北鎌倉でもっとも予約が埋まっているワインが似合う“自由料理”で春のパスタや地元の山菜を堪能
CREA WEB / 2024年4月21日 13時0分
鎌倉でダンナさんと暮らしながら、ハワイや沖縄、もちろん東京でも料理の本を作ったり、取材をしたり。料理と旅の編集者・赤澤かおりさんは、どんなに忙しくても元気いっぱいなのです。
そんな赤澤さんが忙しい毎日のなかでほっとするのはやっぱり、地元・鎌倉に戻って、あるいはおうちで目一杯働いたあとに、お酒を飲む時間。基本的に前々から予約をとるよりも、その日のお腹に聞いて食べたいものと飲みたいものを求めて出かけます。
今回のシリーズは、「春の素材を食べるなら?」をお題に、ワインや日本酒を片手に楽しむお店へご案内。鎌倉の旬を意識したら、赤澤さん曰く「鎌倉イケおじのいる店」3選が裏テーマに!? 確かに、カウンターひとり飲みとイケおじは好相性!
こちらは北鎌倉で予約必至の一店です。
キッチンを囲むカウンター席を予約して
3軒目は、鎌倉のひとつお隣りの駅、北鎌倉から徒歩5分ほどのレストラン。ベースはイタリアンでもあり、ときどきフレンチの要素も加わったり、そうかと思うと和の要素も垣間見られる料理に、私はいつも驚かされ、ひと皿ごとに感動してきました。
そんな料理を作るオーナーシェフの秋月光広さんは、飾らないお人柄と、ゆる〜い、やわらかな雰囲気。これにやられ、料理のみならず、ファンになってしまう人多しのイケおじ。同い年の秋月さんとは時代的な話も合うので、料理に限らずいろいろな話で盛り上がります。が、盛り上がっていると思っているのは私だけ!? そういえば秋月さんはいつも穏やかに微笑んでいてくれます。
以前は、江ノ島でイタリアンを営んでいた秋月さんが静かな北鎌倉のこちらへ移転してから5年。鎌倉らしい風情ある蔵を改装した店内は、オープンキッチンを囲むように設えたカウンターと大きなテーブル席がひとつの、シックな装いです。
春のコース料理から私が特におすすめしたいのは、春らしい彩りが美しい、春野菜とサフランのチーズソース、菜の花のスープ、手打ちのタリオリーニ ふぐと春キャベツ、たけのこのブロッコリーピュレの3皿。
「春野菜とサフランのチーズソース」は、フォンティーナチーズを使ったサフランの香りが華やかなソースをからめながら食べる春野菜のひと皿は、もちろん最後までチーズソースを拭いながら食べたいのでパンとともにどうぞ。
「菜の花のスープ」と聞いたとき、常々、秋月さんからは仕込みに手間暇かけている様子を聞いていたこともあり、このメニュー名だけであれこれ妄想が広がりました。はまぐりからとったおだしをベースに菜の花のペーストを加え、とろんとした濃厚な味わいに仕立てた春のお花畑みたいなスープが登場!
見た目のかわいらしさにもうグッときましたが、味わいももちろん! ほんと、手間がかかってますねー。
驚きの魚も使われた春爛漫のパスタ
さて、この春パスタ一番の驚きはふぐが使われていたこと。ソテーしたふぐがパスタにのっているのみならず、パスタ自体にふぐのだしがからめてあるという繊細さ。しかも春キャベツ、タケノコ、ブロッコリーと、これでもかと春を投入。全体の造りは繊細なんだけれど、素材の構成はパンクな感じという、この感じにもいつもグッときちゃうんだよなぁ。と、パスタを前に秋月さんの素材の組み合わせをしみじみ考察しちゃいました。
どうやってこんな組み合わせを思いつくのか聞いてみると、ふっと浮かぶんだそうで……。「そんなはずない!」と突っ込んでみると、季節の素材を全部並べて、これとこれを組み合わせてみようか、と、ちゃんとスタッフの方と話し合ったりもしているそうです。
とはいえ、何か料理が決まってから食材を当て込んでいくのではなく、季節はもちろん、この鎌倉という場所に寄り添い、出回る食材を大切に料理が生まれ出ていることは確か。だから、秋月さんの料理はよく創作イタリアンなどと言われがちだそうですが、私にしてみれば、創作というより、自由料理という感じがしっくりくる感じ。ご本人がおおらかでのんびり自由ということもあるのか、作る料理もそれ、そのまんま。もちろん、繊細さを伴っての話ですが。
そんなAkizukiの料理はコースのみ。昼が7品で6,600円。夜が9品で9,900円。毎月変わるので、毎月、秋月さんの自由料理を楽しみにくる人があとをたたず、なかなか予約が取れないのが私の悩み。みんなおいしいものを食べるにはちゃんと計画してるんだなぁと反省。つい、いつも今日何食べよう! くらいな気持ちでいて、なかなか先のことを決められない私ですが、この春は、ちゃんと予定して春を満喫するぞ! と鼻息荒く、手帳をチェック。
ところで秋月さんがそれぞれの料理に選んでくれたワインはこの3種。私がほぼ白しか飲まないので、白が2種と赤1種。
写真左は、北海道の「蘭越いとう農園」のKamisato blanc。ワイナリーのど真ん中にある木が描かれたエチケットが印象的で、50歳でワインづくりの世界に飛び込んだという方が造るワインです。中央はイタリア・エミリオロマーニャ「il maiolo」の赤ワイン。右は、フランス・ブルゴーニュのジュリアン・ギィヨによるMACON VILLAGES。6世紀から一度も農薬を撒いたことのない土地で作られたブドウで造られたとびきりのものです。
とにかくよく飲み、よく食べる私は一人で出かけてもボトルを頼むことが多いんです。その方が気にせず、いっぱい飲めるからといういい大人としてあるまじきセコい理由なんですが、秋月さんのところでは料理に合わせてグラスで、ということがほとんど。料理とともにどんなワインをおすすめしてくれるのかも、楽しみのひとつになりました。
というわけで、そろそろ急がないと春が終わってしまいますからね。まずは予約、予約!
Akizuki
所在地 神奈川県鎌倉市山ノ内1386-2
電話番号 0467-53-8740
営業時間 ランチは土~火曜 12:00~、ディナーは月・火曜、金曜 18:30~、土・日曜・祝日 18:00~(すべて一斉スタート)
定休日 水・木曜
Instagram @akizuki_kitakamakura
※昼夜ともおまかせコースのみ。要予約。
赤澤かおり(あかざわ・かおり)
料理雑誌の編集部を経て、フリーランスに。料理と旅の編集者として活動。料理本のほか、30年以上通い詰めるハワイについての執筆、単行本編纂も多数。近著に「人生にはいつも料理本があった」(筑摩書房刊)。
Instagram @kaoriakazawa.akalohasunny
文=赤澤かおり
撮影=榎本麻美
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