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女性非喫煙者の食道がん発症に免疫が関与 -好酸球が多いがんは予後良好-

Digital PR Platform / 2023年12月20日 14時5分

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【概要】
理化学研究所(理研)生命医科学研究センターがんゲノム研究チームの大川裕紀研修生(研究当時)、笹川翔太研究員、中川英刀チームリーダー、近畿大学医学部外科学教室上部消化管部門の安田卓司主任教授らの共同研究グループは、女性で非喫煙者の食道がん(SCC)の全ゲノムおよび単細胞RNA解析を行い、免疫細胞[1]の一種である好酸球がSCCの発症と関連していることを発見しました。
本研究成果は女性食道がんの予防や治療法の開発に貢献すると期待されます。
今回、共同研究グループは、まれではあるが最近増加傾向にある女性非喫煙者の食道扁平上皮がんを対象とし、20例のがん組織の全ゲノムRNAシークエンス解析[2]を行い、その変異シグニチャー[3]を一般的な男性喫煙者の食道がんのデータ(74例)と比較しました。その結果、原因変異遺伝子については差異がないものの、加齢と関連する変異シグニチャーが多い傾向にありました。腫瘍内の免疫細胞の活動性を調べると、女性食道がん組織内には、活動性の高い免疫細胞が観察され、特に好酸球[1]が多く検出されました。男女計4例の食道がん組織から免疫細胞を抽出し、その内約31,000個の単細胞(シングルセル)RNA解析[4]を行うと、女性食道がんにおいては好酸球が活性化していました。
好酸球を多く含む食道がんの予後は、一般的な男性喫煙者の食道がんに比べて良好であり、好酸球などの免疫細胞の作用が関係していると考えられます。
本研究は、医学系雑誌『Cancer Letters』オンライン版(11月30日付)に掲載されました。




【背景】
食道がんは、日本では年間に約26,000人が発症し、約11,000人が死亡、5年相対生存率は30~40%の難治性がんです注1)。病理学的には、扁平上皮がん(SCC)と腺がんに分類されます。日本を含むアジアでは、ほとんどが食道SCCであり、発生の最大のリスク要因は、喫煙や飲酒です。食道SCCの男女別の発症の割合は6対1で多くが男性であり、非喫煙の女性の割合は5~10%とわずかです。しかしながら、最近、非喫煙、非飲酒の女性SCCの罹患者数が増えている傾向があり、臨床的特徴や発がん要因の解明が求められています。
日本における食道SCCの標準治療は、化学療法の後に切除手術を行う「術前化学療法+手術」です。しかし、最近、食道がんにおける腫瘍免疫[5]の重要性や免疫チェックポイント阻害剤[5]といった免疫療法の効果も報告されており、肺がんと同様に免疫療法が主たる治療法になる可能性があります。
免疫反応や免疫に関連する疾患発症に関しては、以前より性ホルモンの影響やX染色体が関連して男女差があることが分かっており、多くの自己免疫疾患の発症は女性が多いことが知られています。がんについても、食道がんを含むいくつかのがん腫の発症で大きな男女差があり、それらの予後や治療反応性も異なることが多いと分かっています。
これまでの共同研究グループが行った食道がんのゲノム解析や免疫解析でも、好中球やT細胞の重要性を報告しており注2)、腫瘍免疫の役割が注目されています。本研究では、リスク要因が不明ですが、まれな女性非喫煙者の食道SCCのゲノム解析、免疫解析を行い、その分子学的、免疫学的特徴を明らかにすることを試みました。
注1)国立がん研究センターがん情報サービス
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/4_esophagus.html
注2)2022年8月9日プレスリリース「ゲノムとAIにより食道がんの術前化学療法の効果を予測」
https://www.riken.jp/press/2022/20220809_1/index.html

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