ踏みだった『前科者』


©2023『ペナルティループ』FILM PARTNERS

――22年、最初に公開されたのが『前科者』。森田 剛さん演じる元受刑者の前に現れる謎の男・実役を演じ、久しぶりに金髪姿でモンスター的な若葉さんの演技が堪能できました。

 以前から興味があった岸善幸監督からのオファーでした。じつは脚本には「白髪の男」って書いてあったんです。でも、読み進めていくうちに、「角刈りが伸びたぐらいの方がいいんじゃないか?」と思い、岸監督と会って、最初に話したのが髪型の話でした。

 ずっとドキュメンタリーをやってきた監督さんから「白髪の青年を見たことがある」と言われる説得力は、僕らの考えの比になりませんでした。それで分かりやすい金髪や白髪ではなくて、しっかり異様さがあるところで、まとまった感じです。ビジュアルから役に入ったという、かなり珍しい作品ではありましたね。

――『愛がなんだ』で演じたナカハラのような、片思いする優男の役が増えていましたが、どこかで振り切った役を演じられない葛藤みたいなものはありました?

 多分、僕が振り切れない役が続いていて、どこか欲求不満になっていそうだから、キャスティングの方が「一回振り切らせてみよう」と思って、話をくれたんじゃないかと(笑)。だから、とても嬉しかったです。

 芝居でいったら、あれは発散なんで、初日からアクセルベタ踏みでした。岸監督の現場はテストもなく、本番から入るんですが、それをやっても大丈夫な現場だと分かっていたし、主演の有村架純さんは「ドラマ版」から同じ役をやっていることも知っていたので、それまでに登場してきたキャラクターの上を行くぐらいアクセル踏んでやろうと思っていましたね(笑)。

●同世代の監督と戦友になること


若葉竜也さん。

――続いて、いかにもイベント会社にいそうな、ズル賢い男・梅川を演じた『神は見返りを求める』。十年以上前から仲良しのムロツヨシさん、『愛がなんだ』以来の岸井ゆきのさんとの共演でした。

 あの映画を観た人から「ああいう、“こすい”役をやらせたら、右に出る者はいないよね」って言われたんですけれど、じつは僕、ああいう役って初めてだったんですよ。だからこそ、やってみたいと思ったし、そんな評価をされてラッキーだと思いました。

 吉田恵輔監督の「この俳優に、こういうことをやらせたい」っていう思いが、まったくあざとくないし、かましていないんですよね。そういうキャスティングができる監督はすごいって思いましたし、面白いっすよね。ムロさんと改めて芝居するのは、めちゃくちゃ恥ずかしかったですし、かなり緊張もしていたんですよ(笑)。

――続いて、育児放棄した母親の男・山﨑役を演じた『ぜんぶ、ボクのせい』。後に『Winny』を撮る松本優作監督の商業デビュー作に出演するきっかけは?

 若手監督というか、同世代の監督と戦友になることと、諸先輩方々に喧嘩を売っていくことは、俳優としていつか必要だという意識はどこかであったので、「若い監督と一緒にやりたい」っていう話はよくしていたんです。そういう意識があったうえの出演だったので、とりあえず現場を見に行くというか、「どうなんだ?」という気持ちでした。

 実際、面白かったし、すごく才能を感じました。ちょっとクスクスってなっちゃうシーンを、はしゃいで撮らないんですよ。すごく淡々と、整合性を見ながら撮る判断力があるので、もっともっと上に行く人なんだろうなと思いました。守破離じゃないけれど、先人たちの知識をちゃんと踏襲しながら、壊していかなきゃいけない側の人間だと思うので、まだまだ若い監督たちと一緒にやると思います。

●駆け引きできる今泉力哉監督との関係性


若葉竜也さん。

――そして、今や名コンビといえる今泉力哉監督との『窓辺にて』と『ちひろさん』が続いて公開。『窓辺にて』では稲垣吾郎さん演じる主人公・茂巳の友人のマサ役を演じられました。

『窓辺にて』に関しては、今泉さんから台本を渡されて、「俺はこの役で考えているんだけど、どの役がやりたい?」と言われたんですよ。そのとき、今泉さんが想定した役だと、「今泉さんがこういう演出をして、自分はこういう対応するだろうな」っていう、想像の範疇で収まると思ってしまったんです。

 それで僕的にはマサが魅力的に見えるっていう話をしました。現場で、今泉さんとお互い「これどうする?」って悩みそうな可能性がある方を選んだ感じです。実際、『ちひろさん』と比べると、大変でしたし(笑)。

――そんな有村架純演じる主人公が勤める弁当屋の常連客・谷口役を演じられた『ちひろさん』はいかがでしたか?

 谷口という役は今泉さんからピンポイントで来たんですが、その後に原作を読んだら「いちばん俺がやらなそうな役が来たな」と思ったんですよ(笑)。ある種、「これは試されているな」と思ったし、逆にあれを自分が咀嚼したときに、「どう出していくのか?」っていうことを、台本読みの段階から今泉さんが想像しそうなことを全部逆張りした感じですかね。

 本当にギリギリのラインを狙いながら。今泉さんも「そう来るんだぁ」と笑っていましたけど、そういうやり取りができる監督は少ないので、面白い現場でしたね。僕が映画に出るとき、ほぼ全部の作品に共通していると思うんですけど、やっぱ寂しいとか、悲しいとか、弱いとか、そういう感情はやっぱりブレちゃいけないなと思ってやっていますね。

●出演CMに対しても、強いこだわりを持つ


若葉竜也さん。

――そんななか、「Amazonプライム」のCM「いちばんの特典」篇に出演されました。

 これまで出ていたCMと違って、ものすごく反響が大きかったですよ。CMもある程度は厳選するんですが、劇中劇ではないですけれど、しっかり物語があるものにこだわってやっていますね。何か良さそうというか、やっぱり言葉を使わないで、視聴者が見たときに、「どういうことを訴えかけているか?」というコンセプトが面白いと思ったんですよ。

『東京喰種トーキョーグール』も撮っている萩原健太郎監督というのも面白かったし、あと自分「Amazonプライム」のヘビーユーザーなんです(笑)。

――続いて、佐藤浩市さん演じる父、池松壮亮演じる兄、松岡茉優演じる妹を持つ雄二役を演じられた『愛にイナズマ』。本作を観たとき、『台風家族』の空気感を思い出したのですが、現場の雰囲気などは似ていたのでしょうか?

『愛にイナズマ』は『台風家族』より、もっとライブな現場でしたね。『台風家族』の市井昌秀監督は、元々お笑いをやられた方(元「髭男爵」)なので、割と自由にやっているように見えて、しっかり緻密な計算されているんです。

 ちゃんと振り落ちも考えて戦っていく監督だったんですが、『愛にイナズマ』に関しては、誰がどんなことするかっていうのを知らないので、石井裕也監督も含めて、みんなハラハラしながら、本番を迎えるっていう状況でした(笑)。あれは本当に相乗効果というか、大乱闘って感じでしたが、精神的には面白かったです。

●ライブ感溢れる『愛にイナズマ』現場


若葉竜也さん。

――具体的には、どんな現場だったんですか?

 クランクイン初日に、石井監督が「みんな何するか分からない」と言っていて、「今から、そんなヤバい人たちと撮影するんだ」と思いましたけど、みんな駆け出しの若手とは違うし、自分だけ目立てばいいという、浅はかな人もいないんですよ。テンションを上げつつ、しっかり全体の空気を見ながら、ちゃんと打てるとこを打っていく。その能力がとてつもなく高い人たちの集まりだったので、ちゃんと自分のやるべきことと、目立たなきゃいけないときを分析しながらやっていくんです。

 みんなの芝居が本番で変わったりするので、石井監督はとりあえず本番をかけるんですが、だからこそ、ああいう形にまとまったんだと思います。あれを割と稚拙な人たちでやったら、崩壊していたと思います(笑)。

~次回は主演最新作『ペナルティループ』についても語っていただきます~


若葉竜也(わかば・りゅうや)

1989年6月10日生まれ。東京都出身。作品によって違った表情を見せる幅広い演技力で、数多くの作品に出演。幼少から俳優として活動し、『葛城事件』(16年)では、第8回 TAMA映画賞・最優秀新進男優賞を受賞。20年のNHK朝ドラ「おちょやん」に出演するほか、主演作『街の上で』(21年)、『窓辺にて』(23年)、『ちひろさん』(23年)などの今泉力哉監督作に多く出演。本作が主演2作目となる。

文=くれい 響
撮影=今井知佑

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