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ECMOを要する心原性ショック患者の院内死亡は、新規補助装置で改善せず

Digital PR Platform / 2024年1月17日 14時0分



研究背景
 心臓機能の低下により末梢組織への循環を維持出来なくなった状態は心原性ショックと呼ばれ、急速な多臓器不全のため30–50%が死に至ると報告されています2。昇圧剤や強心剤に抵抗性を示す場合、ECMOと呼ばれる体外式膜型人工肺により救命し、心機能の回復が図られます3。多くの場合、大腿静脈から右房へ挿入されたカテーテル先端から脱血し、体外の人工肺で酸素化された血液を大腿動脈へ送血することで全身の循環と酸素化が維持されます(図2A)。この時、大腿部の動脈から心臓に向かう逆向きの血流は、心臓(特に左心室)にとっての抵抗(後負荷と呼ばれます)の増大となります。これにより障害を受け低下した心機能がさらに低下するという問題を生じます。この問題を回避するため、左心室にかかる負荷を低下させる必要があります4。そこで従来はIABPが併用されてきました。胸部下行大動脈内で30-40mlのバルーンを心臓に同期させて収縮・拡張させる事で左心室補助を行います(図2B)。一方で、日本では2017年9月よりIMPELLAと呼ばれる新たな左室補助装置が使用可能となりました。軸流ポンプを有する小径のカテーテルを左心室内へ留置することで、左心室内の血液を連続的に吸入し大動脈へ駆出させることで左心室負荷を軽減します(図2C)。



[画像2]https://user.pr-automation.jp/simg/1706/81886/350_281_2024011709335965a72077640a7.jpg



図2 ECMOの問題点とIABP、IMPELLAとの組み合わせ


 IMEPLLAはIABPと比較し強力な左心室補助効果があり、ECMOを要する心原性ショック患者の予後を改善させることが期待され、近年、使用件数が増加しています。しかし、これまでにECMOへの組み合わせとしてIMEPLLA、IABPのどちらが優れているかについて質の高い研究が行われておらず、その解明が望まれてきました。そこで、我々は国内急性期病院の大部分を網羅するデータベースを用いた分析を行いました。


研究内容
 DPCデータベースを利用して2018年4月から2022年3月までの4年間に国内急性期病院に入院しECPella(139例)あるいはECMO-IABP(801例)を受けた心原性ショック患者を網羅的に同定し、データを解析しました。経年的にECPellaの使用が増加しているのに対して、ECMO-IABPの使用は減少していました(図3)。2つの群の患者背景の違い(交絡因子と呼ばれます)を調整するため傾向スコア(IMPELLAかIABPを受ける確率)によるマッチング解析を実施したところ、126ペアが分析対象となりました。どちらの患者群も約50%の院内死亡が発生しており、60日死亡についても統計学的な差を認めませんでした(図1)。

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