1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. プレスリリース

"見た目はそっくり、中身は違う"(C-グリコシド型)擬複合糖質を開発 -分岐合成法の確立と生物活性が大きく異なる多様なアナログ群の創出- 摂南大学

Digital PR Platform / 2024年1月12日 20時5分

【研究の背景と経緯】
 第3の生命鎖と呼ばれる糖鎖・複合糖質は、分子認識や免疫反応に重要な役割を担っているため、創薬・生物学分野においてその機能解明が求められています。しかし、糖鎖・複合糖質はグリコシド結合を介して他の分子と結びついており、この結合は特定の酵素により切断されてしまいます。一方、天然の糖鎖・複合糖質のグリコシド結合の酸素原子を炭素に置換したC-グリコシドアナログは、糖鎖の構造を模倣しながらも、糖加水分解酵素によって分解されません。このため、C-グリコシドアナログは糖鎖の機能解明に有用なツールであると考えられていますが、合成が煩雑であるため、その機能を検証する研究が遅れていました。
 今回共同研究グループは、C-グリコシドアナログの構造を多様化する新たな戦略として、連結部位編集戦略を考案しました。これは、C-グリコシド炭素上の水素原子を小さい官能基で置換することで、新たなアナログ分子を創出する戦略です。C-グリコシド炭素上にフッ素原子を導入すると、特有の立体電子効果によりグリコシド結合の回転(φ角)が制御されます(図1)。一方、フッ素を持たないCH2-連結型は、立体電子効果が効かないためφ角が柔軟に回転します。それぞれ固有の特性をもつCH2-、(R)-CHF-、(S)-CHF-連結型アナログを、共通の中間体から網羅的に分岐合成する効率的手法は存在しませんでした。この効率的な分岐合成法を開発すれば、分子設計概念の実証と創薬およびケミカルバイオロジー研究の加速に大きく貢献すると期待しました。

(図1)天然型、CH2-、(R)-CHF-、(S)-CHF-グリコシドの配座特性の違い:天然型O-グリコシドは、立体電子効果(エキソアノマー効果)と立体障害によりexo-syn配座を優先的に取ることが報告されています。一方、置換基を持たないCH2-グリコシドは、立体電子効果による配座制御効果がないため柔軟な配座を有しています。フッ素原子を導入した(R)-および(S)-CHF-グリコシドは、天然型とは別の立体電子効果(ゴーシュ効果)により配座が制御され、O-やCH2-グリコシドとは異なる配座特性を有すると考えられます。

【研究の内容と成果】
 本研究ではまず、C-グリコシドアナログの共通中間体となるフルオロビニル-C-グリコシドの合成法と、3種のC-グリコシドアナログの分岐合成法を開発しました(図2,3)。各段階で鍵となるのは、立体および化学選択性です。糖と糖またはアグリコンをC-C結合で連結するC-グリコシル化反応は、幅広い組み合わせの糖・アグリコンへの適用が期待されますが、技術課題として片方の異性体を選択的に与える方法を開発する必要がありました(図2)。2,3位がカーボネートで保護された糖供与体とBrFオレフィンを、光触媒、ニッケル触媒存在下、青色LEDを照射すると、高いα選択性と収率でフルオロビニル-C-グリコシドを合成できました。糖供与体を2,3-カーボネート保護することで配座が固定され、グリコシルラジカルを立体電子効果的に有利なα面に配向することが、α選択性のコントロールに重要でした。本反応によって、糖や脂質を含む合計21例のアグリコンに適用できることを実証し、広範な擬複合糖質合成に展開できる手法の開発に成功しました。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください