「臆病でオタクなスコーピウスは他人の気がしない」舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』で注目の西野遼
CREA WEB / 2024年3月30日 11時0分
ロングラン公演中の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でスコーピウス・マルフォイ役で注目を集めている西野 遼さん。初舞台ながら堂々とした演技と役への深度から「はまり役!」、「心に残る演技」と観客から絶賛を受けている。
『ハリー・ポッターと呪いの子』は、言わずと知れた世界的人気作品『ハリー・ポッター』シリーズの原作者・J.K.ローリングがジョン・ティファニー(演出家)、ジャック・ソーン(脚本家)とともに創作したオリジナル・ストーリー。主人公のハリー、ロン、ハーマイオニーが魔法界を救ってから19年後の世界が描かれている。
世界中で大絶賛を受けたこの舞台の日本版は、2022年7月から上演がスタート。西野さんは2023年8月から新キャストとして登場している。初舞台とは思えない堂々たる演技を見せる西野さんに、出演中の現在の心境、意気込みを聞いた。
はじめはバシバシに緊張してました(笑)
――西野さんの俳優デビューは2020年。わずか2年後の2022年に『ハリー・ポッターと呪いの子』に出演と活躍目覚ましいです。出演するにあたり、プレッシャーはありましたか?
もうバシバシに(笑)。もともと、どんな作品でも緊張を感じてしまうタイプなんです。
スコーピウスはとても人気のあるキャラクターですし、これまでも演じられた方がいらっしゃるので、自分がやることでスコーピウスのイメージを崩してしまわないか、こんな重要な役柄が自分に務まるのか……とはじめは不安でした。
だからとにかく全力で、必死に舞台に向き合おうと。もう無我夢中というか。自分の演技が本当にこれで合っているのか、ちゃんとお客様に届いているのか、言葉のニュアンスが伝わっているか等々、あげればきりがないほど心配はありましたが、まずは演じ切ることだけを考えるようにしていました。
――初舞台から半年あまり。今の西野さんを見ているとそんな時もあったのかと驚きます。
今でももちろん責任が大きさは噛みしめていますが、全力で取り組んできたおかげで、役については解釈が深まっていますし、「ここはこういうふうにやろう」と自分の中で自信を持ってお届けできているかなと思います!
――当初抱えていた「イメージを崩してしまうかも」という気持ちも、今はありませんか?
はい。あまり考えすぎても仕方がないかなと。自分の思うスコーピウスを作り上げていくしかないですから。今はファンの皆さんに「僕のスコーピウスが好き」と言っていただけるよう舞台に臨んでいます!
「笑顔が素敵ですね」と言われるのがうれしいです
――そのスコーピウスの評判の高さは直接西野さんの耳にも届いていると思います。これまでいただいた中で印象的な褒め言葉をぜひ教えてください。
自分で言うのは恥ずかしいんですけど(笑)。「笑顔が素敵ですね」と言っていただけるのがうれしくて。自分自身は舞台上で必死なので舞台上で笑っている実感はないんですけど、自然と笑顔になっているみたいなんです。本当に楽しいシーンでは、特にすごく笑っているんでしょうね。スコーピウス役が自分と重なる部分が多いことも笑顔の要因かもしれないです。
――どういうところが重なると感じていますか?
臆病で優柔不断なところと、オタクなところですね。はじめはアルバスの方が自分らしいキャラクターだと思っていたのですが、台本を読み込んで、演技を重ねるうちにつくづく自分はスコーピウスだな、と。
僕は新しいこと、挑戦することを怖がってしまうところがあるんです。スコーピウスも冒険に行くことにリスクを感じるタイプで「本当に大丈夫かな?」という不安を常に抱えています。「そんな無謀なこと、やめておこうよ」という気持ちが出てきてしまう。思わず「僕もスコーピウスの気持ちがわかるよ」と声をかけたくなります。
あと、スコーピウスは“オタク”なんですけど、僕も自分の好きなことに関してはすごくのめり込むタイプ。本番前、世間話をしているときに、自分の好きなことの話題が出たりするとブワーっと早口でしゃべってしまうんです。みんなから「本当にスコーピウスじゃん!」ってたまに笑われます(笑)。
――共演者の皆さんともすごくいい雰囲気なんですね!
自分は今23歳で、出演者の中で下から2番目の年齢なんです。ほぼ年上の方、かつ先輩ばかりなので、すごく可愛がっていただいてます! 本番前の楽屋はいつもワイワイしているんです。まるで一つの劇団のような、家族のような感覚というか。
この経験は僕の役者人生にとっても貴重な財産
――出演をはじめて100公演という節目を迎えましたが、膨大な台詞量はもうお手の物ですか?
スコーピウスはオタクなので、とにかく喋る量、特に説明台詞が多いんですよね。だから観客に聞き取ってもらえるような喋り方を意識していますし、立たせたいワードを引き立たせるようにしています。回を重ねるごとに上達していっていると思いますので、何度も観にきていただけるとうれしいです。
――ちなみに、とちってしまった回などもありますか?
それはもう何回も(苦笑)。台詞を噛み倒した回もありますし。少し前の公演で、台詞が完全に飛んでしまう初めての瞬間が訪れました……。頭が一瞬パーンと真っ白になって、時間の流れがものすごく長く感じて。それでも大丈夫な感じを装い頑張ってなじませた、はずです(笑)。日々経験を積ませてもらっています。
――スコーピウスはずぶ濡れになるシーンがあったり、アクションシークエンスも多いですよね。
本当にアスリート並みに動いてると言っても過言ではないですね。最初は練習のたびに筋肉痛になっていました。マイケル・ジャクソンのように斜めに傾くシーンもあったりして。
心・技・体、すべてが大切ですが、こういうロングラン公演では体づくりというのは本当に大事だなと痛感しました。稽古では、必ず体づくりから始めて、朝30分、体幹・筋トレをやって皆さんと汗を流して取り組んでいます。
――その毎日の積み重ねが舞台の成功につながっているんですね。『ハリー・ポッターと呪いの子』では終了後のスタンディングオベーションも印象的です。
最後にカーテンコールで出て行ったときのあの拍手と歓声。毎日、毎回、本当にやってよかったと感動します。3時間40分という決して短くはない時間を観てくださった皆さんが立って拍手してくださることが、本当にうれしいです。「この仕事をやっていてよかった」と思う瞬間です。
――私が観劇した回では、お父さんのドラコ・マルフォイ役・内田朝陽さんと抱き合っていらしたのも感動的でした。
そうなんです! 内田さんと松田慎也さん(※Wキャスト)とは、カーテンコールの一番最後にそれぞれ合図を決めているんです。内田さんとはハグして終わる、松田さんとはグータッチで終わる、というのがいつのまにか出来上がっていました。「お疲れさま」という意味合いで、ルーティンでやっているんです。
――まだまだ続く公演ですが、現時点で『ハリー・ポッターと呪いの子』は自分にとってどのような経験になりましたか?
初めての舞台ですが、最初にこの舞台を経験したら何でもできるのでは、無敵なんじゃないか、と思えるくらい充実した毎日を過ごしています。いろいろな先輩方とご一緒させていただけたこと、その出会いが本当に貴重だと思っています。この作品が終わったとしても、次にまたどこかで皆さんとご一緒したいという目標もできました。それに向けて、僕自身も全力で頑張っていきたいです。こうしたご縁をいただけたことが、僕のこれからの役者人生にとってすごく貴重な財産になっていると思います。
西野 遼(にしの・りょう)
2000年11月27日、三重県出身。第32回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで準グランプリ&QBナビゲーター賞を受賞。2020年から俳優として活動を開始し、ドラマや映画などで活躍。近年の主な出演作にドラマ「にがくてあまい」や映画『アキラとあきら』など。
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』
会場 TBS赤坂ACTシアター
所在地 東京都港区赤坂5-3-2 赤坂サカス内
https://www.harrypotter-stage.jp/
取材、文=赤山恭子
写真=鈴木七絵
ヘアメイク=赤塚修二
スタイリスト=永田哲也
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