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光量子計算プラットフォームに世界で初めて量子性の強い光パルスを導入 ~スパコンを超える光量子コンピュータへ突破口~

Digital PR Platform / 2025年1月17日 14時6分



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2017年に武田准教授らが考案した光量子コンピュータ方式では、量子ビットの情報をもつ多数の光パルスを大きなループ型のメモリの中に蓄え、それらの光パルスに1個のプロセッサによって順々に演算処理を実行する。この方式では、光の種類としてスクイーズド光(注5)のみを用いている限りは、線形演算という限られた演算処理しか実行できない。そこに量子性の強い光パルスを導入することで、非線形演算も可能になり、あらゆる計算が可能な量子コンピュータが実現できる。

〈研究の内容〉
 今回、本研究グループはこの障壁を乗り越え、世界で初めて量子性の強い光パルスを使って計算できる汎用型光量子計算プラットフォームを実現しました(図2)。このプラットフォームは、量子性の強い光パルス1個を発生させ、それに対してさまざまな線形演算を繰り返し何ステップでも実行できる機能をもちます。将来的に、量子性の強い光パルスと線形演算を組み合わせれば、従来できなかった非線形演算も実行可能となります。このため、今回のプラットフォームを拡張していくことで、線形演算も非線形演算も含め、あらゆる計算が実行できる万能な光量子コンピュータの実現へとつながり、現代のコンピュータを超える高速計算が可能になると期待されます。さらに、量子性の強い光パルスを用いれば量子コンピュータで正確な計算結果を得るために不可欠な量子誤り訂正処理も行えるようになるため、誤り耐性型量子コンピュータへの道を切り拓く成果とも言えます。


[画像2]https://digitalpr.jp/simg/2341/102485/700_387_202501171047056789b6992d8a9.png

今回、量子性の強い光パルスをランダムなタイミングで発生させるシステムと、スクイーズド光パルスとプロセッサを用いて線形演算を実行できるシステムを組み合わせ、さらにそれらを時間的に同期させて制御するシステムを組み込むことで、量子性の強い光パルスを用いて計算できる光量子計算プラットフォームが実現した。OPA(Optical parametric amplifier)は光パラメトリック増幅器を表す。

〈役割と成果〉
 この光量子計算プラットフォームは、東京大学のチームが蓄積してきた光量子コンピュータの独自の要素技術、NTTが開発した光パラメトリック増幅器(注6)、NICTが開発した超伝導光子検出器を結集させ、既存のプラットフォームを大幅に技術刷新することによって実現しました。このプラットフォームの構成は、武田准教授らが2017年に提案した独自方式に基づいています(図1)。この方式は、量子ビットの光パルスを時間的に一列に並べてループ型の光回路を周回させながら、1つのプロセッサで演算処理を繰り返すもので、コンパクトな光回路で大規模な計算が可能となることが強みです。今回この方式のプロセッサを、量子性の強い光パルス(具体的には「シュレディンガーの猫状態」の光パルス(注4))の発生源と組み合わせたプラットフォームを構築しました(図2)。
 この構築には、光ファイバとの親和性の高い光通信の波長帯(1545nm)に量子性の強い光パルスを生み出す発生源が必要であり、NTTが開発した光パラメトリック増幅器とNICTが開発した超伝導光子検出器を組み合わせることでその実現に至りました。この発生源は、光子検出器が光子を検出したタイミングでのみ光パルスを発生(注7)させるもので、発生のタイミングはランダムです。発生した光パルスに対してプロセッサで演算処理を行うためには、光パルスの発生を知らせる光子検出信号を手掛かりにして、光パルスがプロセッサに到着するタイミングとプロセッサが演算処理の動作をはじめるタイミングを一致させる必要があります。しかし、光子検出信号を受けてからプロセッサを動作させるまでの電気的な処理には時間がかかり、その間にも光パルスは光の速度で進み続けるため、通常はタイミングが間に合いません。そこで、光パルスがプロセッサに至る前に長さ100mの光ファイバを挟み(図2)、光パルスの到着時刻を遅らせることで、光パルスの到着とプロセッサの動作のタイミングを合わせることに成功しました。
 このプロセッサでは、もう1台のNTTの光パラメトリック増幅器で発生させたスクイーズド光と呼ばれる補助的な光パルスを繰り返し入射して用いることで、量子性の強い光パルス1個に何ステップでも線形演算を繰り返すことができます(図3)。実証実験では、線形演算の1つであるスクイージング演算(注5)を最大3ステップまで種類を変えながら実行し、期待通りの演算が行われていることを確認しました。さらに、光パルスの強い量子性を示す特徴が、2ステップの演算の後まで保たれていることも確認し、演算のエラーで失われやすい量子性を維持できるレベルの高い精度で実行できていることも示しました(図4)。今回、量子性の強い光パルスでさまざまな計算ができるプラットフォームの実現が世界初であることはもちろん、実際に3ステップもの演算を行ったのも世界で初めてです。

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