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「現場にいる方々を愛したい」 杉咲花が『アンメット ある脳外科医 の日記』で脳外科医役に挑戦

CREA WEB / 2024年4月13日 11時0分


記憶障害の脳外科医、川内ミヤビを演じる杉咲花さん。

 杉咲花さんは、百戦錬磨の俳優・井浦新さんをもってして「なぜこんな表現ができてしまうのかな、怖いな(略)俳優さんの中で化け物っているんですけど、間違いなくその部類にいる人」といわしめた。弱冠26歳で、朝ドラから映画、CMに数多く出演し作品ジャンルも幅広い。役柄を自分のものにする才能、その演技力の高さは誰もが知るところだろう。

 杉咲さんが井浦さんとともに挑む最新作は、カンテレ・フジテレビ系新月10ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』。記憶障害の脳外科医という主人公・川内ミヤビを演じる。目の前の患者を全力で救い、自分自身も再生していくという、新たな医療ヒューマンドラマが幕を開ける。

 インタビューが行われたのは撮影前のことだったが、杉咲さんはやる気と希望に満ちた眼差しで、作品に捧げる愛情を惜しみなく語ってくれた。


「プロデューサーの姿勢に突き動かされた」


記憶障害の脳外科医、川内ミヤビを演じる杉咲花さん。

――ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』にて、杉咲さんは主人公の“記憶障害の脳外科医”川内ミヤビを演じます。出演が決まったときは、どのようなことを感じましたか?

 最初、企画の段階で米田(考)プロデューサーにお声がけいただいたときに、今はSNSも含めてたくさんのエンターテインメントにあふれているけれど「テレビドラマというものを通して、見たことのないような新しいものを作っていきたい」というお話をうかがったんです。その姿勢に突き動かされたところがあり、「この方と組んでついていきたい」と直感的に思いました。私にとっては、それがこのドラマの出発点だったので「やるぞ!」という気持ちになり、すごく気合いが入った感じでした。

――ミヤビという人物に関しては、どのような印象を受けましたか?

 ミヤビは、自分が記憶障害であるという恐怖を毎朝突きつけられるんですよね。今の自分には想像し得ないような絶望もあるんじゃないか、と感じています。それでいて、患者さんやお医者さんに対しては気丈に、軽やかでいようとする人。相手が医者であっても、患者であっても、たまたますれ違った人であったとしても、とにかく目の前にいる人に向き合う思いの深度みたいなものが、とても深い人なんじゃないかな、と感じています。ミヤビにしかできない患者との関わり方をしていく姿は、とても人間味があって格好いいなと思うんです。一人の人間と人間として向き合おうとする姿がすごく魅力的なんですよね。

 ……ただ撮影はこれから始まるので(笑)、アプローチに関してはまだ探っている段階です。

――台本を読んでいて、ほかに魅力的に感じたところはありますか?

 やっぱり患者が救われて終わりではなくて、その先のそこに関わった人たちの人生に思いを馳せることができるところじゃないかなと思います。登場するそれぞれの人物に、受け手の皆さんが自分の姿を投影することのできるような作品になるんじゃないかな、と期待しているんです。

 医療は私たちの生活にとって欠かせないもの、間違いなく誰かの役に立つ仕事ですよね。私自身、医療者に対してこれまでの人生でお世話になってきましたし、すごく憧れもありました。そんな人たちも誰かを救いながら、自分も救われたいと思う瞬間があるわけなので、医者たちも生活者であるということも伝えられるような作品になったらいいなと思います。

「若葉くんが現場にいれてくれると本当に心強い」


記憶障害の脳外科医、川内ミヤビを演じる杉咲花さん。

――医療ドラマというジャンルに関して言えば、初めての挑戦になりますよね。これまで好きでご覧になっていた医療ドラマなどはありますか?

『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』です! フジテレビさん系だから言うわけじゃないですけど(笑)、医者の患者との向き合い方が、その人にしかできない向き合い方をしていると感じられたのが好きな要因かもしれません。すごく人間味を感じるドラマだなと思っていました。あとは、『ナースのお仕事』も好きで大学の頃に見ていました。

――医療ドラマならではで、今、楽しみにしていること、逆に不安に思っていることなどを教えてください。

 先日、縫合の練習を若葉竜也(三瓶友治役)くんと一緒にさせていただいたんですね。初めてやったんですけど、「こんなに難しいんだ!」と思って。パッと隣を見たら、すぐにコツをつかんでうまく縫合している若葉くんを見て、めちゃめちゃ焦りました(笑)。

――なるほど(笑)。若葉さんとは昨年の映画『市子』での共演も非常に印象深かったです。ドラマでのバディとは想像していませんでしたが、いかがですか?

 若葉くんとは今回で、もう4回目になるんです。ドラマだと3~4カ月ご一緒できるので、長い期間は初めてなので今から楽しみです。私からすると、若葉くんがドラマに出るって、東京で星が流れるぐらい新鮮な感じで……! 朝ドラ(『おちょやん』)でご一緒したときもそうでしたけど、とても貴重なタイミングで、自分も立ち会わせてもらっているご縁を感じています。

 私は自分たちの気づかないところに目を向けて、アグレッシブに物作りに取り組まれていく若葉くんの姿をこれまで何度も見てきました。役者として責任感の強い方という印象を持っていますし、すごく尊敬しています。ドラマというとてもタイトなスケジュール感の中で、どこまでクリエイティブにこだわっていけるのか、いい意味で想像がつかない若葉くんがいてくれることで、より世界が広がっていくんじゃないかというふうに感じています。本当に心強い存在ですし、楽しみです。

――一方、大迫紘一役の井浦さんからの杉咲さんに向けてのコメントでは、「数々の作品を拝見してきて“なぜこんな表現ができてしまうのかな、怖いな”と。俳優さんの中で化け物っているんですけど、杉咲さんは間違いなくその部類にいる人という印象です。だから僕の中ではまだ化け物なんです。早く人間と知って安心したいなと思います(笑)」と、俳優として超人的な扱いを受けていました。

 本当に、勘弁してほしいです(笑)! 撮影で1日一緒に過ごせたら、すぐに人間だとわかってもらえると思います。というよりも、きっとかなりつたない姿も今後お見せしてしまうことになるのではないか…という気持ちです。

 私こそ、これまで井浦さんの数々の作品を拝見していましたので、ご一緒できることがすごくうれしいです。俳優としてのご活躍を超えたところに、メディアを通して、ご自分が暮らす街だったり、他者と共にあることに対して連帯の姿勢を取られている印象を勝手に受けていました。そんな井浦さんがミヤビが信頼を寄せている大迫教授を演じられるので、すごく説得力を感じています。

「現場にいる方々を愛したい」


記憶障害の脳外科医、川内ミヤビを演じる杉咲花さん。

――杉咲さんのような経験豊富な俳優でも“つたない姿”を見せるような、いっぱいいっぱいになることもあるんですか?

 緊張感のあるシーンは、特に自分がフラットな状態で立つことが難しくなってしまう瞬間が結構あります。あまり表に出さないようにはしているつもりなんですけど、やっぱりそれだけの緊張を感じることはあるんです。ただ、緊張感というものはすごく大事だと思っているので、受け止めるしかないなと思っています。

――本作も含め、多くの作品で主演を務められていますよね。座長として心がけていること、今回の現場ではこうしたいなど、考えていることはありますか?

 現場にいる方々を愛したいなと思います。

――愛したい、素敵な言葉ですね。

 自分のことを信じてもらいたいと思うときほど、まずは自分が相手を信じることを大事にしたいですし、それと同じで、やっぱり愛情のあふれる現場になってほしいという思いがあるんです。主人公である私が現場にいる時間が一番長いので、そういう姿を見てもらえるように頑張りたいです。

衣装クレジット

ジャケット 316,800円、シャツ 57,200円、パンツ 152,900円/以上ROSETTA GETTY(CORONET 電話番号 03-5216-6518)

文=赤山恭子
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=吉田 達哉
ヘアメイク=宮本 愛(yosine.)

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