生体内の酸化還元反応における"電子の運び屋"役のタンパク質エネルギー獲得のための生物共通の電位制御の仕組みを解明―水素原子1つが司る"ナノスイッチ機構"の発見―
Digital PR Platform / 2024年12月2日 14時5分
■背景
生体内では物質と物質の間で常に電子の受け渡しが行われています。物質に電子を与えることを「還元する」といい、物質から電子を引き抜くことを「酸化する」といいます。それらが繰り返される反応を「酸化還元反応」といいます。呼吸や光合成は生体内の酸化還元反応の代表的なものです。
生体内には酸化還元反応を助ける様々なタンパク質が存在しますが、その中には鉄と硫黄のかたまり(鉄硫黄クラスター)を含んだものがあり、この鉄硫黄クラスターこそがタンパク質間の電子の受け渡しにおいて重要な機能を果たしています。フェレドキシンはほとんどすべての生物に存在すると考えられている鉄硫黄クラスターを含んだ小さなタンパク質で、「電子の運び屋」の代表的なものとして知られています。フェレドキシンの発見は非常に古く、60年前にはその機能の研究がスタートしていました。これまでに、構成する鉄と硫黄の数が異なる様々なタイプの鉄硫黄クラスター(図1)をもつフェレドキシンが発見されています。
水は高いところから低いところに流れるのが自然の摂理ですが、電子は「電位」(あるいは静電ポテンシャル)という位置エネルギーの低い方から高い方に流れます。様々なタイプの鉄硫黄クラスターをもつフェレドキシンの電位(酸化還元電位)は多様で広範囲にわたります。あるときは電子を他のタンパク質に与え、あるときは電子をまた別のタンパク質から引き抜くため、フェレドキシンは鉄硫黄クラスターの酸化還元電位をエレベーターのように上げたり下げたりしていますが、それがどのようにコントロールされているかなど、不明な点が多く残されていました。
密度汎関数理論法※2とよばれる方法に基づく計算を駆使すればフェレドキシンの電子状態※3を調べることができますが、正確な計算のためには、水素原子を含めたフェレドキシンの立体構造が必要となります。しかし、タンパク質分子の中の水素原子の位置を決定することは非常に困難であることから、これまでフェレドキシンのみならずほとんどのタンパク質の理論計算では、水素原子の位置は"仮定"で配置することが常法でした。仮定された水素原子の位置が事実と異なれば、理論計算の前提が崩れて得られる結論が無意味なものになります。そこで研究チームは、フェレドキシンの中の水素原子の位置を実験的に決定し、鉄硫黄クラスターの電子状態を実験事実に基づいて解明することに挑みました。
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