森林が大気中マイクロプラスチックを捕捉することを世界で初めて実証--ヒトによるAMPs吸入リスク低減において森林が重要であることを明らかに--
Digital PR Platform / 2024年3月27日 14時5分
(3)そのために新しく開発した手法
葉面のエピクチクラワックスに捕捉されたAMPsを回収する手法として、上述したアルカリ洗浄を開発しました。アルカリ試薬を用いた処理は、これまで魚や貝などの生体試料に含まれるマイクロプラスチックの分析に広く使用されており、プラスチックへ影響を与えない範囲で生体組織を効率的に分解できることが報告されています。これを葉面エピクチクラワックスの分解に適用できる方法を新たに開発しました。この洗浄前後の葉面の観察により、葉面エピクチクラワックスがアルカリ洗浄によって完全に分解され、通常であればその下に存在する表皮細胞と見られる部屋のような構造体が完全に露出している様子を確認しました(図5)。
(4)研究の波及効果や社会的影響
本研究により、AMPsの新たなシンク(吸収源)として森林が重要であることが明らかとなり、波及効果として都市域におけるマイクロプラスチック大気汚染対策として樹木を用いたバイオレメディエーション*7が有効であることが示されました。
温室効果ガスによる地球温暖化問題とプラスチックゴミ問題は重大な地球環境問題です。本研究は森林が二酸化炭素吸収源として気候変動対策において重要であるばかりではなく、大気中マイクロプラスチック対策としても重要であることを明らかにしました。現在我が国においては林業が衰退しつつありますが、国内の林業を再興し、森林を適切に管理していくことは、地球温暖化問題と大気中マイクロプラスチック問題の双方に対して有効な対策となり得ると言えます。これは単なる環境保護ではなく、資源を循環させて持続可能な社会を構築するサーキュラーエコノミー*8の実現に貢献できるものと考えます。
(5)今後の課題
本研究により、森林樹冠に大量のAMPsが捕捉されていることがわかりましたが、葉面に捕捉されたAMPsはいずれ落葉とともに林床や森林域の土壌へと移行し、森林生態系に蓄積して森林生態系を破壊する可能性があります。そこで、今後は、樹冠のみならず、林床や土壌におけるマイクロプラスチック量やそれらに対する影響についても調査を進めていく必要があります。さらに、様々な樹種について葉面AMPs捕捉能を明らかにし、より効率的なマイクロプラスチック大気汚染対策を確立する必要があります。
(6)研究者のコメント
プラスチック生産量は、産業革命以降、増加の一途を辿っており、これに付随してマイクロプラスチックによる汚染も拡大し続けています。このような現状においては、いかに環境中にマイクロプラスチックを放出しないかという点も必要ですが、一度放出されたマイクロプラスチックをいかに回収するかという点も今後重要視されると考えられます。本研究によって解明された森林がAMPsを回収可能なフィルターとして機能するという知見がその一助となれれば幸甚です。
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