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【東京薬科大学】膜タンパク質の細胞外領域相互作用を網羅的に解析できる新技術を開発--革新的な技術で創薬標的の不足を解消し、市販薬改良への手がかりも解析可能に--

Digital PR Platform / 2024年2月21日 14時5分

exPPIを解析する膜タンパク質は、がん遺伝子として知られている細胞膜上のタンパク質である上皮成長因子受容体EGFRを標的としました。EGFRを発現する細胞である上皮様細胞癌由来細胞(A431細胞)(以下、上皮がん細胞と明記)にFabIDとビオチンを添加したところ、FabIDを使用して細胞膜上のEGFRをビオチン標識できることが培養細胞レベルで確認されました(図2)。

そして、FabIDを用いたビオチン化標識と、徳島大学で開発されたビオチン化タンパク質を解析する質量分析を組み合わせて使用することで、多くの新規EGFR相互作用タンパク質 (図3A中の青文字のタンパク質)を同定することに成功しました。同定したタンパク質は、新たな創薬標的となる可能性があります。
EGFRはEGFというリガンドと結合することで細胞にシグナルを伝達します。EGFがEGFRに結合するとEGFRの細胞内ドメインに種々のタンパク質が結合して、タンパク質複合体が形成されることが知られています。そして、現在がんの治療薬として広く使用されているEGFRチロシンキナーゼ阻害剤8)はEGFRに結合してEGFR細胞内ドメインを介したタンパク質複合体形成を阻害して薬効を発揮していると考えられています。しかし、EGFRがEGF(リガンド)に結合した際やEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(薬剤)が作用した際のEGFRのリガンド依存的および薬剤依存的なexPPI変化はこれまで全く観察されてきませんでした。そこで私たちはFabIDを用いて培養細胞内で起こっているリガンド依存的および薬剤依存的なEGFRのexPPI変化を観察しました。結果としてEGFRにリガンドや薬剤が結合することによってダイナミックにexPPIが変化していることを世界で初めて見出しました(図 3)。



3.波及効果
膜タンパク質は、ほぼ全ての生物で細胞内外の情報を伝達するために使用されています。そのため、膜タンパク質のexPPI解析を行うことは生物学の発展に直接的に寄与することが期待されます。また、市販薬の半数以上が膜タンパク質を標的として機能しているため膜タンパク質は重要な創薬ターゲットとして知られています。しかし、新しい創薬ターゲットとなる膜タンパク質を見つけることは難しく、製薬業界では大きな課題となっています。本研究で開発した、FabID技術は生きた細胞を使用したexPPI解析を可能にするだけでなく新規の創薬ターゲット同定に使用できます。また、FabIDは従来法では解析されてこなかったリガンド依存的・薬剤依存的なexPPI変化を捉えることができることがわかりました。今後は、このFabIDを使用したexPPI解析による新規の創薬ターゲット同定や、市販薬剤が結合した際の膜タンパク質exPPI変化を詳細に解析して行くことで市販薬の改良に大きく貢献することが期待されます。

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