1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. プレスリリース

生体内の酸化還元反応における"電子の運び屋"役のタンパク質エネルギー獲得のための生物共通の電位制御の仕組みを解明―水素原子1つが司る"ナノスイッチ機構"の発見―

Digital PR Platform / 2024年12月2日 14時5分


■今後の期待
タンパク質の分子の中に含まれる鉄硫黄クラスターは生命活動の根幹を担う様々な反応に関与しています。今回の酸化還元電位の制御スイッチ機構は、それらの反応制御にも応用できます。例えば、生体内で酸素(O2)や一酸化窒素(NO)を検出しているタンパク質では、ごく微量のガスを検知するのは鉄硫黄クラスターです。また、病原性の細菌を含め、多くの微生物ではタンパク質中の[4Fe-4S]型鉄硫黄クラスターがエネルギー獲得において必須な役割を果たしています。さらに最近では、フェレドキシンや鉄硫黄クラスターが癌細胞で重要な働きを担っていることがわかってきました。本研究での発見は、生体反応の科学的な理解を深めるにとどまらず、将来的にはO2やNOの超高感度センサーや新規薬剤(抗がん剤、病原菌に対する抗生物質など)の開発への大きな手掛かりになることが期待されます。


■用語説明
※1【eLife誌】
eLife誌は、2012年に生物医学と生命科学のため創刊された非営利のオープンアクセスジャーナルです。比較的新しい雑誌ですが、既にBiology and Biochemistry分野では5位にランキングされています。
https://research.com/journal/elife

※2【密度汎関数理論法】
原子や分子内部の電子状態を求め電子密度からエネルギーを計算する方法論で、DFT(Density Functional Theory)法として広く知られています。比較的少ない計算量で精度良く分子のエネルギーを求めることができるため、タンパク質など大きなサイズの分子にも適用されます。より信頼性の高い計算のためには、正確な分子の構造データが必要となるため、水素原子の座標が実験的に求められることは、大変重要となります。

※3【電子状態】
物質の中で、電子がどのような分布やエネルギーで存在しているかという意味の言葉です。個々の電子の分布関数は分子軌道と呼ばれますが、これを調べることにより、原子間の化学結合の様子や、ひいては分子の性質などを説明することができます。

※4【中性子結晶構造解析】
結晶に中性子を入射し、原子核との相互作用による散乱の強度を調べることにより、結晶内に存在する分子の立体構造を得る解析法。この解析手法では水素原子(あるいは水素イオン)の詳細な観察が可能です。X線結晶構造解析法と似ていますが、X線は電子で散乱を起こすため、電子を1つしか含まない水素原子からの散乱は非常に弱く、水素原子を同定することには向いていません。ただし、X線では小さな結晶でタンパク質の結晶構造解析ができるのに対し、中性子に対しては非常に大きな結晶が必要で、結晶を大きく育成することが非常に大変な実験となっています。クライオ電子顕微鏡法では、X線結晶構造解析法よりは水素原子を同定しやすいのですが、フェレドキシンのような小型のタンパク質には現在のところ適用できません。このフェレドキシンの構造を水素原子レベルで明らかにするには、中性子結晶構造解析が最適でした。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください